乳児および小児におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症

執筆者:Geoffrey A. Weinberg, MD, Golisano Children’s Hospital
レビュー/改訂 2023年 3月
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ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,レトロウイルスの一種であるHIV-1により(また頻度は低くなるが近縁のレトロウイルスであるHIV-2によっても)引き起こされる。感染すると進行性の免疫機能低下が引き起こされ,日和見感染症や悪性腫瘍が発生するようになる。末期には後天性免疫不全症候群(AIDS)となる。診断は,生後18カ月以上の小児ではウイルス抗体によって,生後18カ月未満の小児では(PCR検査などの)ウイルス核酸増幅検査によって行われる。治療は抗レトロウイルス薬の多剤併用による。

(成人におけるヒト免疫不全ウイルス[HIV]感染症も参照のこと。)

小児HIV感染症の全般的な自然経過と病態生理は成人のそれと同様であるが,感染形式,臨床像,および治療法は異なることが多い。

HIV感染児は,社会的統合という特有の問題に直面することがある。

総論の参考文献

  1. ClinicalInfo.HIV.gov/Panel on Antiretroviral Therapy and Medical Management of Children Living with HIV: Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Pediatric HIV Infection

  2. Weinberg GA, Siberry GK: Pediatric human immunodeficiency virus infection.In Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases, 9th ed., edited by JE Bennett, R Dolin, and MJ Blaser.Philadelphia, Elsevier, 2020, pp.1732–1738.

乳児および小児のHIV感染症の疫学

米国では,HIV感染症が初めて確認されてから現在までに小児期および青年期早期の症例が約10,000例報告されているが,これは全症例の1%を占めるに過ぎない。2019年には,13歳未満の小児で診断された新規症例は60例未満であった(1)。

米国のHIV感染児では,その95%以上が出生前または周産期における母から児への感染(垂直感染または母子感染とも呼ばれる)である。残りの大部分(血友病またはその他の凝固障害の小児など)は,汚染血液または汚染血液製剤を投与された症例である。性的虐待が原因の症例もある。

米国での母子感染の発生率は,1991年には約25%(感染小児年間1600例以上)であったのに対し2019年には1%以下(感染小児年間約50例のみ)へと有意に低下した。包括的な血清スクリーニングの導入,妊娠中および分娩時の両方における感染妊婦の治療,ならびに曝露した新生児への抗レトロウイルス薬短期予防投与によって,母子感染は減少している。米国では毎年約3000~5000人のHIV感染妊婦が出産しているため,乳児および小児のHIV感染を予防する上で母子感染の予防に注意を払うことが依然として極めて重要である。

1年間に感染する小児の数が減り,周産期HIV感染の減少が見事に達成されたにもかかわらず,米国における青年および若年成人(13~24歳)のHIV感染者の総数は増加し続けている。2019年には,米国で新たに約36,000例のHIV感染症が診断されたが,そのうち20%は13~24歳の青年および若年成人(大半が18歳以上)であった(1)。この小児および青年におけるHIV感染者の逆説的な増加については,周産期に感染した小児の生存率が上昇したことと,それ以外の青年および若年成人(特に男性と性行為をする若年男性)で性感染による新規HIV感染例が増加したことの両方に起因している。男性と性行為をする若年男性でHIV感染を減少させることが,母子感染予防の継続と同様に,引き続き国内のHIV感染制御における重要な焦点である。

2021年の全世界における14歳未満の小児HIV感染者数は約170万人であった(世界の全HIV症例の4%)(2)。毎年,約160,000人の小児が新たに感染し(全新規感染例の10%),約100,000人の小児が死亡している。

これらは疾患としては気の遠くなるような数字ではあるが,妊婦および小児に抗レトロウイルス療法(ART)を施行する新規プログラムのおかげで,新規小児感染および小児期死亡の年間総数は過去数年間で33~50%減少している(1)。それでも,感染した小児がARTを受ける頻度はいまだに成人ほど高くなく,垂直感染(母子感染)の阻止とHIV感染児の治療は,依然として世界の小児HIV医療における最も重要な2つの目標とされている。

疫学に関する参考文献

  1. 1.Centers for Disease Control and Prevention: HIV Surveillance Report, 2020.Vol.33.Published May 2022.Accessed 11/29/2022.

  2. 2.UNAIDS: Global HIV & AIDS statistics—Fact sheet.Accessed 12/19/2022.

乳児および小児におけるHIV感染症の伝播

HIVに感染していて妊娠中にARTを受けなかった母親から生まれる乳児の感染リスクは,25%と推定されている。

母子感染の危険因子としては以下のものがある:

  • 妊娠中または授乳中の抗体陽転(主要リスク)

  • 血漿ウイルスRNA濃度の高値(主要リスク)

  • 母体疾患の進行

  • 母体の末梢血CD4陽性T細胞数の低値

長時間の破水は,現在では重要な危険因子とは考えられていない。

有効陣痛発来前の帝王切開は母子感染のリスクを低下させる。しかしながら,母子感染のリスクを最も大きく低減できる方法が母親および新生児に対する多剤併用ART(通常,ジドブジン[ZDV]を含む)であることは明らかである(乳児および小児におけるHIV感染症の予防を参照)。ZDVの単剤療法により母子感染率は25%から約8%へ低下するが,現在の多剤併用ARTでは1%以下に低下する。

ヒトの母乳中では,細胞を含む画分と細胞を含まない画分の両方でHIVが検出されている。全体で見た授乳を介した感染リスクの推定値は12~14%であり,これは授乳期間の違いを反映している。授乳を介した感染は,血漿ウイルスRNA濃度が高値の母親(例,妊娠中または授乳中に感染した女性)で最も多い。

HIVパンデミックの初期には,汚染された血液製剤(例,全血,濃厚赤血球などの細胞または血漿血液成分,免疫グロブリンの静脈内投与)を介して幼児へのHIVの伝播が発生していたが,血液製剤に対してHIVスクリーニングが行われている場合(免疫グロブリン製剤の場合は加えてウイルス不活化工程を経ている場合)には,もはやこの経路を介した伝播は起きなくなっている。

青年の性行為によるHIVの伝播は,成人の場合と同様である(成人におけるHIV感染症の伝播を参照)。

乳児および小児におけるHIV感染症の分類

HIV感染が引き起こす疾患は幅広いスペクトラムを形成するが,そのうち最も重症のものがAIDSである。米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)が策定したかつての分類体系は,臨床的および免疫学的状態の悪化の進行度を定義したものである。多剤併用ARTが主流となった現在では,これらの臨床的および免疫学的カテゴリーの重要性は大幅に低下しているが,これは多剤併用ARTを処方通りに服用すれば,ほぼ必ず症状の軽減とCD4陽性T細胞数の増加が得られるためである。しかしながら,CD4陽性T細胞数に基づく免疫学的病期分類は,日和見感染症の予防策を計画する上で依然として有用である。

13歳未満の小児における臨床カテゴリーがClinicalInfo.HIV.govによるAppendix C: CDC Pediatric HIV CD4 Cell Count/Percentage and HIV-Related Diseases Categorizationの表に記載されているほか,13歳未満のHIV感染児における年齢別CD4陽性T細胞数または割合に基づく免疫学的カテゴリー(HIV感染症の病期)の表に提示している。乳児および小児では,青年や成人と比べてHIV感染症が急速に進行する場合がある。

