乳癌

執筆者:Lydia Choi, MD, Karmanos Cancer Center
レビュー/改訂 2023年 7月
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乳癌の大部分は乳管および小葉に生じる上皮性腫瘍である大半の患者に無症状の腫瘤があり,それらは診察やスクリーニングのマンモグラフィーで発見される。診断は生検による。治療としては通常,外科的切除と,しばしば放射線療法に加えて,場合によりアジュバント化学療法,内分泌療法,またはその両方を施行することなどが含まれる。

米国では,乳癌は皮膚癌を除けば女性で最も頻度の高いがんである(1)。乳癌は女性全体ではがん死因の第2位(肺癌が最多)であるが,黒人女性ではがん死因の第1位である。黒人女性は乳癌で死亡する可能性が他のどの人種または民族よりも高く,一方でアジア人および太平洋諸島系の女性は,乳癌による死亡率が最も低い。

2023年には,米国の女性で以下が発生すると推定されている:

  • 297,790例の新規浸潤性乳癌症例

  • 55,720例の新規非浸潤性乳癌症例

  • 43,700例の乳癌死亡

2023年には,米国の男性で浸潤性乳癌の新規症例が2800例,乳癌死亡が530例発生すると推定されている(2)。男性では受診時の病期がより進んでいる傾向があるものの,臨床像,診断,および管理については男女で同じである。

総論の参考文献

  1. 1.American Cancer Society: Key Statistics for Breast Cancer.Accessed May 4, 2023.

  2. 2.American Cancer Society: Key Statistics for Breast Cancer in Men.Accessed May 4, 2023.

乳癌の危険因子

米国の女性において,95歳までに乳癌が発生する累積生涯リスクは約13%(8人に1人)である(1)。リスクの多くは60歳以降に生じる(浸潤性乳癌と診断されるリスクの表を参照)。診断後の5年目までに乳癌により死亡するリスクは約10%である(2)。

表&コラム
表&コラム

乳癌リスクに影響を及ぼしうる因子としては以下のものがある:

  • 年齢:発生率は65~74歳の女性で最も高い。診断時年齢の中央値は63歳である(1)。

  • 人種および民族:診断時年齢の中央値は黒人女性(60歳)の方が白人女性(63歳)に比べてわずかに若い(1)。黒人女性は他の人種または民族と比べて乳癌による死亡率が最も高く,その理由の1つとして,黒人女性では他の種類より予後不良のトリプルネガティブ乳癌(エストロゲンおよびプロゲステロン受容体とHER2[human epidermal growth factor receptor]がん遺伝子が全て陰性)の発生率が高いことが考えられる。白人,アジア人,および太平洋諸島系の女性は,黒人,ヒスパニック系,アメリカンインディアン,およびアラスカ先住民の女性よりも限局性の乳癌と診断される可能性が高い。

  • 家族歴:第1度近親者(母親,姉妹,娘)に乳癌罹患者がいる場合,乳癌の発生リスクが2倍上昇するが,より遠い近親者の乳癌により上昇するリスクはわずかである(3)。第1度近親者に2人以上の乳癌罹患者がいる場合は,リスクは3~4倍高くなる可能性がある。

  • 乳癌遺伝子の変異:乳癌女性の約5~10%で,2つの既知の乳癌遺伝子であるBRCA1またはBRCA2の一方に病的変異がみられる。80歳までに乳癌が発生するリスクは,BRCA1変異がある場合で約72%,BRCA2変異がある場合で約69%である。また,BRCA1変異を有する女性の卵巣がんの生涯発生リスクは約44%,BRCA2変異を有する女性のリスクは約17%である(4, 5)。BRCA2変異を有する男性では,乳癌の生涯発生リスクは1~2%である。これらの変異はアシュケナージ系ユダヤ人を祖先とする人で多くみられる。BRCA1またはBRCA2変異を有する女性では,マンモグラフィーとMRIの両方によるスクリーニング,タモキシフェンの服用,またはリスク低減乳房切除術の施行などの,より綿密なサーベイランスや予防策が必要である。

  • 乳癌の既往:非浸潤性または浸潤性乳癌の既往はリスクを上昇させる。乳房切除後に対側の乳房にがんが発生するリスクは,フォローアップ中に年間約0.4%である(6)。

  • 非浸潤性小葉癌(LCIS):LCISを認める場合,いずれかの乳房で浸潤性乳癌が発生するリスクが約7~12倍上昇する(7);LCISを有する患者で毎年1~2%に浸潤性乳癌が発生する。

  • 婦人科歴:初経が早い場合または閉経が遅い場合は,リスクが上昇する。最初の妊娠時の年齢が高いほどリスクが上昇する(3)。

  • 良性の乳房疾患:生検を必要とした病変の既往は,若干のリスク上昇と関連している。乳房に多発性腫瘤がある女性でも高リスクの組織型という組織学的確証がない場合は,リスクが高いと考えるべきでない。浸潤性乳癌の発生リスクのわずかな上昇と関連している良性病変として,複雑性線維腺腫,中等度または病勢盛んな過形成(異型を伴わない),硬化性腺症,および乳頭腫がある。異型乳管または小葉の過形成を認める患者では,リスクが平均より3~5倍高い(8)。

  • 高濃度乳房:スクリーニングのマンモグラフィーでみられる高濃度乳房は,1.2~2.1倍の乳癌リスク上昇と関連する(9)。

  • 経口避妊薬の使用:経口避妊薬の使用と乳癌リスクに関する研究の結果は様々である。現在または最近の使用者でリスクがわずかに上昇することを明らかにした研究もある(10)。

  • ホルモン療法Women's Health Initiativeのランダム化試験において,閉経期ホルモン療法(エストロゲン + プロゲスチン)は,わずか3年間の実施後にリスクを若干上昇させた(11)。使用5年経過以降は,リスクの上昇幅は使用1年毎に女性1000人当たり約3症例の増加に相当する(相対リスク約24%上昇)。エストロゲン単独の使用は乳癌のリスクを上昇させないようである。選択的エストロゲン受容体モジュレーター(例,ラロキシフェン)は,乳癌の発生リスクを低下させる。

  • 放射線療法:45歳までに胸部放射線療法を受けるとリスクが高まり,そのリスクは10~14歳で受けた場合に最も高くなる(12)。ホジキンリンパ腫の治療におけるマントル照射により,以降20~30年にわたり乳癌のリスクは約4倍となる。

  • 食事:食事が乳癌の発生,増殖,または予後に寄与する可能性はあるが,特定の食事(例,高脂肪食)の影響に関する決定的なエビデンスはない。

  • 肥満:閉経後の肥満女性は乳癌のリスクが高く,研究によると,BMI(body mass index)が正常値から5増加する毎にリスクが10%増加することが示されている(13)。

  • 喫煙および飲酒:喫煙および飲酒は乳癌リスクの上昇と関連しているようであり,飲酒によるリスク上昇は用量依存性である(14, 15)。

Breast Cancer Risk Assessment Tool(BCRAT)またはGailモデルを用いれば,女性の5年間および生涯の乳癌発生リスクを計算することができる。

危険因子に関する参考文献

  1. 1.American Cancer Society: Key Statistics for Breast Cancer.Accessed May 4, 2023.

  2. 2.American Cancer Society: Survival Rates for Breast Cancer.Accessed March 29, 2023.

  3. 3.Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer: Familial breast cancer: collaborative reanalysis of individual data from 52 epidemiological studies including 58,209 women with breast cancer and 101,986 women without the disease. Lancet 358(9291):1389-1399, 2001.doi:10.1016/S0140-6736(01)06524-2

  4. 4.Kuchenbaecker KB, Hopper JL, Barnes DR, et al: Risks of breast, ovarian, and contralateral breast cancer for BRCA1 and BRCA2 mutation carriers.JAMA 317 (23):2402–2416, 2017.doi: 10.1001/jama.2017.7112

  5. 5.Breast Cancer Association Consortium; Dorling L, Carvalho S, Allen J, et al: Breast cancer risk genes — Association analysis in more than 113,000 women.N Engl J Med 4;384 (5):428–439, 2021.doi: 10.1056/NEJMoa1913948

  6. 6.Giannakeas V, Lim DW, Narod SA: The risk of contralateral breast cancer: a SEER-based analysis. Br J Cancer 125(4):601-610, 2021.doi:10.1038/s41416-021-01417-7

  7. 7.American Cancer Society (ACOG): Lobular Carcinoma in Situ (LCIS).Accessed May 4, 2023.

  8. 8.Collins LC, Baer HJ, Tamimi RM, et al: Magnitude and laterality of breast cancer risk according to histologic type of atypical hyperplasia: results from the Nurses' Health Study. Cancer 109(2):180-187, 2007.doi:10.1002/cncr.22408

  9. 9.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): Committee opinion no. 625: Management of women with dense breasts diagnosed by mammography.Obstet Gynecol 125 (3):750–751, 2015.Reaffirmed 2020.doi: 10.1097/01.AOG.0000461763.77781.79 Accessed May 4, 2023.

  10. 10.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG) : Hormonal contraception and risk of breast cancer: Practice advisory.Published 2018, reaffirmed 2022.Accessed May 4, 2023.

  11. 11.Rossouw JE, Anderson GL, Prentice RL, et al.: Risks and benefits of estrogen plus progestin in healthy postmenopausal women: Principal results from the Women's Health Initiative randomized controlled trial.JAMA 288 (3):321–333, 2002.doi:10.1001/jama.288.3.321

  12. 12.John EM, Kelsey JL: Radiation and other environmental exposures and breast cancer. Epidemiol Rev 15(1):157-162, 1993.doi:10.1093/oxfordjournals.epirev.a036099

  13. 13.Lauby-Secretan B, Scoccianti C, Loomis D, et al: Body Fatness and Cancer--Viewpoint of the IARC Working Group. N Engl J Med 375(8):794-798, 2016.doi:10.1056/NEJMsr1606602

  14. 14.Gram IT, Park SY, Kolonel LN, et al: Smoking and Risk of Breast Cancer in a Racially/Ethnically Diverse Population of Mainly Women Who Do Not Drink Alcohol: The MEC Study. Am J Epidemiol 182(11):917-925, 2015.doi:10.1093/aje/kwv092

  15. 15.Zhang SM, Lee IM, Manson JE, et al: Alcohol consumption and breast cancer risk in the Women's Health Study. Am J Epidemiol 165(6):667-676, 2007.doi:10.1093/aje/kwk054

乳癌の病理

大部分の乳癌は,乳管または小葉を形成する細胞から発生する上皮性腫瘍(悪性腫瘍)である;支持する間質から発生する非上皮性悪性腫瘍(例,血管肉腫,原発性間質肉腫,葉状腫瘍)の頻度は低い。

上皮性悪性腫瘍は非浸潤癌と浸潤癌に分けられる。

非浸潤癌(carcinoma in situ)は,がん細胞が乳管内または小葉内で増殖しているが,間質組織への浸潤はみられない状態である。これには2つの型がある:

  • 非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS):DCISとは,乳管に限局している上皮性腫瘍病変を指し,病変の組織型や悪性度は様々である。マンモグラフィーにより検出されることが多い。乳房の狭いまたは広い範囲を侵すことがある;広い範囲が侵される場合には,時間の経過とともに顕微鏡的浸潤巣が発生することがある。DCISは乳癌の約20%を占める(1)。DCISを対象に局所切除への追加治療として放射線療法とタモキシフェンを比較した2つのランダム化研究において,治療選択肢にかかわらず,DCISによる死亡リスクはいずれの群でも低かったことが示されている(2)。

  • 非浸潤性小葉癌(LCIS):LCISはしばしば多病巣性であり,約20~60%の症例で両側性である(3)。古典型と多形型(細胞がより大きく異型度が高い)の2種類がある。古典型LCISは悪性ではないが,いずれかの乳房に浸潤癌が発生するリスクを高める。この非触知病変は通常,マンモグラフィーまたは超音波検査で石灰化または腫瘤を認めることから疑い,生検で診断する。多形型LCISはDCISに似た挙動を示し,断端陰性となるように切除すべきである。

乳頭パジェット病(同じくパジェット病と呼ばれる代謝性骨疾患と混同しないよう注意すること)は,非浸潤性乳管癌の一形態で,乳頭部および乳輪部の皮膚に進展し,皮膚病変(例,湿疹様または乾癬様病変)として顕在化する。パジェット細胞と呼ばれる特徴的な悪性細胞が表皮にみられる。乳頭パジェット病の女性では,しばしば病変下に浸潤癌または非浸潤癌が存在する。

浸潤癌(invasive carcinoma)は主に腺癌である。約75%の組織型は浸潤性乳管癌であり,残りの症例の10%は浸潤性小葉癌である(4)。

上皮性悪性腫瘍はホルモン受容体を発現することがある(間質腫瘍はホルモン受容体を発現しない,例,葉状腫瘍)。閉経後乳癌患者の約80%および閉経前乳癌患者の20%がエストロゲン受容体陽性(ER陽性)腫瘍を有し(5),全乳癌のうち約70%がプロゲステロン受容体陽性である(6)。もう1つの細胞受容体はHER2(human epidermal growth factor receptor 2;HER2/neuまたはErbB2とも呼ばれる)であり,その存在は病期を問わず,予後不良と相関する。乳癌患者の約15%において,HER2受容体の過剰発現がみられる(7)。大多数の乳癌はホルモン受容体陽性かつHER2陰性であり(約70%),12%がトリプルネガティブ(ホルモン受容体陰性かつHER2陰性)である(7, 8)。

通常は予後良好であるまれな組織型として,髄様癌,粘液癌,篩状癌,管状癌などがある(4)。粘液性癌は高齢女性に発生し成長が緩徐である傾向がある。

典型的に予後不良であるまれな型として,化生性乳癌や炎症性乳癌などがある。炎症性乳癌は成長が速く,特に進行が速く,しばしば致死的ながんである。がん細胞が乳房の皮膚のリンパ管を閉塞させる結果,乳房が炎症を起こしているように見え,皮膚が厚いオレンジの皮のように見える(橙皮状皮膚)。通常,炎症性乳癌は腋窩リンパ節に転移する。リンパ節は硬いしこりのように触れる。しかしながら,がんが乳房全体に分布しているため,乳房に腫瘤を触れない場合が多い。

参考文献

  1. 1.Giaquinto AN, Sung H, Miller KD, et al: Breast Cancer Statistics, 2022. CA Cancer J Clin 72(6):524-541, 2022.doi:10.3322/caac.21754

  2. 2.Wapnir IL, Dignam JJ, Fisher B, et al: Long-term outcomes of invasive ipsilateral breast tumor recurrences after lumpectomy in NSABP B-17 and B-24 randomized clinical trials for DCIS. J Natl Cancer Inst 103(6):478-488, 2011.doi:10.1093/jnci/djr027

  3. 3.Wen HY, Brogi E: Lobular Carcinoma In Situ. Surg Pathol Clin 11(1):123-145, 2018.doi:10.1016/j.path.2017.09.009

  4. 4.American Cancer Society: Breast Cancer Facts & Figures.Accessed May 4, 2023

  5. 5.Anderson WF, Chatterjee N, Ershler WB, et al: Estrogen receptor breast cancer phenotypes in the Surveillance, Epidemiology, and End Results database. Breast Cancer Res Treat.2002;76(1):27-36.doi:10.1023/a:1020299707510

  6. 6.Li Y, Yang D, Yin X, et al: Clinicopathological Characteristics and Breast Cancer-Specific Survival of Patients With Single Hormone Receptor-Positive Breast Cancer. JAMA Netw Open 3(1):e1918160, 2020.doi:10.1001/jamanetworkopen.2019.18160

  7. 7.Howlader N, Altekruse SF, Li CI, et al: US incidence of breast cancer subtypes defined by joint hormone receptor and HER2 status. J Natl Cancer Inst 106(5):dju055, 2014.Published 2014 Apr 28.doi:10.1093/jnci/dju055

  8. 8.National Cancer Institute's Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Program : Cancer Stat Facts: Female Breast Cancer Subtypes.Accessed May 4, 2023

乳癌の病態生理

乳癌は局所的に浸潤し,所属リンパ節,血流,またはこれらの両方を介して拡がる。転移性乳癌はほぼ全ての臓器に生じる可能性があるが,最も多い臓器は肺,肝臓,骨,脳,および皮膚である。皮膚転移の大半は乳房の手術領域近傍に生じる;頭皮への転移はまれである。

一部の乳癌は他の乳癌よりも早く再発することがあり,再発はしばしば腫瘍バイオマーカーに基づいて予測できる。例えば,転移性乳癌は,腫瘍バイオマーカーが陰性の患者で3年以内に発生することもあれば,エストロゲン受容体陽性腫瘍の患者で初期診断および治療から10年以上経過してから発生することがある。

ホルモン受容体

エストロゲンおよびプロゲステロン受容体は,どちらも核内ホルモン受容体であり,対応するホルモンがこれらに結合すると,DNAの複製と細胞分裂が促進される。したがって,これらの受容体を阻害する薬剤が,受容体を発現する腫瘍の治療および予防に有用である。

HER2受容体が過剰発現している腫瘍に対しては,これらの受容体を阻害する薬剤が標準治療の一環となっている。HER2はがん細胞の進行を促進する有意な因子であるため,HER2が過剰発現している腫瘍はこれらの薬剤によく反応する。

乳癌遺伝子

BRCA1およびBRCA2遺伝子変異は乳癌の発生リスクを70%まで上昇させる(1)。予防的両側乳房切除術は乳癌のリスクを90%低下させることから,BRCAの病的変異を有する女性にはこの手術を勧めるべきである。乳癌の発生リスクを上昇させるその他の遺伝子変異として,CHEK2PALB2ATMRAD51CRAD51DBARD1TP53などの変異があり,これらは通常,遺伝子検査パネルに含まれている(2)。

病態生理に関する参考文献

  1. 1.Kuchenbaecker KB, Hopper JL, Barnes DR, et al: Risks of breast, ovarian, and contralateral breast cancer for BRCA1 and BRCA2 mutation carriers.JAMA 317 (23):2402–2416, 2017.doi: 10.1001/jama.2017.7112

  2. 2.Breast Cancer Association Consortium; Dorling L, Carvalho S, Allen J, et al: Breast cancer risk genes — Association analysis in more than 113,000 women.N Engl J Med 4;384 (5):428–439, 2021.doi: 10.1056/NEJMoa1913948

乳癌の症状と徴候

多くの乳癌は患者により腫瘤として発見されるか,ルーチンの身体診察時やマンモグラフィー時に発見される。まれに,全体的な乳房の腫大または特徴のない乳房の肥厚が主症状となる。乳房痛が存在することもあるが,それが乳癌の唯一の主症状であることはほとんどない。

少数の乳癌患者に転移性疾患の徴候がみられる(例,病的骨折,腹痛,黄疸,呼吸困難)。

身体診察時に一般的にみられる所見は非対称性または著明な腫瘤(周囲の乳腺組織と明らかに異なる腫瘤)である。乳房の四分円(通常は上外側四分円)内におけるびまん性の線維性変化は,良性疾患により多くみられる特徴である;一方の乳房にあり,他方の乳房にはない,もう少し硬い肥厚はがんの徴候である可能性がある。

一部の種類の乳癌は以下のように著明な皮膚の変化を呈する:

  • 乳頭パジェット病は,基礎にある非浸潤癌または浸潤癌と関連し,紅斑,痂皮,鱗屑,分泌物などの皮膚変化として表れる;これらの変化は通常良性のように見えるため,患者はそれらを無視し,診断が1年以上遅れる。乳頭パジェット病患者の約50%に,来院時点で触知可能な腫瘤がある。

  • 炎症性乳癌は乳房の紅斑および腫大として現れ,しばしば腫瘤を伴わず,皮膚が変色しているか厚いオレンジの皮のように見えることがある(橙皮状皮膚)。乳頭分泌物がよくみられる。

より進行した乳癌は以下の診察所見の1つ以上を特徴とする:

  • 胸壁や腫瘤を覆っている皮膚への腫瘤の固着

  • 皮膚の衛星結節や潰瘍

癒合,または固定した腋窩リンパ節は,鎖骨上および鎖骨下リンパ節腫脹と同様,腫瘍の転移を示唆する。

乳癌の診断

  • マンモグラフィーおよび/もしくは他の画像検査(乳房トモシンセシス,超音波検査,MRI)または乳房視触診による最初の検出

  • エストロゲンおよびプロゲステロンの受容体とHER2タンパク質の分析を含む生検

症状,乳房視触診,または画像検査の結果を契機として,乳癌の診断評価を行うことがある。

乳房症状(例,疼痛,乳頭分泌物)または触知可能な乳腺腫瘤または乳房視触診でのその他の異常がみられる患者では,典型的には最初に乳房超音波検査で評価を行う。超音波検査の結果が異常または不確定であれば,マンモグラフィーを行う。画像所見からがんが示唆されれば,生検を施行する。

画像検査で陰性であっても,触知可能な乳腺腫瘤またはその他の身体所見からがんが示唆される場合は,生検を実施すべきである。身体診察に基づき進行癌が疑われる場合は,しばしば画像検査より前に生検を行うが,生検前の両側マンモグラフィーは,生検を行うべき他の部位を明確化するのに役立ち,将来参照する際のベースラインとなる。

スクリーニングのマンモグラフィーで異常が認められた患者には,画像ガイド下で生検を行う。乳房MRIでの異常は,典型的には超音波検査で評価し,超音波検査またはMRIによるガイド下で生検を施行すべきかどうかを判断する。

パール&ピットフォール

  • 身体所見(例,触知可能な腫瘤)から乳癌が示唆される場合は,マンモグラフィーの結果が陰性であっても生検を施行すべきである。

生検

経皮的コア生検が手術生検よりも望ましい。コア生検は画像ガイド下または触診をガイドにして(フリーハンドで)行うことができる。精度向上のために,定位生検(2平面撮影し3次元画像を作るためにコンピュータで分析されたマンモグラフィーをガイドに行う針生検)や超音波ガイド下生検が一般的に用いられている。マンモグラフィーで同定できるように,生検部位にクリップを留置する。

コア生検が不可能な場合(例,病変が後方すぎる)は,手術生検が行われることがあり,ガイドワイヤーまたは位置特定用の金属製シードを挿入し,画像ガイド下で生検部位を同定する。

皮膚リンパ管内のがん細胞が明らかになることがあるため,生検検体より得た皮膚は全て検査すべきである。

切除した検体をX線撮影し,そのX線像を生検前のマンモグラフィーと比較し,全ての病変を除去したか否か確認すべきである。元の病変が微小石灰化を伴っていた場合,乳房を触っても圧痛がなくなったら(通常は生検から6~12週間後)再度マンモグラフィーを行い,微小石灰化が残存していないか確認する。放射線療法が予定されている場合,放射線療法の開始前に再度マンモグラフィーを行うべきである。

がん診断後の評価

がんの診断後は,通常は集学的評価を行い,さらなる検査および治療を計画する。中心的な集学的チームは典型的に,乳腺腫瘍外科医,腫瘍内科医,および放射線腫瘍医を含む。

陽性生検検体を,エストロゲンおよびプロゲステロン受容体およびHER2タンパク質について分析すべきである。

遺伝子検査

National Comprehensive Cancer Network(NCCN)は,現在または過去に乳癌の既往がある患者が以下の基準のいずれかを満たす場合,乳癌の素因となる先天性の遺伝子変異を調べる検査を行うよう推奨している(1):

  • 50歳以下で乳癌と診断された

  • PARP阻害薬(転移性悪性腫瘍に対して)またはオラパリブ(高リスクのHER2陰性腫瘍に対して)の使用に関する決定の参考となる治療適応がある

  • トリプルネガティブ乳癌(エストロゲン受およびプロゲステロン受容体の発現とHER2タンパク質の過剰発現のいずれも認めない)である

  • 多発性の原発性乳癌(同時性または異時性)である

  • 小葉癌を有しており,びまん性胃癌の既往または家族歴がある

  • 男性乳癌である

  • アシュケナージ系ユダヤ人である

  • 家族歴(すなわち,家系の同一側の第1度,第2度,および第3度近親者)に50歳以下での乳癌,男性乳癌,卵巣がん,膵癌,または転移性もしくは高リスク前立腺癌がみられる

  • 家族歴に乳癌または前立腺癌の患者が3人以上みられる

一部の専門家は,全ての乳癌患者に遺伝子検査を行うよう推奨している(2)。

これらの検査における最善のアプローチは患者を遺伝カウンセラーに紹介することであり,遺伝カウンセラーは詳細な家族歴を記録し,遺伝子検査のリスクとベネフィットについて患者のカウンセリングを行い,最も適切な検査を選択し,結果の解釈を助けることが可能である。

転移病変の評価

転移病変の有無を確認するために,血算および肝機能検査を行うことができる。

がん胎児性抗原(CEA),がん抗原(CA)15-3,またはCA 27-29の測定や骨シンチグラフィーを行うべきかどうかは腫瘍医が判断すべきである。

骨シンチグラフィーの一般的な適応としては,以下のものがある:

  • 骨痛

  • 血清アルカリホスファターゼ値の上昇

  • III期またはIV期

以下のいずれかを認める場合は,腹部CTを施行する:

  • 肝機能検査での異常

  • 腹部診察または内診での異常

  • III期またはIV期

以下のいずれかを認める場合は,胸部CTを施行する:

  • 息切れなどの肺症状

  • III期またはIV期

MRIは術前計画を立てるために外科医によってしばしば用いられる;腫瘍の大きさ,胸壁病変,および腫瘍の数を正確に同定できる。

悪性度分類および病期分類

悪性度分類は生検で得た組織の組織学的検査に基づく。腫瘍の悪性度は,顕微鏡下で観察される腫瘍の細胞および組織の異常の程度を示す。

病期分類はTNM(tumor, node, metastasis)分類に従う(乳癌の解剖学的病期分類の表を参照)。リンパ節転移に関して診察と画像検査の感度は低いため,手術時に所属リンパ節を評価できる場合には,病期診断をさらに正確に行う。しかしながら,触知可能で異常な腋窩リンパ節を認める場合は,術前に超音波ガイド下で穿刺吸引またはコア生検を行ってもよい:

  • 生検の結果が陽性であれば,典型的には根治的手術の際に腋窩リンパ節郭清が行われる。ただし,ネオアジュバント化学療法を用いることで,リンパ節の状態がN1からN0に変化すれば,センチネルリンパ節生検が可能になる。(術中の凍結切片分析の結果により,腋窩リンパ節郭清が必要かどうかを判断する。)

  • 結果が陰性であれば,より侵襲の少ない手技であるセンチネルリンパ節生検が代わりに行われることが多い。

病期分類は以下のモデルに基づいて行われる:

  • 解剖学的病期分類モデル:腫瘍の解剖に基づいており,バイオマーカーがルーチンに得られない世界の地域で使用されている(乳癌の解剖学的病期分類の表を参照)

  • 予後に基づく病期分類モデル:腫瘍の解剖およびバイオマーカーの状態に基づいており,主に米国で使用されている

表&コラム
表&コラム

妊孕性の温存

乳癌患者は乳癌の治療中に妊娠すべきではない。しかしながら,妊孕性温存を希望する全ての患者について,全身療法が開始される前に妊孕性温存について話し合うために生殖内分泌医(reproductive endocrinologist)に紹介すべきである。

妊孕性温存の選択肢には以下のものがある:

  • 卵巣刺激法と卵母細胞または胚の凍結保存を用いた生殖補助医療(ART)

  • 卵巣または精巣組織の凍結保存

用いることが可能な妊孕性温存の方法は,乳癌の種類,予想される治療,および患者の希望に影響を受ける。化学療法による卵子の破壊を最小限に抑えるために,卵巣機能抑制が用いられている(例,リュープロレリンによる)。

診断に関する参考文献

  1. 1.National Comprehensive Cancer Network (NCCN): Guidelines, Breast Cancer Version 4.2023.

