米国では年間1000例以上の潜水関連障害が発生しており,致死率は10%を超える。同様の障害が,トンネルやケーソン(建設工事に用いる防水を保つための構造物)内の作業者に起こることがあり,そのような環境では作業場から水を遮断するために圧縮空気が用いられている。
多くの障害が高圧に関連するが,高圧は水深の深い場所またはケーソン内で,その地点より上にある水の重量に水面の大気圧が加わることで生じる。10m(33フィート)の水深で,海水は海面レベルの標準大気圧と等しい圧力,つまり1.03 kg/平方cm(14.7ポンド/平方インチ),760mmHg,すなわち1絶対気圧(ATA)を有する;したがって,この水深での総圧力は2ATAである。10m(33フィート)深く潜水する毎に1ATAずつ増加する。
身体区画中のガス容積は外圧に反比例する;圧力変化によるガス容積の増大または減少は,直接的な物理的影響を及ぼし,様々な身体組織を破壊しうる(圧外傷)。血中に溶けるガスの量は,周囲の気圧が上昇するに従って増大する。ガス含有量の増大は直接的に(例,窒素酔い,酸素中毒),または浮上中に過飽和状態の血液または組織が減圧されて窒素の気泡が放出されることで間接的に(減圧症),障害を引き起こしうる。動脈ガス塞栓症が,圧外傷または減圧により生じる可能性がある。減圧障害という用語は減圧症または動脈ガス塞栓症のいずれかを示すものである。
こうした医学的な身体の異常に伴い,水深が深い場所でその症状が生じた場合,身体能力や方向感覚が失われることがあり,溺水に繋がる可能性がある(潜水に対する医学的禁忌の具体例の表を参照)。
その他の潜水関連障害(例,溺水,低体温,外傷)については,本マニュアルの別の箇所を参照のこと。
潜水または圧縮空気下での負傷患者を治療する医師は,Divers Alert Network(緊急の場合は919-684-9111,他の情報を入手する場合は919-684-2948)に連絡を取るとよい。医師から医師へのコンサルテーション(Physician-to-physician consultation)はDuke Dive Medicineを介して入手できる:919-684-8111。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Divers Alert Network: 24-hour emergency hotline, 919-684-9111
Duke Dive Medicine: Physician-to-physician consultation, 919-684-8111