バリア法およびその他の性交前後の避妊法

執筆者:Frances E. Casey, MD, MPH, Virginia Commonwealth University Medical Center
レビュー/改訂 2023年 7月
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    バリア法による避妊としては,コンドーム,ペッサリー,子宮頸管キャップ,避妊用スポンジなどがある。その他の性交前後の避妊法としては,腟の殺精子剤(発泡剤,クリーム,ゼリー,坐薬)およびゼリー状のpH調節避妊薬がある。

    コンドーム

    コンドームの使用により,HIV感染を含む性感染症(STI)のリスクが確実に減少する。コンドームの素材としては,ラテックス,ポリイソプレン,ポリウレタン,シリコンゴム,羊の腸などがある。羊の腸で作られたコンドームでは,精子は遮断できるものの,重篤な感染症を引き起こすウイルスの多く(例,HIV)は遮断できない。したがって,ラテックス製および合成素材(ポリウレタン,ポリイソプレン,およびシリコンゴム)のコンドームが望ましい。コンドームはまたヒトパピローマウイルス(HPV)を防ぎ,子宮頸部の前がん病変のリスクを軽減する。

    男性用(体外用)コンドームは,避妊の失敗率がより高い抜去法以外では唯一の,男性の可逆的な避妊方法である。

    男性用コンドームは挿入前に装着する;射精液を集めるために,先端をつまみ,陰茎の約1cm先まで伸ばすべきである。

    女性用(体内用)コンドームは,内側と外側にリングを備えたパウチ状のもので,内側のリングを腟内に入れ,外側のリングは外側に残して会陰を覆う。女性用コンドームは性交の8時間前までに装着する。射精液がパウチに集められるように,外側のリングから陰茎を注意深く導くべきである。

    どちらの種類のコンドームでも,性交後に陰茎が抜去されたら,コンドームの内容物をこぼさないように注意すべきである。男性用コンドームでは,射精後にコンドームの縁が陰茎の根元にしっかり固定されている間に,すぐに腟から陰茎を抜く必要がある;これによりコンドームが外れて精液が漏れるのを防ぐ。女性用コンドームの大きい方のリングは,ねじって精液がこぼれるのを防ぐ。内容物がこぼれたり,コンドームが外れたり,コンドームが破れた場合には緊急避妊法を用いるべきである。

    性交のエピソード毎に新しいコンドームを使用すべきである。

    1年時点での妊娠率は以下の通りである:

    • 男性用(体外用)コンドーム:正確な使用で2%,普通の使用で18%

    • 女性用(体内用)コンドーム:正確な使用で5%,普通の使用で21%

    ペッサリー

    ペッサリーは,頸部と腟の上部および側壁を覆う柔軟性のある縁をもつドーム形のカップである。殺精子剤とともに使われ,併用することで精子に対する効果的なバリアをもたらす。殺精子剤は挿入前にペッサリーにつける。最初の性交のエピソードの後,それに続く各行為の前に追加の殺精子剤を腟内に挿入すべきである。ペッサリーは洗浄し再利用ができる。

    従来のラテックス製のペッサリーは,様々なサイズが製造されている。これらのペッサリーは,女性にとって快適となるよう,医療従事者がサイズを合わせる。出産したり著しく体重が変化したりした場合,従来のペッサリーではサイズを再度合わせる必要がある。

    1サイズのみのペッサリー(単一サイズのバリア式避妊具,SILCSペッサリー)はシリコン製であり,1つのサイズで大半の女性に適合すると考えられている。従来のラテックス製ペッサリーよりも柔らかく,耐久性も高い。

    ペッサリーは性交後,少なくとも6~8時間そのままにしておくべきであるが,24時間を超えてはならない。

    従来のラテックス製のペッサリーの最初の1年の妊娠率は,正確な使用では約6%であるが,普通の使用では約12%である。SILCSペッサリーの妊娠率は従来のペッサリーと同様である(1)。

    ペッサリーはかつて広く使用されていたが(1940年には女性の3分の1),2000年代には,米国での使用者は全女性の1%以下であった。こうした使用の減少については,より効果的で簡単に利用できる避妊法が数多く開発されたことが大きな要因である。

    子宮頸管キャップ

    子宮頸管キャップはシリコン製でありペッサリーと類似しているが,より小さく硬い。

    子宮頸管キャップは必ず,殺精子剤のクリームまたはゼリーと併用する。子宮頸管キャップは性交の前に挿入しなければならない;15分~40時間前に挿入することができる。性交後少なくとも6時間入れておくべきであり,48時間を超えないようにする。

    妊娠率は普通の使用では1年目で18%であり,正確な使用では10~13%である;出産後はしっかりと装着することが難しいため,経産女性では妊娠率がより高くなる。

    米国では子宮頸管キャップは1種類のみが入手可能である。3サイズ(小,中,大)ある;サイズは女性の妊娠歴に基づき選ばれる。子宮頸管キャップが使用される前に医療従事者が処方箋を書く必要があるが,各個人にサイズを合わせる必要はない。

    避妊用スポンジ

    避妊用スポンジにはバリア器具および殺精子剤の両方の機能がある。最長で性交の24時間前に挿入することができる。性交後少なくとも6時間入れておくべきである。最大装着時間は30時間を超えてはならない。

    普通の使用による妊娠率は未経産女性で12%,経産女性で24%である。

    殺精子剤

    腟用発泡剤,クリーム,坐薬は,精子の細胞膜に傷害を与えることで精子に化学的バリアをもたらす薬剤を含み,これにより受精を防ぐ。大部分の殺精子剤はノノキシノール-9を含有しており,処方箋なしで入手可能である。それらの製品の効力はいずれも同等で,全体として,妊娠率は正確な使用法で19%であり,普通の(すなわち一貫しない)使用法では28%である。

    殺精子剤は性交の少なくとも10~30分前,早くても1時間以内に腟内に入れ,性交のエピソード毎に再度使用すべきである。

    効力が限られるため,殺精子剤は他のバリア法と併用されることが多い。 殺精子剤はSTIに対する予防としては信頼できない。また,殺精子剤はHIV感染のリスクを上昇させる腟の過敏を引き起こす可能性がある。これらの理由からコンドームは今では殺精子剤のノノキシノール-9で潤滑されていない。

    ゼリー状のpH調節避妊薬

    ゼリー状のpH調節避妊薬は腟のpHを変化させる;この変化により精子の能力が喪失し,受精を防ぐ。ゼリーには主として乳酸およびクエン酸が含まれる。妊娠率は正確な使用で7%,普通の使用で14%である。腟用のゼリーを他のバリア法とともに用いることで,効果が向上する。

    ゼリー状のpH調節避妊薬は早くても性交の1時間前に腟内に入れ,性交のエピソード毎に再度使用すべきである。STIに対する予防としては信頼できない。

    参考文献

    1. 1.Schwartz JL, Weiner DH, Lai JJ, et al: Contraceptive efficacy, safety, fit, and acceptability of a single-size diaphragm developed with end-user input.Obstet Gynecol 125 (4):895–903, 2015.doi: 10.1097/AOG.0000000000000721

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