  2. 2.Manahan ER, Kuerer HM, Sebastian M, et al.Consensus Guidelines on Genetic Testing for Hereditary Breast Cancer from the American Society of Breast Surgeons. Ann Surg Oncol 26(10):3025-3031, 2019.doi:10.1245/s10434-019-07549-8

乳癌の治療

  • 手術

  • 放射線療法

  • 全身化学療法

  • アジュバント内分泌療法

治療についてのより詳細な情報については,National Comprehensive Cancer Network (NCCN) Clinical Practice Guideline: Breast Cancerを参照のこと。

大部分の種類の乳癌で治療は手術および放射線療法を含み,全身療法はリンパ節転移または遠隔転移を有する患者に行われる。治療の選択は腫瘍と患者の特徴によって異なる(乳癌の種類に応じた治療の表を参照)。手術の推奨は進化してきており,これにはオンコプラスティックサージャリー(がんの切除と乳房再建を組み合わせた手術)のために形成外科医や再建外科医に早期に紹介することも含まれる。

表&コラム
表&コラム

手術

手術では乳房切除術または乳房温存手術を行う。

乳房切除術では,乳房全体を切除するが,以下の種類がある:

  • 皮下乳腺全摘術:胸筋と手術創を覆うのに十分な皮膚を温存するため,乳房再建がはるかに容易になり,さらに腋窩リンパ節も温存する

  • 乳頭乳輪温存乳房切除術:皮下乳腺全摘術と同様であり,加えて乳頭と乳輪を温存する

  • 単純乳房切除術:胸筋と腋窩リンパ節を温存する

  • 非定型的乳房切除術:胸筋を温存し,一部の腋窩リンパ節を切除する

  • 定型的乳房切除術:腋窩リンパ節と胸筋を切除する

定型的乳房切除術は,がんが胸筋に浸潤していない限り,行われることはまれである。

乳房温存手術では,腫瘍の大きさおよび必要な断端(乳房の大きさに対する腫瘍の大きさに基づく)を特定した後,腫瘍を断端とともに外科的に切除する。切除する乳房組織の範囲を示すために,様々な表現(例,腫瘤摘出術,乳房円状部分切除術,乳房扇状部分切除術)が用いられる。

浸潤癌の患者では,腫瘍全体の切除が可能な限りにおいて,乳房切除術を行う場合の生存率および再発率には乳房温存手術と放射線療法を併用する場合と有意な差はみられない(1)。

したがって,共同での意思決定(shared decision-making)に患者の希望を反映させる必要がある。乳房温存手術と放射線療法併用の主な利点は,範囲の狭い手術であることと,乳房を温存できる可能性があることである。切除縁に腫瘍を含まない腫瘍の完全摘出は必要で,審美的配慮より優先すべきである。乳房が下垂した患者では,オンコプラスティックサージャリーについての形成外科医へのコンサルテーションが助けになる可能性があり,良好な切除縁を得ることもできる。

一部の症例ではネオアジュバント化学療法を行い,腫瘍切除と放射線療法に先行して摘出前に腫瘍を縮小することができ,これにより,そうでなければ乳房切除を必要としていたかもしれない患者が,乳房温存手術を受けることができる。

リンパ節の評価

乳房切除術と乳房温存手術のいずれの手術の際にも,典型的に腋窩リンパ節の評価を行う。方法としては以下のものがある:

  • 腋窩リンパ節郭清術(ALND)

  • センチネルリンパ節生検(SLNB)

ALNDは,可能な限り多くの腋窩リンパ節を切除する,かなり広範囲にわたる手技であり,合併症(特にリンパ浮腫)がよくみられる。術前のBMI(body mass index)が高い(30以上)患者と乳癌の治療中および治療後に有意な体重増加がみられた患者は,リンパ浮腫のリスクが高い(2)。

現在では,臨床的に転移が疑われるリンパ節の生検でがんが発見される場合を除き,大半の外科医がSLNBを行っている;リンパ浮腫のリスクはSLNBの方が低い。リンパ節郭清の主な有用性は治療ではなく,むしろ診断にあり,腋窩リンパ節浸潤に対するSLNBの感度は95%以上であるため,ALNDをルーチンに行うことは妥当ではない。

SLNBでは,乳房周囲に青色色素や放射性コロイドを注入し,ガンマプローブを用いて(青色色素を用いる場合は直視下で),そのトレーサーが流入したリンパ節の位置を同定する。トレーサーが最初に流入するリンパ節は,転移過程のがん細胞が侵入している可能性が最も高いと考えられ,センチネルリンパ節と呼ばれる。

センチネルリンパ節のいずれかにがん細胞が含まれている場合には,以下のような多くの因子に応じて,ALNDが必要である可能性がある:

  • 腫瘍の病期

  • ホルモン受容体の状態

  • 転移リンパ節の数

  • 節外進展

  • 患者の特徴(3)

乳房切除術の際のSLNB中に凍結切片の分析を行い,リンパ節が陽性の時に備えてあらかじめALNDの同意を得る外科医もいる;他の場合は通常の病理結果を待ち,必要な場合2回目の処置としてALNDを行う。腫瘍摘出術では凍結切片の分析はルーチンに行われない。

同側腕のリンパ流出障害は腋窩リンパ節の切除(ALNDまたはSLNB)または放射線療法後にしばしば生じ,ときにリンパ浮腫による著明な腫脹が起こる。影響の程度は,切除されたリンパ節の数にほぼ比例する;したがってSLNBはALNDよりもリンパ浮腫を起こしにくい。ALND後のリンパ浮腫の生涯リスクは約25%である。しかしながら,SLNBであってもリンパ浮腫の生涯リスクを6%認める(4)。リンパ浮腫のリスクを低減するため,通常は患側での点滴静注は回避する。圧迫帯を装着することと,患肢の感染を予防すること(例,庭仕事の際には手袋を着用する)が重要である。ときに同側腕での血圧測定や静脈穿刺を避けることも推奨されるが,これを支持するエビデンスはごくわずかである(5)。

リンパ浮腫が発生した場合は,特別な訓練を受けたリンパ浮腫療法士が治療を行わなければならない。1日1~2回行う特別なマッサージが,滞留している部位から機能しているリンパ域へ体液を排出するのに役立つ場合がある;用手的ドレナージを行ったら直ちに伸縮性の少ない包帯を巻き,患者には処方した通りに毎日運動させるべきである。リンパ浮腫が軽減(典型的には1~4週間)した後も,患者には毎日の運動と夜間の患肢への包帯を,期限を設けることなく続けさせる。

再建術

乳房再建の術式としては以下のものがある:

  • インプラントによる再建:ときにティッシュエキスパンダーの使用後に,シリコンまたは生理食塩水のインプラントを挿入する

  • 自家組織による再建:筋弁の移植(広背筋,大殿筋,または下部腹直筋を使用)または筋遊離皮弁の移植

乳房再建は,最初の乳房切除術中または乳房温存手術中に行うか,後に別の手術として行うことが可能である。手術の時期は,患者の希望と放射線療法などのアジュバント療法の必要性に依存する。しかし,放射線療法を最初に行うと施行できる再建手術の種類が限られる。そのため,治療計画中の早期に形成外科医へのコンサルテーションを行うことが推奨される。

乳房再建の利点としては,乳房切除術を受けた患者の精神衛生の改善などがある。欠点としては,手術合併症やインプラントの長期的な有害作用などがある。

予防的対側乳房切除術

予防的対側乳房切除術は,乳癌の女性の一部(例,乳癌のリスクを増大させる遺伝子変異を有する女性)にとって選択肢の1つである。

片方の乳房に非浸潤性小葉癌がある場合,いずれかの乳房に浸潤癌が発生する可能性は同程度に高い。そのため,これらの女性において乳癌のリスクを排除する唯一の方法は両側乳房切除術である。一部の女性,特に浸潤性乳癌の発生リスクが高い女性では,この選択肢を選ぶ。