表&コラム
表&コラム

乳児および小児におけるHIV感染症の症状と徴候

多剤併用抗レトロウイルス療法(ART)を受ける小児

多剤併用ARTの登場により,小児におけるHIV感染症の臨床像は大きく変化した。細菌性肺炎とその他の細菌感染症(例,菌血症,反復性中耳炎)は,HIV感染児では依然としてよくみられるが,日和見感染症と発育不良については,ART導入前の時代よりはるかに減少している。血清脂質値の変動,高血糖,脂肪分布異常(リポジストロフィーおよび脂肪萎縮症),腎症,骨壊死など新たな問題が報告されているが,それらの発生率は成人のHIV感染者と比べて小児では低くなっている。

多剤併用ARTは神経発達面の予後を明らかに改善するが,治療を受けたHIV感染児において行動面,発達面,認知面の問題の発生率が上昇しているようである。これらの問題がHIV感染症そのもの,治療薬,またはHIV感染児に発生するその他の生物心理社会的因子によるのか否かは不明である。成長や発達にとって重要な期間中に生じたHIV感染やARTによる上記以外の影響が後年に現れるかどうかも不明である。しかしながら,周産期に感染した小児がARTによる治療を受け,現在若年成人となっている患者において,そのような影響は認められていない。そうした有害な影響を検出するため,HIV感染児には経時的なモニタリングが必要になる。

無治療の小児における自然経過

周産期に感染した乳児は,多剤併用ARTが施行されない場合でも,通常は生後数カ月間にわたり無症状で経過する。発症年齢の中央値は約3歳であるが,適切なARTにより,5年間以上無症状の状態を維持し,成人期までの生存を期待できる場合もある。

ART導入前の時代は,約10~15%の患児が急速に進行し,生後1年以内に発症して生後18~36カ月までに死亡していたが,それらの患児は子宮内で早期にHIVに感染したものと考えられていた。一方,大半の患児は分娩時またはその前後に感染している可能性が高く,その場合,進行はより緩徐である(ARTがルーチンに施行されるようになる前でも5年以上生存していた)。

ARTを受けていない乳児でみられる臨床像としては,発育不良,神経学的問題(例,運動技能の喪失または遅れ,易刺激性,頭部の成長不良),ニューモシスチス肺炎などがある。

ARTを受けていない年長の小児では,反復性中耳炎,副鼻腔炎,細菌性肺炎,菌血症,帯状疱疹,およびリンパ性間質性肺炎が高頻度にみられる。小児期後期に発症した年長小児および青年の患者(slow progressorまたはnonprogressorと呼ばれる)では,遷延する全身性リンパ節腫脹,食道カンジダ症,および脳または他の部位のリンパ腫がみられることがあり,これらはARTを受けていない成人にみられる症状と類似している。

日和見感染症を含むこれらの症候はいずれも,多剤併用ARTを受けている患者ではまれにしか生じない。

小児におけるHIVの合併症

合併症が発生する場合,典型的には日和見感染症(およびまれに悪性腫瘍)がみられる。そのような感染は多剤併用ARTによって現在ではまれとなっており,主に未診断でART施行歴のない小児やARTのアドヒアランスが不良な小児に生じている。

日和見感染症が発生する場合,ニューモシスチス肺炎が最も頻度が高く,最も重篤で,死亡率が高い。ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎は生後4~6週という早い時期から発生することもあるが,多くは出生前または出生時に感染した生後3~6カ月の乳児に発生する。ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎を起こした乳児および児童では,安静時の呼吸困難,頻呼吸,酸素飽和度低下,乾性咳嗽,および発熱を伴う亜急性のびまん性肺炎を来すのが特徴的である(発症がより急性で劇症となる,HIV感染のない易感染状態の小児および成人とは対照的である)。

免疫抑制を来した患児でみられる他の日和見感染症としては,カンジダ食道炎,播種性サイトメガロウイルス感染症,慢性または播種性の単純ヘルペスウイルス感染症および水痘帯状疱疹ウイルス感染症などがあり,より頻度の低いものとしては,結核菌Mycobacterium tuberculosis)およびM. avium complexによる感染症,Cryptosporidiumまたはその他の病原体による慢性腸炎,播種性または中枢神経系のクリプトコッカス症またはToxoplasma gondii感染症などがある。

易感染状態となったHIV感染児における悪性腫瘍の発生は比較的まれであるが,平滑筋肉腫と中枢神経系リンパ腫やB細胞性の非ホジキンリンパ腫(バーキット型)などの特定のリンパ腫は,免疫能が正常な小児と比べてはるかに高い頻度で発生する。カポジ肉腫は小児のHIV感染者では非常にまれである。(HIV感染患者によくみられる悪性腫瘍を参照のこと。)

乳児および小児におけるHIV感染症の診断

  • 血清抗体検査

  • ウイルス核酸検査(HIV RNA/DNAまたはHIV RNA測定を含む)

HIV特異的検査

生後18カ月未満の小児にはまだ母体由来の抗体があるため,たとえ第4世代のHIV-1/2抗原抗体同時検査を行ったとしても検査は偽陽性となる。したがって,このような小児では,ウイルス学的HIV検査か,核酸増幅検査(NAT)と総称されるRNA定量検査やRNA/DNA定量検査などによって診断を下す必要がある。より新しいリアルタイムRNAまたはRNA/DNA検査は,出生時には約30~50%の症例,生後4~6カ月までにはほぼ100%の症例の診断に使用でき,これには米国外でより一般的にみられる非サブタイプB型およびグループOのHIV株を有する症例も含まれる。HIVのウイルス培養は,感度および特異度ともに許容範囲内であるが,技術的により労力を要する上に危険であることから,NATに取って代わられている。(ClinicalInfo.HIV.govのDiagnosis of HIV Infection in Infants and Childrenも参照。)

生後18カ月以上の小児におけるHIV感染症の診断は,血清を用いた第4世代のHIV-1/2抗原抗体同時検査,それに続く第2世代のHIV-1/2抗体鑑別検査,さらに必要に応じてHIV-1 RNA定量検査,という一連の検査を行うことで下される。この診断検査アルゴリズムは,血清検体で免疫測定法とウエスタンブロットによる確定を順に行っていた以前のアプローチに代わって主流になっている。年長のHIV感染児では,非常にまれであるが,有意な低ガンマグロブリン血症のためにHIV抗体が検出されないこともある。

HIV RNA定量検査は,血漿中HIVウイルス量を測定して治療効果をモニタリングする目的で行われることが最も多い。この検査は小児の診断検査として用いられることもあるが,RNA濃度が非常に低い場合(5000コピー/mL未満)の検査特異度は不明で,かつ分娩時に治療により完全にウイルスが抑制されていた母親から出生した乳児での感度は不明であることから,注意が必要である。

HIV抗体の迅速免疫測定では,口腔内分泌物,全血,または血清検体の測定結果を数分から数時間で得られる可能性があるため,これによる迅速なポイントオブケア検査を行うこともある。米国では,これらの検査は陣痛・分娩室においてHIV血清状態不明の女性を検査する際に最も有用となっており,これにより周産期カウンセリング,母子感染予防のためのARTの開始,およびウイルスNATによる児の検査を出産時の来院中に手配することが可能となる。これらの検査には,他の突発的な診療状況(例,救急診療部,思春期医療クリニック,性感染症クリニック)や医療サービスの提供が十分でない地域でも同様の利点がある。

しかし,迅速検査には,2つ目の抗原/抗体同時検査,HIV-1/2抗体の鑑別検査,またはNATなどの確定検査が典型的には必要である。予想されるHIV有病率が低い地域では,特異的迅速検査でもほとんどの場合偽陽性が得られる(ベイズの定理による陽性適中率が低い)ことから,このような確定検査は特に重要である。HIV感染の検査前確率(すなわち血清抗体保有率)が高いほど,検査の陽性適中率は高くなる。

