梨状筋症候群

執筆者:Paul L. Liebert, MD, Tomah Memorial Hospital, Tomah, WI
レビュー/改訂 2021年 10月
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梨状筋症候群(piriformis syndrome)は,骨盤後方の梨状筋による坐骨神経の圧迫であり,殿部の疼痛の原因になり,ときに坐骨神経痛を引き起こす。診断は診察による。治療は対症療法である

梨状筋は仙骨前面から大腿骨大転子の上端に伸びている。ランニング中または座っているときに,股関節回旋筋を通る坐骨神経が,梨状筋の下から現れる位置で梨状筋に圧迫されることがある。梨状筋症候群はまれである。

梨状筋症候群

梨状筋症候群では,骨盤後方の梨状筋により坐骨神経が圧迫される。

梨状筋症候群の症状と徴候

慢性の持続性の痛み,疼痛,ピリピリ感,またはしびれがまず殿部に生じ,その後坐骨神経の走行に沿って広がり,大腿部および腓腹部の後面全体,および,ときに足にまで及ぶことがある。疼痛は通常,慢性的で,梨状筋が坐骨神経に向かって押されるとき(例,便座,車の座席,もしくは自転車の狭いサドルに座っているとき,またはランニング中)に激しくなる。

梨状筋症候群の診断

  • 身体診察および誘発試験

診断は身体診察による。屈曲させた股関節部を強引に内旋させたとき(Freiberg操作),座位で患側の下肢を外転させたとき(Pace操作),健側の下肢を下にして台に横になり,患側の膝を台から数cm上げたとき(Beatty操作),または患者がゆっくりと床へと前屈しつつ殿部(坐骨神経が梨状筋を横切る場所)に圧力を加えたとき(Mirkin試験)によって生じる疼痛は,診断的である。坐骨圧迫の他の原因を除外する場合を除けば,画像検査は有用でない。椎間板による坐骨神経の圧迫(坐骨神経痛)も下肢の膝下に放散することがあり,背部痛を伴うことも多い。しかし,椎間板疾患との鑑別は困難なことがあるため,専門医への紹介が必要となる。

梨状筋症候群の治療

  • 活動の修正

  • ストレッチ

患者はランニング,自転車運転,または痛みを引き起こす運動を一時的にやめるべきである。座ると疼痛が悪化する患者は立ち上がるべきであるが,立ち上がれない場合は,体勢を変えて,殿部周辺の圧迫を解消する。股関節後方および梨状筋用の特異的なストレッチ運動が有益となりうる。手術の施行が妥当になることはまれである。梨状筋が坐骨神経と交わる場所の近くに,慎重に位置決めしてコルチコステロイドを注射すると,一時的に奏効することが多い。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)でも一時的な鎮痛が得られることがある。

股関節後方および梨状筋のストレッチ運動
横臥位での股関節の外旋(Clamshell運動)
横臥位での股関節の外旋(Clamshell運動)
1.患側を下にして横たわる。 2.肩関節から股関節までをまっすぐにし,膝関節を約90度に屈曲して,足関節がわずかに体幹の後方にくるようにする。 3.両足を触れ合わせたまま,上の膝を天井方向に持ち上げる。 4.膝を降ろし,同じ動作を繰り返す... さらに読む

Courtesy of Tomah Memorial Hospital, Department of Physical Therapy, Tomah, WI; Elizabeth C.K.Bender, MSPT, ATC, CSCS; and Whitney Gnewikow, DPT, ATC.

ブリッジ
ブリッジ
1.あお向けに寝て,両膝を曲げ,足底を床または台面につける。 2.腹部と大殿筋を収縮させて殿部を床から持ち上げる。 3.下肢を中間位に保つ。 4.元の位置に戻す。 5.10回を1セットとし,3セットを1日1回行う。 6.特記事項 a.脊椎... さらに読む

Courtesy of Tomah Memorial Hospital, Department of Physical Therapy, Tomah, WI; Elizabeth C.K.Bender, MSPT, ATC, CSCS; and Whitney Gnewikow, DPT, ATC.

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