予防的対側乳房切除術の利点には以下のものがある:

  • 対側乳房のがんのリスク減少(特に乳癌または卵巣がんの家族歴を有する患者において)

  • 先天性の遺伝子変異(例,BRCA1またはBRCA2病的変異)を有する乳癌患者,および場合により50歳未満で診断された女性における生存率改善

  • 一部の患者において不安の減少

  • 煩雑なフォローアップの画像検査の必要性の減少

予防的対側乳房切除術の欠点には以下のものがある:

  • 手術合併症率がほぼ2倍に上昇

対側乳房の乳癌発生リスクが特に高い患者においても,予防的対側乳房切除術は必須ではない。綿密なサーベイランスが合理的な代替手段である。

放射線療法

乳房温存術後の放射線療法は,乳房および所属リンパ節での局所再発率を有意に低下させ,全生存期間を改善する可能性がある。しかしながら,患者が70歳以上でER陽性の早期乳癌である場合には,腫瘤摘出術 + タモキシフェンへの放射線療法の追加は必要でない可能性があり,放射線療法を追加しても局所再発時の乳房切除術の施行率や遠隔転移の発生率は有意に低下せず,生存率も上昇しない(6)。

以下のいずれかが存在する場合,乳房切除術後の放射線療法が適応となる:

  • 原発腫瘍が5cm以上である。

  • 腋窩リンパ節に浸潤がみられる。

  • 切除された組織が断端陽性である。

このような症例では,乳房切除術後の放射線療法により,胸壁や所属リンパ節における局所再発率が有意に低下し,全生存率が上昇する。

放射線療法の有害作用(例,疲労,皮膚変化)は通常一過性で軽度である。晩期有害反応(例,リンパ浮腫,腕神経叢障害,放射線肺炎,肋骨障害,二次がん,心毒性)は比較的まれである。

放射線療法を改善するために,研究者らはいくつかの新しい方法を研究中である。これらの方法の多くは,より正確にがんに放射線を照射し,乳房の他の部分に放射線の影響を与えないことを目的としている。

アジュバント全身療法

National Comprehensive Cancer Network [NCCN] Clinical Practice Guideline: Breast Cancerも参照のこと。)

内分泌療法,化学療法,またはHER2標的療法によりほぼ全ての患者で再発を遅延または予防でき,一部の患者では生存期間が延長する。ホルモン陽性乳癌はOncotype Dxを用いて評価することができ,これにより最も有益となる可能性の高い集団を化学療法および内分泌療法の対象として絞り込むことが可能になる。ホルモン陰性乳癌とHER2陽性乳癌は,化学療法および分子標的療法で治療する。

アジュバント療法の種類に関する決定は,エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)の状態,HER2(human epidermal growth factor 2)タンパク質の有無,悪性度および病期(リンパ節転移を含む),ゲノムによるリスク層別化などの腫瘍の特徴に基づいて行われる。一部の患者は内分泌療法と化学療法の併用で治療する。

通常は化学療法を手術直後から開始する。全身化学療法が必要でない場合,内分泌療法を通常は手術直後から開始し,5~10年継続する。

病期が進んでいる場合は,手術前からネオアジュバント化学療法を開始することもある。

表&コラム
表&コラム

内分泌療法

ER陽性の腫瘍(特に低リスクの腫瘍)がある患者では,典型的には内分泌療法を用いる。患者のリスクを層別化することと,多剤併用化学療法と内分泌療法単独のどちらの適応があるかを判断することを目的として,原発性乳癌の治療効果を予測するゲノム検査を行う。予後予測のための一般的な検査としては,以下のものがある:

  • 21遺伝子の再発スコアアッセイ(Oncotype Dxに基づく)

  • 70遺伝子のアムステルダム遺伝子プロファイル(MammaPrint)

  • 50遺伝子の再発リスクスコア(PAM50 assay)

米国では,乳癌女性の大半がER陽性/PR陽性/HER2陰性で,腋窩リンパ節転は移陰性である。このような女性では,21遺伝子再発スコアアッセイのスコアが低いか中間であれば,化学療法と内分泌療法の併用と内分泌療法単独で同程度の生存率が予測される。そのため,このサブセットの乳癌女性では化学療法が必要でない可能性がある。

内分泌療法(例,タモキシフェン,アロマターゼ阻害薬)では,その効果はエストロゲンおよびプロゲステロン受容体の発現に依存し,ホルモン受容体の発現レベルが最も強い場合に効果が最も高い(7)。内分泌療法に使用される薬剤としては,タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬などがある。

タモキシフェンは,エストロゲン受容体に競合的に結合する選択的エストロゲン受容体モジュレーターである。タモキシフェンによるアジュバント療法は,エストロゲン受容体をもつ腫瘍を有する女性の乳癌死亡率を低下させる。5年間のタモキシフェン療法により,腋窩リンパ節転移に関係なく閉経前および閉経後女性において年間死亡オッズが約25%減少する(8)。10年間の治療でさらに効果が高まると考えられており,5年間の治療と比較して生存期間が延長し,再発リスクが低下する(15年再発率が25%から21%に低下する)(9)。タモキシフェンは更年期症状を誘発したり,増悪させたりすることがあるが,対側乳房のがん発生率を低下させ血清コレステロールを減少させる。タモキシフェンは閉経後女性で骨密度を上昇させ,骨折および虚血性心疾患のリスクを下げる可能性がある。しかしながら,タモキシフェンにより子宮内膜がんの発生リスクが著しく高まる;報告されている発生率は,5年使用後の閉経後女性で1%である。したがって,このような女性に少量の性器出血や不正出血がみられる場合には,子宮内膜がんについて調べなければならない。それでもなお,乳癌女性にもたらす生存率の改善は,子宮内膜がんによる死亡リスクの上昇を十分上回るものである。血栓塞栓症のリスクもまた上昇する。

アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール,エキセメスタン,レトロゾール)は,閉経後女性における末梢でのエストロゲン産生を阻害する。タモキシフェンより効果的であり,これらの薬剤が閉経後女性におけるホルモン受容体陽性の早期がんの治療に好んで用いられるようになってきている。レトロゾールは,タモキシフェン療法を完了した閉経後女性に使用されることがある。アロマターゼ阻害薬による至適な治療期間は不明である。最近の試験では,治療期間を10年間に延長することで,乳癌の再発率の低下と無病生存率の上昇が認められた。治療期間が延長された患者において全生存率の変化は認められず,一方で骨折および骨粗鬆症の増加が認められた。

DCISの患者には,しばしば経口タモキシフェンを連日投与する。

ER陽性乳癌を有する閉経前女性に対する望ましい治療法は,典型的にはタモキシフェンまたは卵巣機能抑制(通常はGnRHアゴニストであるリュープロレリンによる)とアロマターゼ阻害薬の併用である。閉経後女性ではアロマターゼ阻害薬が望ましい。ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の癌を有する患者には,パルボシクリブ,ribociclib,アベマシクリブなどのCDK4/6阻害薬も使用される。BRCA1およびBRCA2の生殖細胞系列変異をもつHER2陰性乳癌患者にはオラパリブが使用される。