第4世代のHIV-1/2抗原/抗体同時検査により当日に診断できる検査施設が増えるにつれ,より感度および特異度が低い迅速免疫測定を行う必要性は低くなる。ただし,迅速免疫測定法であれ第4世代HIV1/2抗原抗体測定法であれ,やはり生後18カ月未満の小児におけるHIV診断としての感度は不十分である。

小児のHIV検査に先立って行う検査前カウンセリングでは,検査がもたらす可能性のある心理社会的リスクとベネフィットについて,母親または筆頭養育者と(十分な年齢であれば小児本人を含めて)話し合う。米国の大半の行政管轄区域では,現在は正式な口頭(または書面)での同意を求めるのではなく,オプトアウト方式の口頭での話し合いが行われており,CDCの推奨もこれに従っている。医療従事者は州,地方,および病院の法令や規則に従うべきである。医学的に検査の適応がある場合は,カウンセリングおよび同意が必要であるという理由で検査が躊躇されるようなことがあってはならず,患者または保護者による同意の拒否は医療従事者の職業的および法的責任を軽減するものではなく,ときには別の手段(例,裁判所命令)によって検査の権限を得なければならないこともある。

検査結果について,家族,第1養育者,および年齢が十分であれば患児本人と話し合うべきである。HIV陽性の場合は,適切なカウンセリングとその後の継続治療を提供しなければならない。全例において,秘密保持が極めて重要である。

HIV感染症またはAIDSの小児および青年を診察した場合には,州,地方,および病院の法令と規則に従い,適切な公衆衛生当局に報告しなければならない。

(新生児の診断について,医師はPerinatal HIV Consultation and Referral Services Hotline:1-888-HIV-8765[1-888-448-8765]に電話で相談できる。)

妊婦および新生児へのHIV検査スケジュール

(Panel on Antiretroviral Therapy and Medical Management of Children Living with HIVによるRecommendations for the Use of Antiretroviral Drugs During Pregnancy and Interventions to Reduce Perinatal HIV Transmission in the United StatesおよびMaternal HIV Testing and Identification of Perinatal HIV ならびにU.S.Preventive Services Task Forceによる2019 Human Immunodeficiency Virus (HIV) Infection: Screeningの推奨も参照のこと。)

妊婦自身の健康維持と母子感染予防のために抗レトロウイルス薬(ARV)の多剤併用を行えるようにするため,妊娠前または妊娠初期に全ての妊婦に対してHIV感染症検査を行うべきである。現在の推奨では,新たなHIV感染症を検出するために第3トリメスターに再度検査を行うことが提案されているが,これは,新たな感染に対する治療は妊娠後期であっても母親の健康改善につながり,母子感染の減少に役立つためである(1)。

新生児に対するHIV感染症検査のスケジュールは多様であり,HIVに感染している母親から周産期にHIVに曝露した乳児の感染リスクが高いか低いかの判断によって異なり,高リスクの乳児には,より頻回に検査を行う。

HIVの周産期感染のリスクが低いとは,以下にように定義される:

  • 母親が妊娠中に抗レトロウイルス療法(ART)を受けた。

  • 分娩間近の時期に母親のウイルス学的抑制状態(血漿中HIVウイルスRNA量が50コピー/mL未満)が持続していた。

  • ARTに対する母親のアドヒアランスについて懸念がみられなかった。

低リスクの乳児の検査は,以下の時期に推奨される:

  • 生後14~21日

  • 生後1~2カ月(ARVの予防投与中止から2週間以上経過後)

  • 生後4~6カ月

HIVの周産期感染のリスクが高いとは,HIV感染者の母親が以下のいずれかに該当する場合と定義される:

  • 出生前ケアを受けなかった

  • 妊娠中にARTを受けなかった,または分娩中にしかARTを受けなかった

  • 妊娠後半(第2トリメスター後期または第3トリメスター)にARTを開始した

  • 妊娠中に急性HIV感染症と診断された

  • 分娩間近の時期に血漿中HIVウイルス量が不明または検出下限以上(50コピー/mL以上)であった(特に経腟分娩の場合)

  • 妊娠中または授乳中(この場合は授乳を中止するべきである)に急性HIV感染症がみられた

高リスクの乳児の検査は,以下の時期に推奨される:

  • 出生時(血液検体は臍帯血ではなく新生児から採取すべきである)

  • 生後14~21日

  • 生後1~2カ月

  • 生後2~3カ月(ARVの予防投与中止から2~6週間後)

  • 生後4~6カ月

陽性と判定されたら,同一または別のウイルス学的検査法により直ちに確認検査を行うべきであり,2回の検査結果がともに陽性ならHIV感染が確定する。

生後2週以上と生後4週以上の時点で行ったHIVのウイルス学的検査が連続で陰性となり,かつAIDS指標疾患がみられない場合,その乳児は推定で未感染と判定される(精度は95%を超える)。HIVのウイルス学的検査が生後4週以上と生後4カ月以上の時点でも陰性となり,かつAIDS指標疾患がみられない場合,その乳児は確実に未感染と判定される。

一部の専門家は,HIV感染を確実に除外してseroreversion(受動的に獲得されたHIV抗体の消失)を確認するためのフォローアップ抗体検査(18カ月以降にHIV-1/2抗原抗体同時検査を1回または6~18カ月の期間にこの検査を2回)の施行を引き続き推奨しており,乳児が低リスクでない,または出生後の曝露が疑われる場合(例,母乳,経皮的曝露,性的虐待)には特に重要であるとしている。Seroreversionが起こる時期は中央値で生後14カ月であるが,遅ければ生後18~24カ月になることもあり,この事実が周産期に曝露した乳児における抗体の解釈を難しくしている。専門家へのコンサルテーションを行うべきであり,周産期曝露を受けた抗体陽性の幼児には(ウイルスNATとともに)再検査が適応となる。

抗体検査陽性でウイルス学的検査陰性の生後18カ月未満の乳児がAIDS指標疾患(ClinicalInfo.HIV.govによるAppendix C: CDC Pediatric HIV CD4 Cell Count/Percentage and HIV-Related Diseases Categorizationの表を参照)を発症した場合は,HIV感染症と診断される。

HIV診断後の追加検査

感染が診断されたら,他の検査を行う:

  • CD4陽性T細胞数

  • CD8陽性T細胞数

  • 血漿ウイルスRNA濃度

感染児には,疾患の程度,予後,および治療効果の確認に有用な,CD4陽性およびCD8陽性T細胞数と血漿ウイルスRNA濃度の測定が必要である。CD4陽性細胞数は,初期には正常値(例,13歳未満のHIV感染児における年齢別CD4陽性T細胞数または割合に基づく免疫学的カテゴリー[HIV感染症の病期]の表に記載されたカテゴリー1の年齢別カットオフ以上の値)を示すこともあるが,最終的には低下する。CD8陽性細胞数は,初期に増加し感染後期まで減少しないのが通常である。細胞集団におけるこれらの変化は,HIV感染症に特徴的な(ただし他の感染症でも生じることがある)CD4陽性/CD8陽性細胞比の低下をもたらす。生後12カ月未満の無治療患者では,通常,血漿ウイルスRNA濃度が異常高値(平均約200,000RNAコピー/mL)となる。生後24カ月までには,無治療の患児におけるウイルス濃度は(平均約40,000RNAコピー/mLにまで)減少する。

小児ではHIV-RNA濃度の個人差が大きいため,この数値による病状や死亡率の予測の精度は成人の場合よりも低くなるが,血漿ウイルス濃度測定とCD4陽性細胞数を組み合わせる方が,予後予測上,一方のみのマーカー測定よりも正確な情報が得られる。総リンパ球数や血清アルブミン濃度などのより低コストの代替マーカーからも小児のAIDS死亡率を予測することができ,より高度な検査が利用できない地域で有用となりうる。

ルーチンには測定されないが,血清免疫グロブリン濃度(特にIgGおよびIgA)がしばしば著明に上昇する(ただし,汎低ガンマグロブリン血症を偶然発症している場合もある)。皮膚テストの抗原に対するアネルギーが生じていることがある。

診断に関する参考文献

  1. 1.Pollock L, Cohan D, Pecci CC, Mittal P: ACOG Committee opinion no. 752: Prenatal and perinatal human immunodeficiency virus testing. Obstet Gynecol 133(1):187, 2019.doi: 10.1097/AOG.0000000000003048

乳児および小児におけるHIV感染症の治療

  • 抗レトロウイルス薬(ARV)の多剤併用(抗レトロウイルス療法[ART])

  • 支持療法

多剤併用ARTは小児毎に個別化されるが,以下の3種類の薬剤が使用されることが最も多い:

  • 2つの核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)に加えて

  • 1つのインテグラーゼ阻害薬(integrase strand transfer inhibitor:INSTI)または1つのプロテアーゼ阻害薬

ときに2つのNRTIとともに非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)が投与される。

多剤併用ARTによる治療が成功を収めていることから,現在は,医学的問題と社会的問題の両方に対処する,慢性疾患としてのHIV感染の管理が注目されている。重要な長期の医学的問題として,HIV関連および薬剤関連の代謝性合併症を管理し,薬物動態および薬力学の年齢に関連した変動を考慮する必要性が挙げられる。社会的問題としては,周囲からの圧力に対処すること,成績向上と適切なキャリア選択を達成すること,感染リスクについて小児を教育することなどがある。青年では医療上の助言を求めることや助言に従うことに困難がある場合が多く,治療のアドヒアランスを維持するために特別な支援が必要になる。

乳幼児における課題としては,新しい製剤の小児における薬物動態データの不足,液剤の嗜好性および忍容性,固定用量の配合錠がないことなどが挙げられる。

小児および青年患者の管理は,小児HIV感染症の管理について経験のある専門家と協力して進めるべきである。

小児におけるARTの適応

(一部のARVおよびその用量に関する考察については,小児における抗レトロウイルス療法ならびにPanel on Antiretroviral Therapy and Medical Management of Children Living with HIVによるGuidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Pediatric HIV InfectionおよびAppendix A: Pediatric Antiretroviral Drug Informationを参照のこと。)

小児へのARTの開始基準は成人の場合と同様であり,基本的にHIV感染症の小児には全例で可及的速やかにARTを行うべきである(rapid initiation,診断後1~2週間以内)。HIV感染乳児におけるARTの早期開始については,強いコンセンサスと臨床試験でのエビデンスの両方がある。

治療目標は全ての年齢において成人の場合と同様,以下の通りである:

  • HIV複製を抑制する(血漿中HIVウイルス量で判定する)。

  • 年齢別CD4陽性細胞数および割合を維持または達成する。

治療開始を決定するに先立ち,医療従事者は養育者と患児がARVによる治療を遵守できるかどうかを十分に評価し,治療のベネフィットとリスクについて話し合うべきである。治療戦略に関する専門家の意見は急速に変化するため,専門家へのコンサルテーションが強く勧められる。

ARTに対するアドヒアランス

ARTの成功は,複雑となりうる投薬レジメンを家族および患児が遵守できる場合にのみ達成できる。アドヒアランス不良は,HIVのコントロール失敗につながるだけでなく,薬剤耐性をもつHIV株を選択することにより,将来の治療選択肢を制限することにもなる。

アドヒアランスを阻む障壁には,治療開始前に対処しておくべきである。障壁としては,錠剤または懸濁剤の入手可能性および嗜好性(palatability),有害作用(並行して行われる治療との薬物相互作用によるものを含む),薬物動態学的因子(食後または空腹時に服用する必要性など),服用における患児の他者に対する依存(またHIV感染者である親が自身の服薬を忘れがちになる場合もある)などが挙げられる。新しい1日1回または1日2回の併用レジメンと味のよい小児用製剤はアドヒアランスの改善に役立ち,また比較的年長の小児および成人に対して1日1回の固定用量配合錠が利用できるようになったことは,HIVに感染している多くの若年層の助けとなっている。

青年では,周産期のHIV感染であるのか,性行為や注射薬物使用による後天的なHIV感染であるのかにかかわらず,アドヒアランスについて特に問題がみられる。青年には,自尊心の低さ,無秩序で混沌とした生活習慣,病気のために仲間外れになることへの恐れ,ときに家族の支えがないことなど,ARTに対するアドヒアランスを妨げる可能性のある複雑な生物心理社会的問題がみられる。さらに青年では,その発達上の特性から,感染後無症状のうちからARVの使用が必要であることが理解できなかったり,その有害作用を過度に不安がることがある。

医療体制との頻回な接触にもかかわらず,周産期感染者の青年は自身のHIV感染症を恐れたり否定したりし,医療チームが提供する情報を疑い,成人医療ケア体制への移行がうまく進まないこともある(成人医療への移行を参照)。青年に対する治療レジメンは,これらの問題を考慮しながら作成する必要がある。目標は青年患者に最大限強力なARVレジメンを遵守させることであるが,患者の成熟度と支援体制を現実的に考えれば,治療計画としてはまず,日和見感染症の回避に焦点を置くとともに,生殖医療サービス,住居,および学校生活をうまく送る方法について情報提供を行うのが妥当である可能性がある。青年が適切な支援を受けているとケアチームが確信する場合は,どのARVが最良かを正確に決定することができる。

モニタリング

薬物毒性や治療失敗を同定するために,臨床所見および検査所見のモニタリングが重要となる。

  • 治療開始時およびART開始時(およびARTレジメンを変更する場合):身体診察,アドヒアランスの評価,血算,血清生化学検査値(電解質,肝および腎機能検査など),血漿中HIVウイルス量,CD4陽性リンパ球数,ならびに青年期女子には妊娠検査

  • 3~4カ月毎:身体診察,アドヒアランスの評価,血算,血清生化学検査値(電解質,肝および腎機能検査など),血漿中HIVウイルス量,ならびにCD4陽性リンパ球数

  • 6~12カ月毎:脂質プロファイルおよび尿検査:臨床状態が安定している患者において,まだ行っていなければ,血算および血清生化学検査値(電解質,肝および腎機能検査など);アドヒアランスの評価

治療開始時とウイルス学的失敗が疑われることによるARTの変更時には,HIV遺伝子型の薬剤耐性試験を行うべきである。

アバカビルを処方する際には,HLA-B* 5701アレルの有無を検査する必要があり,アバカビルはHLA-B* 5701陰性の患者にのみ処方すべきである。将来アバカビルを使用する場合の安全性を明らかにするため,この検査は多くの場合,治療開始時に行われる。

