多形妊娠疹は,妊娠中に発生する原因不明の良性のそう痒性皮疹である。
多形妊娠疹の大半の症例は,最初の妊娠中に発生する。全体的な頻度は妊娠の1/160~300である;しかしながら,多胎妊娠ではリスクは8~12倍高くなる。
症状と徴候
病変は強いそう痒を伴い,紅斑性,充実性,表在性,隆起性であり,病変周囲が蒼白となることがあり,病変中央に微小な水疱を伴うこともある。大半の患者がそう痒で眠れないが,表皮剥離はまれである。病変は腹部から,特に皮膚伸展線条(妊娠線)上から始まることが多く,大腿部,殿部,ときに腕にまで拡がる。手掌,足底,および顔面には通常生じない。大半の患者では数百の病変がある。
病変は第3トリメスターに発生し,最も頻繁には最終2~3週,およびときに最後の数日間または分娩後に起こる。通常は分娩後15日以内に消退するが,長くかかることもある。以降の妊娠で再発する患者は5%に上る。
診断
皮膚診察
多形妊娠疹は皮膚の診察により診断する。他のそう痒性発疹との鑑別が困難なことがある。多形妊娠疹の初期の病変は通常,腹部の皮膚線条から始まる;妊娠性類天疱瘡では,初期の病変は通常,臍周囲に生じる。
治療
コルチコステロイド
経口の非鎮静性抗ヒスタミン薬
支持療法
軽度の症状は外用コルチコステロイド(例,トリアムシノロンアセトニド0.1%クリーム,1日2~3回まで)により治療する。まれに,より重度の症状に対してコルチコステロイドの全身投与(例,プレドニゾン40mg,経口,1日1回,耐容性に応じて漸減)が必要となる。妊娠後期における短期間のコルチコステロイド全身投与は,胎児への有害作用を持たないようである。
経口の非鎮静性抗ヒスタミン薬もそう痒の軽減のために使用できる。
要点
多形妊娠疹は,通常は妊娠の最後の2~3週間に発生する強いそう痒を伴う皮膚病変であり,分娩後15日以内に消退する。
これらの病変と他のそう痒性発疹との鑑別は困難なことがある。
軽度の症状は外用コルチコステロイド,症状がより重度の場合は経口コルチコステロイドで治療する。