アジュバント化学療法

化学療法の通常の適応は,以下の1つ以上を認めることである:

  • エストロゲン受容体(ER)およびプロゲステロン受容体(PR)陰性

  • HER2(human epidermal growth factor 2)がん遺伝子陽性(化学療法およびHER2標的療法を行う)

  • 閉経前の患者でER/PR陽性かつリンパ節転移陽性

  • ER/PR陽性かつHER2陰性でOncotype Dxスコアが高い

ただし,リンパ節転移のない小さな(0.5~1cm未満)腫瘍の多く(特に閉経後患者)は,すでに非常に予後良好であるため,化学療法は必要ないことが研究により示されている(10)。

アジュバント化学療法の効果はER陰性腫瘍の閉経後患者で最も大きい(乳癌に対する望ましいアジュバント全身療法の表を参照)。

単剤よりも多剤併用化学療法レジメンの方が効果的である。Dose-denseレジメンで4~6カ月投与する方法が望ましい;dose-denseレジメンでは標準的なレジメンよりも投与と投与の間の時間が短い。多くのレジメンがある;一般的に用いられているものはACT(ドキソルビシン + シクロホスファミド,その後パクリタキセル)である。急性の有害作用はレジメンによって異なるが,通常は悪心,嘔吐,粘膜炎,疲労,脱毛,骨髄抑制,心毒性,血小板減少症などが生じる。骨髄を刺激する成長因子(例,フィルグラスチム,ペグフィルグラスチム)が化学療法による発熱および感染のリスクを下げるために一般的に使用される。長期の有害作用は大部分のレジメンで起こることは少ない;感染や出血により死亡することはまれである(0.2%未満)。

HER2標的療法

HER2の過剰発現がみられる腫瘍(HER2陽性)には,抗HER2モノクローナル抗体(トラスツズマブ,ペルツズマブ)が使用されることがある。ヒトモノクローナル抗体であるトラスツズマブを化学療法に加えることでかなりの効果がある。トラスツズマブは通常1年間継続するが,至適な治療期間は不明である。リンパ節に浸潤している場合,トラスツズマブにペルツズマブを加えることで無病生存率が改善する。これらの抗HER2薬の両方で発現する重篤な有害作用として駆出率の低下がある。

転移病変

転移を示唆する徴候があれば,直ちに評価を行うべきである。転移に対する治療により生存期間の中央値は6カ月またはそれ以上長くなる。これらの治療(例,化学療法)は,比較的毒性が強いが,症状を緩和して生活の質を改善することがある。したがって,治療を受けるかどうかの決定は極めて個人的なものとなる。

治療の選択は以下によって異なる:

  • 腫瘍のホルモン受容体の状態

  • 無病期間の長さ(寛解から転移発生まで)

  • 転移病変および侵されている臓器の数

  • 患者が閉経しているかどうか

症状を伴う転移病変の治療には通常,全身内分泌療法または化学療法が用いられる。中枢神経系外に複数の転移部位がある患者には,最初に全身療法を施行すべきである。転移が無症状である場合,治療が実質的に生存を延長させるという証拠はなく,生活の質を低下させることがある。

以下のいずれかに該当する患者には,化学療法よりも内分泌療法が望ましい:

  • ER陽性

  • 無病期間が2年以上

  • 直ちに生命が脅かされる病状ではない

閉経前女性では,しばしばタモキシフェンが最初に使用される。合理的な代替案として,手術,放射線療法,または黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト(例,ブセレリン,ゴセレリン,リュープロレリン)による卵巣機能抑制がある。一部の専門家は,卵巣機能抑制とタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害薬を併用している。閉経後女性では,アロマターゼ阻害薬が主な内分泌療法として使用されることが多い。がんが初めは内分泌療法に反応するが,数カ月から数年後に進行する場合には,別の種類の内分泌療法(例,プロゲスチン,抗エストロゲン作用のあるフルベストラント)を追加で使用し,反応が起こらなくなるまで継続して使用してもよい。

最も効果的な化学療法薬は,カペシタビン,ドキソルビシン(リポソーム製剤を含む),ゲムシタビン,タキサン系のパクリタキセルとドセタキセル,およびビノレルビンである。薬剤の併用に対する奏効率は単剤の場合より高いが,生存率は改善されず毒性が高まる。このため,薬剤を単独で連続的に使用する場合もある。

HER2の過剰発現がみられる腫瘍の治療には,抗HER2モノクローナル抗体(例,トラスツズマブ,ペルツズマブ)が使用される。これらは内臓の転移部位の治療およびコントロールに効果的である。トラスツズマブは単独,あるいは内分泌療法,化学療法,またはペルツズマブと併用して使用される。トラスツズマブ + 化学療法 + ペルツズマブの組合せでは,トラスツズマブ + 化学療法に比べHER2陽性の転移性乳癌の増殖が遅くなり,生存率が改善する(11)。

チロシンキナーゼ阻害薬(例,ラパチニブ,ネラチニブ)はHER2陽性腫瘍の女性に使用されることが増えてきている。

外科的切除が有効ではない症状のある弧立性骨病変や皮膚の局所再発の治療のため,放射線療法を単独で行うことがある。放射線療法は脳転移に対して最も効果的な治療であり,ときに長期コントロールをもたらす。

安定した転移性乳癌患者では,ときに緩和的な乳房切除術(Palliative mastectomy)が選択肢となる。

ビスホスホネートの静注(例,パミドロン酸,ゾレドロン酸)は骨痛および骨量減少を緩和し,骨転移による骨合併症を予防ないし遅延させる。骨転移のある患者の約10%が最終的に高カルシウム血症を発症し,これもビスホスホネートの静注製剤で治療可能である。

治療に関する参考文献

  1. 1.Fisher B, Anderson S, Bryant J, et al.Twenty-year follow-up of a randomized trial comparing total mastectomy, lumpectomy, and lumpectomy plus irradiation for the treatment of invasive breast cancer. N Engl J Med 347(16):1233-1241, 2002.doi:10.1056/NEJMoa022152

  2. 2.Jammallo LS, Miller CL, Singer M, et al: Impact of body mass index and weight fluctuation on lymphedema risk in patients treated for breast cancer.Breast Cancer Res Treat 142 (1):59–67, 2013.doi: 10.1007/s10549-013-2715-7

  3. 3.Giuliano AE, Hunt KK, Ballman KV, et al: Axillary dissection vs no axillary dissection in women with invasive breast cancer and sentinel node metastasis: A randomized clinical trial.JAMA 305 (6):569-575, 2011.doi: 10.1001/jama.2011.90

  4. 4.Krag DN, Anderson SJ, Julian TB, et al: Sentinel-lymph-node resection compared with conventional axillary-lymph-node dissection in clinically node-negative patients with breast cancer: overall survival findings from the NSABP B-32 randomised phase 3 trial. Lancet Oncol 11(10):927-933, 2010.doi:10.1016/S1470-2045(10)70207-2

  5. 5.National Lymphedema Network Medical Advisory Committee: Position Statement Paper: Lymphedema Risk Reduction Practices.May 2010.Accessed May 8, 2023.