治療の状態が安定している場合,すなわち,12カ月以上にわたりHIV RNAが検出不能で,CD4陽性リンパ球数が年齢相応の正常値であり,毒性の臨床徴候がなく,家族支援の体制が安定している場合には,多くの医師が臨床検査による評価の間隔を6~12カ月間まで延長している。ただし,アドヒアランスを評価し,成長および臨床症状をモニタリングし,必要であれば体重に基づくARVの用量を更新する機会を得るために,3カ月毎に受診させて血漿HIVウイルス量を測定するのが有益である。

日和見感染症の予防

特定のHIV感染児には,ニューモシスチス肺炎およびM. avium complex感染症の予防を目的とする予防的治療が推奨される。その他の微生物(サイトメガロウイルス,真菌,トキソプラズマなど)による日和見感染症の予防については,データが限られている。これらを含む日和見感染症の予防に関するガイダンスは,ClinicalInfo.HIV.govでも入手可能である。

ニューモシスチス肺炎の予防は以下の場合に適応となる:

  • 6歳以上のHIV感染児でCD4陽性細胞数が200/μL未満またはCD4陽性細胞の割合が14%未満である場合

  • 1~6歳のHIV感染児でCD4陽性細胞数が500/μL未満またはCD4陽性細胞の割合が22%未満である場合

  • CD4陽性細胞数および割合を問わず,生後12カ月未満のHIV感染児

  • HIV感染女性から出生した乳児(生後4~6週に開始)では,ウイルス学的検査で計2回(生後2週以上で1回と生後4週以上で1回)陰性と判定されることでHIV感染を暫定的に否定されるか,ウイルス学的検査で計2回(生後1カ月以上で1回と生後4カ月以上で1回)陰性と判定されることで確定的に否定されるまで(注:HIV感染の除外におけるこれらの定義が有効となるのは,母乳を与えていない場合に限られる。)

多剤併用ARTによる免疫再構築が起こった場合,6カ月以上にわたり多剤併用ARTを受け,かつ連続3カ月以上にわたりCD4陽性細胞数および割合が前述の治療閾値より高く維持されているHIV感染児には,ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎に対する予防の中止を考慮する。その後,3カ月に1回以上の頻度でCD4陽性細胞数および割合を再評価し,当初の基準に達した場合は予防を再開すべきである。

年齢を問わず,ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎の予防に選択すべき薬剤はトリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX)である。用量は,TMP 75mg/SMX 375mg/m2,経口,1日2回,連続3日/週(例,月曜,火曜,水曜)で,代替スケジュールは同用量の1日2回連日投与,同用量の1日2回隔日投与,または2倍量(TMP 150mg/SMX 750mg/m2)の1日1回投与,連続3日/週である。体重に基づく用量(TMP 2.5~5mg/SMX 12.5~25mg/kg,経口,1日2回)の方が使用が容易と感じる専門家もいる。

TMP/SMXに耐えられない患者には,ジアフェニルスルホン2mg/kg(100mgを超えないこと),経口,1日1回が代替となる(特に5歳未満の患者)。アトバコン経口剤の連日投与またはエアロゾル化されたペンタミジン(5歳以上の小児には専用吸入器により300mg)の月1回投与が別の代替法である。ペンタミジンの静注剤も使用されているが,効果が低く,より毒性が強い。

M. avium complex感染症の予防は以下の場合に適応となる:

  • 6歳以上の小児でCD4陽性細胞数が50/μL未満の場合

  • 2~6歳の小児でCD4陽性細胞数が75/μL未満の場合

  • 1~2歳の小児でCD4陽性細胞数が500/μL未満の場合

  • 1歳未満の小児でCD4陽性細胞数が750/μL未満の場合

アジスロマイシン週1回またはクラリスロマイシン連日が選択すべき薬剤であり,代替薬はリファブチン連日である。

HIV感染児への心理社会的アプローチ

小児のHIV感染症はその家族全体に影響を及ぼす。周産期に感染した子供のいる家族では,同胞および両親の血清学的検査が推奨される。HIV感染の所見のない家族がHIV感染児を養子にする場合,この措置は必要ない可能性がある。医師は教育と継続的なカウンセリングを提供しなければならない。

他者へのリスクを低減するため,HIV感染児には適切な衛生対策および行動に関する教育を行うべきである。この疾患について,いつ,どの程度まで教えるかは,年齢および成熟度に依存する。児童および青年には,自身の診断を認識させるべきであり,また性感染の可能性について適切なカウンセリングを行うべきである。家族は,社会的孤立がもたらされる可能性があるため,診断を肉親以外の人に話すのを望まないことがある。罪悪感がよくみられる。小児を含めた家族が臨床的に抑うつ状態となり,カウンセリングが必要となることもある。

HIV感染症は小児間でみられる典型的な接触(例,唾液や涙液)では伝播しないため,HIV感染児には制限のない登校が許可されるべきである。同様に,HIV感染児の里親制度,養子紹介,および保育を制限する特別な理由も存在しない。他者へのリスクが増大しうる状況(例,激しく噛みつく,被覆できない滲出性の濡れた皮膚病変)では,特別な注意が必要になる場合がある。

患児の状態を知る学校職員は,適切なケアを確保するのに最小限必要な数にとどめるべきである。家族には学校に通知する権利があるが,HIV感染児のケアや教育に携わる者は,患児のプライバシー権を尊重しなければならない。情報の開示は,親または法的保護者のインフォームド・コンセントと小児からの年齢相応の同意が得られた場合のみに制限されるべきである。

ルーチンの予防接種

いくつかの例外はあるものの,HIV感染児にもルーチンの小児期予防接種計画COVID-19を含む)が推奨される。

主な例外としては,ウイルスおよび細菌の生ワクチン(例,BCG[カルメット-ゲラン桿菌])は避けるか,特定の状況でのみ使用すべきという点が挙げられる(HIV感染児における生ワクチンの接種に対する考慮事項の表を参照)。

経口生ポリオウイルスワクチン(米国では利用できないが,世界の他の地域ではまだ使われている)と弱毒生インフルエンザワクチンは推奨されないが,不活化ポリオワクチンはルーチンのスケジュールに従って接種し,不活化インフルエンザワクチンは毎年接種すべきである。

麻疹・ムンプス(流行性耳下腺炎)・風疹混合(MMR)生ワクチン水痘生ワクチンは,重度の免疫抑制を示している小児には接種してはならない。しかしながら,MMRと水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)ワクチン(これらは分けて接種する;MMRVは弱毒化水痘ウイルスのウイルス価が高く,この集団における安全性が確認されていないため,使用しないこと)は,ルーチンの接種スケジュールに従っている無症状の患者と,HIV症状がみられたことがあるが重度の易感染状態ではない患者(すなわち,CD4陽性T細胞の割合が15%以上など,カテゴリー3ではない患者[13歳未満のHIV感染児における年齢別CD4陽性T細胞数または割合に基づく免疫学的カテゴリー(HIV感染症の病期)の表を参照])に接種することができる。可能であれば,症状のある患者では免疫反応が得られる可能性を高めるために,すなわち免疫機能が低下する前に,生後12カ月時点でMMRおよびVZVワクチンを開始すべきである。できるだけ早く抗体陽転を誘導するため,それぞれの2回目の接種は4週以降に速やかに行う(13歳未満の非感染児での水痘ワクチンの接種間隔は一般的には3カ月が望ましいとされている)。アウトブレイク時など,麻疹曝露のリスクが高まっている場合は,生後6~9カ月など早い時期に麻疹ワクチンを接種しておくべきである。

ロタウイルスの経口生ワクチンは,HIV曝露またはHIV感染のある乳児にもルーチンの接種スケジュールに従って接種することができる。症候性の乳児患者における安全性および有効性のデータは限られているものの,予防接種は全体的な便益につながる可能性が非常に高く,とりわけロタウイルス感染症による死亡率が有意に高い地域では特にその傾向が強い。

