緊急避妊

執筆者:Frances E. Casey, MD, MPH, Virginia Commonwealth University Medical Center
レビュー/改訂 2023年 7月
意見 同じトピックページ はこちら

避妊なしの性交の後の短期間,妊娠を防ぐために緊急避妊法を用いることができる。一般的に用いられる緊急避妊法としては以下のものがある:

  • 避妊なしの性交から5日以内に銅付加子宮内避妊器具(T380A IUD)を挿入

  • 52mgレボノルゲストレル放出IUDの挿入(IUDと同様に,おそらく避妊なしの性交から5日以内に挿入する必要がある)

  • 避妊なしの性交から120時間以内にレボノルゲストレル1.5mgを1回経口投与

  • 避妊なしの性交から120時間以内にウリプリスタル30mgを1回経口投与

規則的な月経のある女性での1回の性交による妊娠のリスクは約5%である。中間期に性交をもった場合のリスクは20~30%である。

緊急避妊のために銅付加子宮内避妊器具または52mgレボノルゲストレル放出IUDを用いる場合,避妊なしの性交から5日以内(または排卵の時期が推定できる場合,排卵日と疑われる日から5日以内)に挿入しなければならない。放出IUDによる緊急避妊における妊娠率は0.1%であり,52mgレボノルゲストレル放出IUDでは0.3%である(1)。また,IUDは長期的な避妊に用いるために挿入したままにしておくことができる。緊急避妊としてのIUDは胚盤胞の着床に影響する可能性がある;しかしながら,すでに起こった妊娠を妨げることはないようである。月経の再開および妊娠検査陰性により妊娠を確実に除外する;挿入後2~3週間後に妊娠検査を行い,挿入前に意図しない妊娠が起こらなかったことを確認する。

緊急避妊として使用する経口レボノルゲストレル(1.5g,単回投与)は,排卵を妨げたり遅らせたりすることで妊娠を防ぐ。妊娠の可能性は経口レボノルゲストレルによる緊急避妊後に85%低下し,その場合の妊娠率は2~3%である。しかしながら,全体としてのリスク軽減は以下に依存する:

  • 緊急避妊を用いない場合の女性の妊娠リスク

  • 緊急避妊が行われた月経周期中の時期

  • 女性のBMI(body mass index;レボノルゲストレルによる緊急避妊はBMIが30kg/m2を超える女性では,ウリプリスタルよりも効果が低い)

米国では,レボノルゲストレルの経口緊急避妊薬は処方箋なしで薬局のカウンターで入手可能である。quick-start protocolの一環として,経口レボノルゲストレルの使用と同時にホルモン避妊法を開始してもよい。7日間は他の方法(コンドームなど)が推奨される。

ウリプリスタル(30mg,単回経口投与)(プロゲスチン受容体モジュレーター)は緊急避妊として約1.5%の妊娠率であるため,経口レボノルゲストレルよりも効果が高い。ウリプリスタルは,レボノルゲストレルと同様,主に排卵を遅らせたり妨げることで妊娠を予防する。BMIが30kg/m2を超える女性でも,ウリプリスタルはレボノルゲストレルよりも効果的であるが,BMIが上昇するにつれ有効性は減少する。したがって,意図しない妊娠を確実に避けたい肥満女性には,IUDが望ましい緊急避妊法である。ウリプリスタルは処方箋でのみ入手可能である。プロゲスチンは緊急避妊の効果を妨げることがあるため,ウリプリスタルの使用後6日目まではホルモンによる避妊法を開始すべきではない。6日目にホルモンによる避妊法を開始する場合は,7日間は他の方法(コンドームなど)を用いるべきである。

レボノルゲストレルまたはウリプリスタルによる緊急避妊に対する絶対的禁忌はない。経口レボノルゲストレルおよびウリプリスタルによる緊急避妊では,避妊なしの性交から120時間以内にできるだけ早く服用すべきである。

別のレジメンとしてYuzpe法がある。この方法では,1錠にエチニルエストラジオール50μgとレボノルゲストレル0.25mgを含有する錠剤を2錠投与し,12時間後(ただし避妊なしの性交から72時間以内)にさらに2錠投与する。高用量のエストロゲンにより,しばしば悪心が生じ,嘔吐につながる場合がある。quick-start protocolの一環として,Yuzpe法の使用と同時にホルモン避妊法を開始してもよい。7日間は他の方法(コンドームなど)が推奨される。Yuzpe法は他の方法よりも効果が低いため,女性が他の方法を利用できない場合を除き,もはや推奨されていない。

緊急避妊使用の2週間後に尿妊娠検査が勧められる。

総論の参考文献

  1. 1.Turok DK, Gero A, Simmons RG, et al: Levonorgestrel vs. copper intrauterine devices for emergency contraception.N Engl J Med 384 (4):335–344, 2021.doi: 10.1056/NEJMoa2022141

要点

  • 経口の緊急避妊薬にはウリプリスタルやレボノルゲストレルなどがある;避妊なしの性交から120時間以内に服用する。

  • 避妊なしの性交から5日以内に挿入する銅IUDも効果的であり,長期的な避妊のために挿入したままにできる。

  • 避妊なしの性交から7日以内に挿入する52mgレボノルゲストレル放出IUDも効果的である。

  • ウリプリスタルによる妊娠率は1.5%,経口レボノルゲストレルでは2~3%,銅IUDでは0.1%,52mgレボノルゲストレル放出IUDでは0.3%である。

  • ホルモン剤による緊急避妊後の妊娠の可能性は,緊急避妊なしでの妊娠リスク,緊急避妊をした月経周期中の時期,BMIにより異なる。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS