小児および青年における統合失調症

執筆者:Josephine Elia, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2023年 5月
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統合失調症は,心理社会的機能に相当程度の障害を来す幻覚および妄想が6カ月以上継続してみられる状態である。

    (成人における統合失調症も参照のこと。)

    統合失調症の発症は,典型的には青年期中期から30歳代中盤にかけてみられ,発症のピークは20代である。青年と若年成人における特徴は類似している。思春期前の小児の統合失調症(小児期発症統合失調症)は,青年/若年成人発症型と同様の症状で13歳未満で発症するものであるが,極めてまれである(1)。

    最初のエピソードは通常は若年成人で起こるが,要因となる神経発達上の事象および経験の一部はより早期(例,周産期)に起きている。

    そのような周産期の危険因子としては,以下のものがある:

    • 遺伝性疾患(特に小児期発症リスクを増大させるもの)

    • 影響を受けやすい期間中の特定の薬剤または物質(例,大麻)への曝露

    • 出生前の低栄養

    • 分娩合併症,低酸素症,周産期感染症,常位胎盤早期剥離または胎盤機能不全

    • 小児期の脳損傷

    その後に生じる他の危険因子(例,青年期における違法薬物の使用)も統合失調症発症の誘因となる可能性がある。

    思春期前の小児における小児期発症統合失調症の症状と徴候は,通常は青年および成人におけるそれと類似するが,妄想および幻視(頻度は小児でより高い)の精細さは比較的低い。その他の特徴も小児期発症統合失調症を青年/若年成人型と鑑別するのに役立つ(1):

    • より重症の症状

    • 濃厚な家族歴

    • 遺伝学的異常,発達異常(例,広汎性発達症,知的能力障害),および運動異常の有病率が高い

    • 発症前の社会的困難の有病率が高い

    • 潜行性の発症

    • 認知機能の悪化

    • 神経解剖学的変化(脳皮質灰白質体積の進行性減少,脳室体積の増加)

    幼児における突発的な精神症については,精神状態変化の生理学的原因を検索するための徹底的な医学的評価とともに,常に医学的な緊急事態として治療を行うべきであり,そのような原因としては以下のものがある(2):

    • 治療薬(例,精神刺激薬,コルチコステロイド,抗コリン薬)

    • レクリエーショナルドラッグ(例,大麻)

    • 感染症(ウイルス,細菌,寄生虫),腫瘍,脱髄疾患,外傷,痙攣発作,片頭痛などの中枢神経系疾患

    • 自己免疫疾患(例,抗NMDA[N-メチル-d-アスパラギン酸]受容体脳炎[3],SLE)

    • 内分泌障害(例,甲状腺機能亢進症,低コルチゾール血症)

    • 睡眠障害

    • 代謝性疾患(ポルフィリン症,ウィルソン病,GM2ガングリオシドーシス)

    • ライソゾーム病

    • 栄養欠乏症(マグネシウムおよびビタミンA,D,B1,B3,B12)

    • 染色体異常症(22.11q,XXY,XO,脆弱X症候群,プラダー-ウィリー症候群,ファール病)

    • COVID-19(4–7)

    最近の研究から,テトラヒドロカンナビノール(THC)を含有する大麻製品を使用している青年において特定の精神症(すなわち,双極症および統合失調症)の発生リスクが高まることが示唆されている(8)。このリスク増加は遺伝因子で説明することができない。米国では,マリファナ合法化により,この広く使用されている違法薬物の安全性に関して,青年(とその親)が誤った安心感を抱いてしまう可能性が懸念されている。

    症候性(6, 7)および無症候性(5, 4)COVID-19の青年における精神症症状の報告がいくつかあるほか,COVID-19ではない若年者における精神症による精神科入院率が上昇したとの報告もある(9)。

    小児および青年における統合失調症の治療は複雑で,転帰は様々であり,小児および青年専門の精神科医への紹介が強く推奨される。

    総論の参考文献

    1. 1.Driver D, Thomas S, Gogtay N, et al: Childhood-onset schizophrenia and early-onset schizophrenia spectrum disorders: An update.Child Adolesc Psychiatric Clinic N Am 29(1):71-90, 2020.doi: 10.1016/j.chc.2019.08.017

    2. 2.Skikic M, Arriola JA: First episode psychosis medical workup: Evidence-informed recommendations and introduction to a clinically guided approach.29(1):15-28, 2020.Child Adolesc Psychiatr Clin N Am. doi: 10.1016/j.chc.2019.08.010

    3. 3.Dalmau J, Lancaster EL, Martinez-Hernandez E, et al: Clinical experience and laboratory investigations in patients with anti-NMDAR encephalitis.Lancet Neurol 10(1):63-74, 2011.doi: 10.1016/S1474-4422(10)70253-2

    4. 4.Taquet M , Sillett, Zhu L, et al: Neurological and psychiatric risk trajectories after SARS-CoV-2 infection: An analysis of 2-year retrospective cohort studies including 1,284,437 patients. Lancet Psychiatry 9:815-827, 2022. doi: 10.1016/S2215-0366(22)00260-7

    5. 5.Meeder R, Adhikari S Sierra-Cintron, et al: New-onset mania and psychosis in adolescents in the context of COVID-19 infection.Cureus 14(4): e24322, 2022.

    6. 6.Bashir Z, Butt IM, Vemuri MK, et al: Acute SARS-CoV-2–induced psychosis in an adolescent.Pediatrics 150(3):e2021056004, 2022.https://doi.org/10.1542/peds.2021-056004

    7. 7.Ngo B, Lapp ST, Siegel B, et al: Cerebrospinal fluid cytokine, chemokine, and SARS-CoV-2 antibody profiles in children with neuropsychiatric symptoms associated with COVID-19.Mult Scler and Relat Disord 55:103169, 2021. doi: 10.1016/j.msard.2021.103169

    8. 8.Di Forti M, Quattrone D, Freeman TP, et al: The contribution of cannabis use to variation in the incidence of psychotic disorder across Europe (EU-GEI): A multicentre case-control study.Lancet 6:427-436, 2019.http://dx.doi.org/10.1016/S2215-0366(19)30048

    9. 9.Deren B, Matheson K, Cloutier P: Rate of adolescent inpatient admission for psychosis during the COVID-19 pandemic: A retrospective chart review.Early Interv Psychiatry10.1111/eip.13316, 2022.doi: 10.1111/eip.13316 

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