米国は結核有病率が低い地域であるため,BCGワクチンの接種は推奨されない。しかしながら,世界には結核有病率の高い国々をはじめ,BCGがルーチンに接種されている地域もあり,それらの国の多くでは妊娠可能な女性におけるHIV感染症の有病率も高い。BCGは細菌生ワクチンであるため,HIV感染児にとっていくらか有害であるが,HIV非感染児はもちろん一部のHIV感染児においても結核感染の予防に役立つ可能性が高い。世界保健機関(World Health Organization:WHO)は現在では,たとえ無症状でもHIV感染が判明している小児にはBCGを接種すべきでないと推奨している。しかしながら,特定の地域では,結核とHIV感染症の相対的な発生率に応じて,HIVに感染した母親から出生したHIV感染状態が不明の無症状の乳児にBCGが接種されることもある。BCGはまた,HIV感染状態が不明の女性から出生した無症状の乳児にも接種することがある。

世界の一部の地域では,黄熱ワクチンまたはデングウイルスワクチンが小児にルーチン接種されているが,これらの生ワクチンは重度の免疫抑制がない小児に限定して接種すべきである。

症候性のHIV感染児は通常,ワクチンに対する免疫反応が乏しいため,ワクチンで予防可能な疾患(例,麻疹,破傷風,水痘)に曝露した際には,ワクチン接種歴に関係なく感受性が高いと考えるべきである。そうした小児は免疫グロブリン静注療法による受動免疫を受けるべきである。免疫グロブリン静注療法は,麻疹に曝露した免疫のない家族全員にも行うべきである。

症候性のHIV感染者と生活する血清反応陰性の小児は,経口ポリオワクチンではなく不活化ポリオウイルスワクチンの接種を受けるべきである。インフルエンザ(不活化または生),MMR,水痘,およびロタウイルスワクチンについては,これらのワクチンウイルスは一般的にワクチンによって伝播することがないため,通常どおりに接種することができる。家庭内の成人接触者は,HIV感染者にインフルエンザを感染させるリスクを低減するため,毎年インフルエンザワクチン(不活化または生)の接種を受けるべきである。

HIV感染児に対するその他の推奨事項は以下の通りである:

特定の曝露後投与に関する推奨にも相違点がある。HIVに感染した小児,青年,および成人に4価髄膜炎菌結合型ワクチンのルーチン接種およびキャッチアップ接種が推奨されている(HIV感染者への髄膜炎菌結合型ワクチンの使用については,Advisory Committee for Immunization Practices[ACIP]による推奨を参照)。

表&コラム
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治療に関する参考文献

  1. 1.Kobayashi M, Farrar JL, Gierke R, et al: Use of 15-valent pneumococcal conjugate vaccine among U.S. children: Updated recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices—United States, 2022. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 71(37):1174–1181, 2022.doi: 10.15585/mmwr.mm7137a3

成人医療への移行

若年のHIV感染者が小児対象の医療モデルから成人対象の医療モデルへと移行するには,時間と事前計画が必要になる。この過程は積極的かつ継続的なものであり,単に成人を対象とする医療機関に1度紹介すれば済む問題ではない。小児対象の医療モデルは家族を中心とする傾向があり,ケアチームには医師,看護師,ソーシャルワーカー,および精神医療の専門職で構成される集学的チームが含まれ,周産期感染の若年者は出生以来そのようなチームによるケアを受けてきたことになる。

対照的に,成人を対象とする典型的な医療モデルは,個人を中心とする傾向があり,関係する医療従事者は個々の医療機関におり,何回もの受診を必要とする。成人対象の医療機関の医療従事者は,しばしば多数の患者を管理しており,受診の遅れや受診忘れ(青年でよくみられる)への対応はより厳しいものとなる。最後に,青年または若年成人における保険適用範囲の変化も医療の移行を複雑にする要因となりうる。

数カ月かけて計画的に移行を進め,かつ小児医療および成人医療の従事者と青年を話し合わせ,双方合同での診察に青年を受診させることにより,移行がスムーズとなり,成功の可能性を高めることができる。HIVに感染した若年者の成人医療への移行については,American Academy of Pediatricsのリソースが利用可能である(Transitioning HIV-Infected Youth Into Adult Health Careを参照)。

乳児および小児におけるHIV感染症の予後

ART導入前の時代は,医療などの資源が豊富な国では10~15%,資源が少ない国では50~80%の感染児が4歳未満で死亡していたが,適切な組合せの多剤併用ARTレジメンにより,現在では周産期に感染した小児の大半が良好な状態で成人期を迎えている。そのように周産期に感染し,若年成人となった患者が出産したり,父親になったりする例が増えてきている。

しかしながら,日和見感染症(特にニューモシスチス[Pneumocystis]肺炎),進行性の神経疾患,または重度の消耗が生じた場合には,多剤併用ARTによってウイルス学的および免疫学的コントロールが再度得られない限り,予後不良となる。ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎による死亡率は治療下では5~40%,無治療ではほぼ100%とである。早期(生後7日まで)にウイルスが検出される場合と生後1年以内に症状が出現する場合も,予後不良である。

複製能を有するHIVが根絶された(すなわち5年以上にわたり「治癒状態」にある)成人例が,これまでに数例報告されている。これらの成人は,白血病のために造血幹細胞移植を必要とした。ドナー細胞はCCR5-Δ32変異のホモ接合体で,それにより移植リンパ球にCCR5指向性HIV感染に対する抵抗性が付与されたもので,それ以降HIVは検出限界未満の状態が維持されている。ART,骨髄破壊的処置,および移植片対宿主病も,こうした治癒に寄与した可能性が高い。

出生前ケアおよび出生前(または分娩時)ARTを受けていないHIV感染女性から出生した乳児のうち少なくとも1例において,暫定報告では治癒したと判断されていたが,その後の臨床フォローアップによりHIV感染が持続していることが判明した。この乳児には,生後2日目から生後15カ月まで高用量の多剤併用ART(一般的な使用での安全性および有効性はまだ不明である)が行われたが,その後に意図せず中断された。にもかかわらず,生後24カ月時にウイルスRNAの複製は検出不能(「機能的治癒」)であったが,その時点でもプロウイルスDNAは検出可能であった。その後HIVの増幅が始まった。これまでに乳児または小児でHIV感染症の永続的な治癒が確認されたことはなく,治癒の達成が可能かどうかは依然として不明である。

しかしながら,HIV感染は効果的なARTが施行されれば長期生存も望める治療可能な感染症となったことが判明した。将来の研究は間違いなく,ARTの忍容性および効力を改善する道を明らかにして,治癒をもたらす治療法というゴールの達成に役立つであろう。現在のところ,乳児,小児,成人のいずれにおいてもARTの中断は推奨されていない

乳児および小児におけるHIV感染症の予防

曝露前予防については,曝露前予防(PrEP)を参照のこと。

曝露後予防については,曝露後予防(PEP)を参照のこと。

周産期感染の予防

出生前の適切なARTは,母体を至適な健康状態とし,母子感染を予防し,子宮内での薬物毒性を最小限に抑えることを目指すものである。ARVおよびHIV検査が容易に利用できる米国やその他の国々では,ARVによる治療が全てのHIV感染妊婦に対する標準となっている(成人におけるHIV感染症の治療を参照)。陣痛が発来した妊婦の迅速HIV検査により,HIV血清状態の記録がなくても,こうした処置の即時開始が可能となる。