  6. 6.Hughes KS, Schnaper LA, Berry D, et al: Lumpectomy plus tamoxifen with or without irradiation in women 70 years of age or older with early breast cancer.N Engl J Med 351 (10):971-977, 2004.doi:10.1056/NEJMoa040587

  7. 7.Fisher B, Anderson S, Tan-Chiu E, et al: Tamoxifen and chemotherapy for axillary node-negative, estrogen receptor-negative breast cancer: findings from National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project B-23. J Clin Oncol 19(4):931-942, 2001.doi:10.1200/JCO.2001.19.4.931

  8. 8.Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group (EBCTCG): Effects of chemotherapy and hormonal therapy for early breast cancer on recurrence and 15-year survival: an overview of the randomised trials. Lancet 365(9472):1687-1717, 2005.doi:10.1016/S0140-6736(05)66544-0

  9. 9.Davies C, Pan H, Godwin J, et al: Long-term effects of continuing adjuvant tamoxifen to 10 years versus stopping at 5 years after diagnosis of oestrogen receptor-positive breast cancer: ATLAS, a randomised trial [published correction appears in Lancet. 2013 Mar 9;381(9869):804] [published correction appears in Lancet. 2017 May 13;389(10082):1884]. Lancet 381(9869):805-816, 2013.doi:10.1016/S0140-6736(12)61963-1

  10. 10.Rosen PP, Saigo PE, Braun DW Jr, et al: Predictors of recurrence in stage I (T1N0M0) breast carcinoma. Ann Surg 193(1):15-25, 1981.doi:10.1097/00000658-198101000-00003

  11. 11.Swain SM, Baselga J, Kim SB, et al: Pertuzumab, trastuzumab, and docetaxel in HER2-positive metastatic breast cancer.N Engl J Med 372 (8):724-734, 2015.doi: 10.1056/NEJMoa1413513

乳癌の予後

長期予後は病期によって異なる。リンパ節転移の状態(リンパ節の数および位置を含む)は,他の予後因子よりも無病生存および全生存と相関する。

5年生存率(米国国立がん研究所[National Cancer Institute]のSurveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Programから算出)は病期に依存する:

  • 限局性(原発部位にとどまっている場合):99.0%

  • 所属リンパ節陽性(所属リンパ節転移にとどまっている場合):85.8%

  • 遠隔転移陽性:29.0%

  • 不明:57.8%

以下に示す他の因子は予後不良と関連する:

  • 若年:20代および30代で乳癌と診断された患者は中年で診断された患者より予後が悪いようである。

  • 人種:2015年から2019年までの米国における乳癌死亡率は,非ヒスパニック系黒人女性(10万人当たり28人)の方が非ヒスパニック系白人女性(10万人当たり19.9人)より高かった(1)。黒人女性は白人女性と比較して診断時の年齢が低く(中央値は60歳対63歳),トリプルネガティブ乳癌である可能性が高い(2)。

  • 大きな原発腫瘍:腫瘍が大きいほどリンパ節転移が陽性となる可能性が高くなるが,リンパ節の状態に関係なく腫瘍が大きいほど予後不良となる。

  • 悪性度の高い腫瘍:低分化腫瘍の患者は予後不良である。

  • エストロゲンおよびプロゲステロン受容体の欠如:ER陽性の患者はER陰性患者よやや予後が良好で,内分泌療法が有益となる可能性が高い。腫瘍にプロゲステロン受容体の発現がみられる患者も予後が良好な場合がある。腫瘍にエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の両方の発現がみられる患者は,どちらか一方のみが陽性の患者より予後良好である可能性があるが,その便益は明確でない。

  • HER2タンパク質の存在:HER2遺伝子(HER2/neuerb-b2])が増幅されると,HER2タンパク質が過剰発現して,細胞の増殖と再生を亢進させ,しばしば進行の速い腫瘍細胞が生み出される。HER2の過剰発現は独立した予後不良因子であり,他の予後不良因子である高い組織学的悪性度,ER陰性の腫瘍,広範な増殖,および大きな腫瘍と関連している可能性がある。

  • 遺伝子変異の存在:いずれの病期においても,BRCA1遺伝子変異をもつ患者は散発性腫瘍の患者よりも予後不良であり,これはおそらく,そうした患者のがんは高悪性度でホルモン受容体陰性のがんの比率が高いことによる。腫瘍が同様の特徴を呈する場合には,BRCA2遺伝子変異をもつ患者ともたない患者の予後はおそらく同等である。どちらかの遺伝子変異を有している場合は,残りの乳房組織に2つ目のがんが発生するリスクが高い(おそらく40%に上る)。

終末期の問題

転移性乳癌の患者では,生活の質が低下する可能性があり,さらなる治療を行っても生存期間が延長する可能性が低い場合がある。延命よりも緩和療法の方が最終的に重要になる場合もある。

がん性疼痛は,オピオイド鎮痛薬などの適切な薬剤の使用により十分にコントロールできる。その他の症状(例,便秘,呼吸困難,悪心)も治療すべきである。

心理カウンセリングやスピリチュアルカウンセリングを勧めるべきである。

転移性乳癌の患者には,医療に関する意思決定ができなくなった場合に備えて,自分自身がどのようなケアを望むかをまとめた事前指示書を用意するよう勧めるべきである。

予後に関する参考文献

  1. 1.American Cancer Society: Cancer Facts & Figures or African American/Black People 2022-2024.Accessed May 4, 2023.

  2. 2.American Cancer Society: Key Statistics for Breast Cancer.Accessed May 4, 2023.

要点

  • 乳癌は女性のがん死亡原因の第2位であり,95歳までの乳癌発生の累積リスクは12%である。

  • リスクを大きく上昇させる因子には,近親者の乳癌(特にBRCA遺伝子の病的変異が存在する場合),異型乳管または小葉過形成,非浸潤性小葉癌,30歳以前の胸部放射線療法による相当量の被曝が含まれる。

  • 予後がより不良であることを示唆する因子には若年,エストロゲンおよびプロゲステロン受容体陰性,HER2タンパク質またはBRCA遺伝子変異の存在がある。

  • 大部分の女性では,治療として外科的切除,リンパ節検体採取,全身療法(内分泌療法または化学療法),および放射線療法が必要となる。

  • 腫瘍がホルモン受容体陽性の場合は内分泌療法(例,タモキシフェン,アロマターゼ阻害薬)で治療する。

  • 生存期間延長の可能性が低い場合でも,症状を緩和するために転移病変の治療(例,化学療法,内分泌療法,または骨転移に対しては放射線療法またはビスホスホネート)を考慮する。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. NCCN Clinical Practice Guideline: Breast Cancer: The National Comprehensive Cancer Network provides guidelines for the diagnosis, staging, and treatment of breast cancer (and other cancers).

  2. U. S. Preventive Services Task Force: Breast Cancer: Medication Use to Reduce Risk: This web site provides the rationale of using medications to reduce the risk of breast cancer in women at high risk and describes the risks of using these medications.

  3. National Cancer Institute: Breast Cancer: This web site discusses the genetics of breast and gynecologic cancers and the screening for and prevention and treatment of breast cancer.It also includes evidence-based information about supportive and palliative care.

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