配偶者との同居,成人した子との同居,または一人暮らし以外の生活環境および対人関係は,高齢者にかなりよくみられる。例えば,結婚歴のない高齢者,離婚歴のある高齢者,または配偶者と死別した高齢者のうち,かなりの割合の人は,同胞,友人,およびパートナーとの長期にわたる親密な関係を有している。このような対人関係の性質を把握することは,患者の希望に沿ったケアの立案に有用である。
同性愛者またはトランスジェンダーの高齢者に関する考慮事項
米国の人口の約7%がレズビアン,ゲイ,バイセクシャル,またはトランスジェンダー(LGBT)と推定され,この中には1946~1964年に出生した人々(ベビーブーム世代[1])の2.6%が含まれている;50歳以上のLGBT成人の20%が有色人種である。LGBTの高齢者の3分の1が連邦貧困水準の200%以下で生活しているが,その中には80歳以上のLGBT成人の40%が含まれており,また自分をトランスジェンダーであると認識している80歳以上のLGBT成人の48%が含まれている(2)。
同性愛関係にある高齢者は,貧困率が高く,差別と抑圧が生涯続くことに加え,特別な介護の課題に直面する。医療体制上,このような高齢者の性的嗜好またはジェンダーアイデンティティが認識されないことや,パートナーが介護に関する決定に関与する者または患者の家族の一員として認められていないこと,および状況に応じたサービスが提供されないことがある。例えば,婚姻関係にないパートナーは認知障害のある患者の代わりに意思決定を行う法的地位がないことや,介護施設やその他の集団生活環境で部屋を共用できないことがある。
医療従事者は,パートナー,婚姻状態,および生活環境について質問すべきである。医療提供者は,限られた性別カテゴリーや婚姻状態から選択せざるを得ない標準化された質問に頼るのではなく,「あなたの生活で最も重要な人は誰ですか」,「あなたはジェンダーアイデンティティやセクシャルアイデンティティに関してどのように自認していますか」といった自由回答式の質問を行うべきである。医療提供者は,患者が希望するジェンダー代名詞で患者を呼ぶべきであり,可能であれば,法的関係にかかわらず,患者が密接な関係者とみなす人を医療に関する話し合いに含めるべきである。
参考文献
1.Jones JM: LGBT Identification in U.S. Ticks Up to 7.1%.Gallup Poll Social Series, 2020.
2.Movement Advancement Project (MAP) and Advocacy and Services for LGBT+ Elders (SAGE): Understanding Issues Facing LGBT Older Adults., 2023.
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Understanding Issues Facing LGBT Older Adults: The Movement Advancement Project (MAP) and Advocacy and Services for LGBT+ Elders (SAGE) explains the unique needs and experiences of LGBT older adults.