全てのHIV感染妊婦は,母子感染の予防と自身の健康のため,HIV感染症と診断され,ARTの服薬遵守が可能になると同時に,多剤併用ARTを開始すべきである。多剤併用ARTは妊娠の全期間中にわたり継続する。妊娠は多剤併用ARTレジメンの禁忌ではなく,具体的には,第1トリメスター中のドルテグラビルおよびエファビレンツはいずれも禁忌とならない。ボツワナで実施された臨床試験では,当初,受胎前後のドルテグラビルへの曝露に乳児神経管閉鎖不全のわずかな増加との関連が示されたが,その後の研究では明らかな増加はみられず,この増加が真にドルテグラビルによるものであったのか,葉酸欠乏など他の因子によるものであったのかは不明である。大半の専門家は,すでに多剤併用ARTを受けているHIV感染女性が妊娠した場合,たとえ第1トリメスターの早期でも,その治療を継続すべきであると考えている。

母体の血漿中HIVウイルス量が1000コピー/mLを超える場合には,陣痛発来前の待機的帝王切開が推奨される。陣痛がすでに始まっている場合,帝王切開により母子感染が減少するか否かはあまり明らかではない。

陣痛時には,以下の少なくとも1つに当てはまる女性に対し,ジドブジン(ZDV)を最初の1時間は2mg/kgで静注し,その後分娩まで1mg/kg/時で静注する:

  • 最近の血漿中HIVウイルス量 > 1000コピー/mL

  • 分娩間近の時期の血漿中HIVウイルス量が不明

  • ARTに対するアドヒアランスが不完全と考えられる

現在では多くの専門家が,多剤併用ARTを受けて分娩間近の時期に血漿中HIVウイルス量が50コピー/mL未満になった女性には,陣痛時のZDVの静注は必要ないと考えている。しかしながら,分娩時または分娩間近の時期にウイルス量が50~999コピー/mLである女性では,ZDVの静注を考慮すべきであり,これにより周産期感染に対するさらなる予防効果が得られる可能性がある。

分娩後には,過去にARTを受けていない場合も含めた全ての女性に対して多剤併用ARTを継続する。

HIVに曝露した全ての新生児に,HIV感染のリスクを低減するために分娩後のARVレジメンを投与するべきである。治療は可及的速やかに開始すべきである(分娩後6~12時間以内が望ましい)。ARVレジメンは,母体および乳児の周産期HIV感染の危険因子により決定される(Panel on Antiretroviral Therapy and Medical Management of Children Living with HIVによるMaternal HIV Testing and Identification of Perinatal HIV Exposureに関する推奨事項を参照)。

予防レジメンは以下のように分類される:

  • ARVの予防投与

  • HIVに対する推定治療(presumptive therapy)

低リスクの乳児はARV予防投与の適応である。これには,分娩間近の時期にARTによる持続的なウイルス学的抑制(血漿中HIVウイルス量50コピー/mL未満)が認められ,ARTに対するアドヒアランスに関する懸念のない女性から正期産で生まれた新生児が含まれる。

低リスクの乳児には,ZDV 4mg/kg,経口,1日2回によるARV予防投与を生後4週間行うべきである。ZDVは乳児予防のバックボーンであり,HIV感染女性から出生した全ての乳児に対し,危険因子とは無関係に用いられる。

一部の専門家によると,低リスク基準を満たし,10週間以上連続してARTを受けており,かつ妊娠期間中を通してウイルス抑制状態が維持されている女性から妊娠37週以上で出生した厳選された乳児には,ZDVの2週間の投与が勧められている(Panel on Antiretroviral Therapy and Medical Management of Children Living with HIVによるManagement of Infants Born to People with HIV Infectionを参照)。

高リスクの乳児には,ジドブジン,ラミブジン,およびネビラピンまたはラルテグラビルの3剤併用レジメン(用量については周産期にHIVに曝露した新生児に対する抗レトロウイルス療法の用量の表を参照)により,HIVに対する推定治療(presumptive therapy)を最長6週間またはまれにより長期間にわたり行う(HIV感染リスクに応じた抗レトロウイルス薬による新生児管理の表を参照)。この治療は元はといえば予防に供するものであるが,後からHIV感染が確認された新生児に対する予備的な治療の役割も果たす。

生後14日未満の乳児に対し安全かつ効果的とみなされているARVは非常に少なく(重要なものはZDV,ネビラピンラミブジンアバカビル,およびラルテグラビル),早産児で利用可能な投与データがある薬剤はさらに少ない(ジドブジンラミブジンネビラピン,および後期早産児ではラルテグラビルのみ)。ARVに対する薬剤耐性をもつウイルスに感染した妊婦から生まれた新生児に対する至適なARVレジメンは不明である。

その後にHIVのウイルス学的検査で陽性と判定された乳児には,既知のHIV感染症治療に適した3剤併用のARTを施行する。小児HIVまたは母体HIV感染の専門家へのコンサルテーションを直ちに行うべきである(ClinicalInfo.HIV.govまたはNational Clinician Consultation Centerの情報を参照)。HIVの垂直感染の軽減策および新生児の診断に関して,医師はPerinatal HIV Consultation and Referral Services Hotlineに電話(1-888-HIV-8765[1-888-448-8765])で相談することもできる。

表&コラム
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HIVに感染した母親が安全な人工乳が手頃な価格で利用できる国(米国を含む)に住んでいて,ARTを受けて,ウイルス量検出限界未満を維持している場合,授乳を選択する母親もいる。授乳するかどうかの決定は,カウンセリングと共同での意思決定のための話し合いを行ってから下すべきである。このような状況下では,新生児のARV予防を継続することや診断検査の頻度を増やすことについて,いくつかの推奨が出されているが,データが不十分であるため,コンセンサスは得られていない。小児HIV感染症の専門家へのコンサルテーションを行うべきである(Panel on Antiretroviral Therapy and Medical Management of Children Living with HIVによるInfant Feeding for Individuals with HIV in the United Statesを参照)。

また,感染症や低栄養が幼児期死亡の主要な原因となっていて,かつ安全な乳児用人工乳を低価格で入手できない国々においては,呼吸器および消化管感染症による死亡リスクを低下させる母乳栄養による防御効果がHIV感染のリスクを相殺する場合がある。世界保健機関(WHO)は,このような国において,HIVに感染した母親は少なくとも12カ月は母乳育児を続けるよう推奨している(WHO Guideline: Updates on HIV and Infant Feedingを参照)。

安全で手頃な価格の人工乳が容易に入手できる米国やその他の国々において,HIV感染女性の母乳バンクへの提供は禁忌である。

HIVに感染した母親が幼若乳児のために食べものを咀嚼して与えることも禁忌である。

青年の感染予防

青年は特にHIV感染のリスクが高いため,教育を受けるとともに,HIV検査を受けて自身の血清状態を知っておくべきである。教育には,感染に関する情報,感染による影響,ならびにリスクの高い行動の自制や性的に活動的である青年であれば安全な性行為(例,一貫した正しいコンドームの使用)などの予防戦略を含めるべきである。HIV感染リスクが高い青年(特に人口統計学上,最速で増加しつつある米国の若年新規HIV感染者である男性間性交を行う黒人およびヒスパニックの青年男性)を対象とした予防対策を講じるべきであり,全ての青年がリスクを低減するための教育を受けるべきである。

米国の大半の州では,検査やHIV血清状態に関する情報の開示にインフォームド・コンセントが必要とされている。患者の同意を得ずにセックスパートナーにHIV感染の状態を開示すべきかどうかの決定は,以下に基づいて判断すべきである:

  • パートナーへの開示後に患者がパートナー間暴力を受ける可能性

  • パートナーにリスクがある可能性の高さ

  • リスクを疑って予防措置を講じるべき合理的理由がパートナー側にあるか

  • このような情報の保留または開示に関する法的要件の有無

曝露前予防(PrEP)

PrEPとは,HIVに感染していないが感染リスクが高い個人(例,HIVに感染しているセックスパートナーをもつ)がARVを使用することである。一般的に,PrEPではフマル酸テノホビル ジソプロキシル/エムトリシタビン(TDF/FTC)の配合剤を使用する;頻度は下がるが,テノホビル アラフェナミド/エムトリシタビン(TAF/FTC)の配合剤が使用されることもあり,これも非常に高い効力を有する。PrEPを行っているからといって,コンドームの正しい使用や高リスク行動(例,注射針の共用)の回避など,HIV感染のリスクを低減する他の対策が不要になるわけではない。

HIV陰性で,妊娠中にTDF/FTC PrEPを服用していた母親から生まれた乳児に関するデータは不足しているが,現在のところ,HIVに感染しておりTDF/FTCの治療を受けていた母親から生まれた小児における有害作用は報告されていない。注射薬物使用者がPrEPを使用することによりHIV感染症のリスクが下がるかどうかについては,現在研究中である。

米国の青年は,性感染症やHIVに関すサービスを求める過程でしばしば障壁に直面するが,その理由の1つとして,秘密の露見(すなわち,親や保護者に報告されること)への恐れがある。このことは青年へのPrEPの実施に対する障壁にもなっている。費用の問題(保険が適用されない可能性)についても,PrEPを受ける成人と比べて青年の方が複雑である可能性がある。こうした潜在的な障壁があるものの,性的に活動的な青年,特に高リスクの性行動をとる青年に対しては,PrEPを強く考慮すべきである。性感染症およびHIVに関するサービスに関する未成年の同意に関する法律を要約した最近の論考が指針として利用できる(1)。

服薬アドヒアランスが不良な高リスク集団におけるPrEPをさらに改善するため,長時間作用型の抗レトロウイルス薬の注射剤(カボテグラビルなど)も研究されている。最新のCDCの推奨については,Pre-Exposure Prophylaxis (PrEP)を参照のこと。さらなる考察については,New York State Department of Health AIDS InstituteによるPrEP to Prevent HIV and Promote Sexual Healthを参照のこと。

PrEPに関する参考文献

  1. 1.Nelson KM, Skinner A, Underhill K: Minor consent laws for sexually transmitted infection and HIV services. JAMA 328(7):674–676, 2022.doi: 10.1001/jama.2022.10777

要点

  • 乳児および小児のHIV感染例は,その大半が出生前または出生時の母子感染か,安全で手頃な乳児用人工乳が入手できない国における母乳栄養によって発生する。

  • 母親に対する抗レトロウイルス療法(ART)により,母子感染の発生率は約25%から1%未満まで低下する。

  • HIV感染女性から出生した新生児には,母子感染を予防するため抗レトロウイルス薬(ARV)による治療を短期間行う。

  • 生後18カ月未満の小児は,HIV RNAまたはRNA/DNA定量検査(例,RNAのtranscription-mediated amplification法)により診断する。

  • 生後18カ月以上の小児は,第4世代のHIV-1/2抗原抗体同時検査に続いて第2世代のHIV-1/2抗体鑑別検査および必要に応じてHIV-1 RNA定量検査を行う手順により診断する。

  • 12カ月未満の全てのHIV感染児;III期の日和見感染症がある,またはCD4陽性細胞数< 500/μLの1~6歳未満の感染児;III期の日和見感染症がある,またはCD4陽性細胞数< 200/μLの6歳以上の感染児には,緊急治療を行う(rapid initiation)。

  • HIVに感染している他の全ての小児および青年には,アドヒアランスをさらに十分に評価し,その問題について小児と保護者が取り組むと同時に,治療を行う。

  • 多剤併用ARTでは,アドヒアランス向上のため,可能であれば固定用量配合剤を使用するのが望ましい。

  • HIV感染のない青年には,HIV感染予防のためにPrEPを行ってもよいが,秘密保持や費用の問題が成人がPrEPを受ける場合より大きくなる可能性がある。

  • 年齢とCD4陽性細胞数に基づいて日和見感染症の予防を行う。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

有害作用,用量(特に固定用量配合剤の情報),薬物相互作用などの薬物治療に関する情報,教材,および関連トピックへのクイックリンクについては,以下の米国政府のサイトを参照のこと:

  1. ClinicalInfo.HIV.gov/Panel on Antiretroviral Therapy and Medical Management of Children Living with HIV: Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Pediatric HIV Infection

  2. ClinicalInfo.HIV.gov: Recommendations for the Use of Antiretroviral Drugs During Pregnancy and Interventions to Reduce Perinatal HIV Transmission in the United States

  3. ClinicalInfo.HIV.gov: Appendix C: CDC Pediatric HIV CD4 Cell Count/Percentage and HIV-Related Diseases Categorization

  4. ClinicalInfo.HIV.gov: Diagnosis of HIV Infection in Infants and Children

  5. ClinicalInfo.HIV.gov: Maternal HIV Testing and Identification of Perinatal HIV Exposure

  6. ClinicalInfo.HIV.gov: Appendix A: Pediatric Antiretroviral Drug Information

  7. ClinicalInfo.HIV.gov: Management of Infants Born to People with HIV Infection

  8. ClinicalInfo.HIV.gov: Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Adults and Adolescents with HIV

  9. ClinicalInfo.HIV.gov: Guidelines for the Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in Children with and Exposed to HIV

  10. ClinicalInfo.HIV.gov: Guidelines for the Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in Adults and Adolescents with HIV

  11. ClinicalInfo.HIV.gov: Infant Feeding for Individuals with HIV in the United States

  12. World Health Organization: Guideline: Updates on HIV and Infant Feeding

  13. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Pre-Exposure Prophylaxis (PrEP)

  14. U.S. Preventive Services Task Force (USPSTF): Human Immunodeficiency Virus (HIV) Infection: Screeningrecommendation statement (2019)

以下の資料では,HIV/AIDSの予防,治療,教育について他の様々な側面に関する情報が提供されている:

  1. New York State Department of Health AIDS Institute HIV Clinical Guidelines Program: Disseminates practical, evidence-based clinical guidelines that promote quality medical care for people in New York who are living with and/or are at risk of acquiring HIV and certain other illnesses

  2. New York State Department of Health AIDS Institute: Pre-exposure prophylaxis (PrEP) guidelines, education, and training for HIV prevention

  3. New York State Department of Health AIDS Institute: Comprehensive information regarding all aspects of HIV/AIDS, including treatment, social awareness, resources for consumers, and training for professionals

  4. UNAIDS: Comprehensive information on how the organization directs, advocates, coordinates, and provides technical support needed to connect leadership from governments, the private sector, and communities to deliver life-saving HIV services

  5. National Clinician Consultation Center: Up-to-date HIV/AIDS guidelines and key treatment protocols for HIV/AIDS treatment, prevention, and exposure

  6. American Academy of Pediatrics: Transitioning HIV-Infected Youth Into Adult Health Care

  7. Perinatal HIV Consultation and Referral Services Hotline 1-888-HIV-8765 (1-888-448-8765): Free 24-hour clinical consultation and advice on treating pregnant women with HIV infection and their infants

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