良性卵巣腫瘤

執筆者:Charles Kilpatrick, MD, MEd, Baylor College of Medicine
レビュー/改訂 2023年 2月
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良性卵巣腫瘤には,機能性嚢胞(例,黄体嚢胞)および腫瘍(例,良性の奇形腫)が含まれる。多くは無症状であるが,骨盤痛が生じることもある。評価としては内診,経腟超音波検査,ときに腫瘍マーカーの測定などを行う。治療は腫瘤の種類に応じて異なり,腫瘤に症状がみられるかがんが疑われる場合は,膀胱摘除術または卵巣摘出術を施行する。

卵巣嚢胞または他の卵巣腫瘤は,一般的な婦人科的問題である。機能性嚢胞は月経周期の一部として発生するが,一般的なものであり通常は無治療で消失する。症状があるか消失しない腫瘤は,治療および卵巣がんの検査のために外科的切除が必要になることがある。

機能性卵巣嚢胞

機能性嚢胞には以下の2種類がある:

  • 卵胞嚢胞:グラーフ卵胞(卵巣にある袋状の構造で,液体で満たされ,卵子を含む)から生じる。

  • 黄体嚢胞:黄体(卵子を放出した主席卵胞より形成される)から生じる。これらは嚢胞内腔に出血し,卵巣被膜を膨張させたり,腹膜腔内に破裂することがある。

大部分の機能性嚢胞は直径1.5cm未満である;5cmを超えるものはほとんどない。機能性嚢胞は通常,数日~数週間で自然に消失する。

多嚢胞性卵巣症候群は通常,卵巣嚢胞の存在によってではなく,臨床症候群として定義される。しかし典型的には,卵巣に2~6mmの多数の卵胞嚢胞を認め,閉鎖卵胞細胞を中に含むより大きい嚢胞がみられることもある。

良性卵巣腫瘍

良性卵巣腫瘍は通常は緩徐に成長し,悪性化するのはまれである。以下を含む:

  • 良性(成熟)奇形腫:この腫瘍は胚細胞腫瘍であり,3胚葉全てに由来するが,主に外胚葉性組織から成るため,類皮嚢胞とも呼ばれている。

  • 線維腫:発育が緩徐な結合組織腫瘍で通常直径7cm未満である。

  • 嚢胞腺腫:最も一般的には漿液性または粘液性の腫瘍である。

良性卵巣腫瘤の症状と徴候

大半の機能性嚢胞および良性腫瘍は無症状であるが,一部は間欠的かつ鈍いまたは鋭い骨盤痛や,まれに深部性交痛を引き起こす。

出血性黄体嚢胞は,特に破裂するときに疼痛や腹膜炎の徴候を引き起こすことがある。ときに,嚢胞や腫瘤(通常4cmを超える)の付属器捻転が原因となり,重度の腹痛が引き起こされる。

まれに,卵巣線維腫で腹水および胸水が伴う;この三徴の所見はMeigs症候群と呼ばれる。

良性卵巣腫瘤の診断

  • 経腟超音波検査

  • ときに,腫瘍マーカー検査

腫瘤は通常,内診中や画像検査で偶発的に発見されるが,症状や徴候により示唆されることもある。

骨盤痛または異常子宮出血のある患者では,異所性妊娠または切迫流産を除外するために妊娠検査を行う。

診断の確定には,通常,経腟超音波検査が第1選択である。

画像上で悪性腫瘍の特徴(例,嚢胞性と充実性の混合成分,表面の突出物,多房性の様相,厚い隔壁,不整形)がみられるか,または腹水を伴う腫瘤は専門医へのコンサルテーションおよび切除の必要がある。

卵巣がんが疑われる場合には,腫瘍マーカーの検査を行う。CA125は通常,卵巣腫瘤を有する閉経後女性で測定されるが,閉経前女性での使用には臨床判断が必要である。このマーカーも他の腫瘍マーカーも,感度,特異度,適中率が十分ではないため,診断における信頼性は低い。例として,子宮内膜症子宮筋腫,腹膜炎,胆嚢炎膵炎炎症性腸疾患,または様々な悪性腫瘍の女性で,腫瘍マーカーが偽陽性となることがある。腫瘍マーカーは,卵巣がんが判明している患者における治療に対する反応のモニタリングに最もよく用いられる。

良性卵巣腫瘤の治療

  • 特定の嚢胞に対する連続的な経腟超音波検査によるモニタリング

  • ときに手術(嚢胞摘出術または卵巣摘出術)

5cm未満の機能性嚢胞は,大半が無治療で消失するため,継続的に超音波検査を行って消失を確認する。症状のない妊娠可能年齢の女性における,画像上で悪性腫瘍の特徴を伴わない5~8cmの単純で薄壁性かつ嚢胞性の付属器腫瘤(通常は卵胞)は,超音波検査を繰り返し行う(例,6週間から8週間毎)待機的管理が適切である。

良性腫瘍は治療を必要とする。画像上で悪性腫瘍の特徴がみられる腫瘤は腹腔鏡下試験切除術または開腹による切除を行う。

技術的に可能であれば,外科医は卵巣の温存を目指す(例,嚢胞摘出術による)。

以下の場合に卵巣摘出術が行われる:

  • 嚢腫摘出術で除去できない線維腫

  • 嚢胞腺腫

  • 10cmを超える嚢胞性奇形腫

  • 卵巣と切り離して外科的に除去できない他の種類の嚢胞

  • 閉経後女性で,ほとんどが嚢胞または腫瘤であり,特に5 cmを超える場合

要点

  • 卵巣嚢胞および良性卵巣腫瘍は,よくみられる婦人科的問題である。

  • 機能性嚢胞は月経周期の一部として発生するが,大きさは小さく(通常直径1.5cm未満),閉経前女性に発生し,自然に消失する傾向にある。

  • 機能性嚢胞および良性腫瘍は通常無症状であるが,ときに鈍いまたは鋭い骨盤痛が生じる。

  • 画像上で悪性腫瘍の特徴(例,嚢胞性と充実性の成分,表面の突出物,多房性の様相,不整形)がみられるか,または腹水を伴う腫瘤は切除する。

  • 特定の嚢胞および良性腫瘍(自然に消失しない嚢胞も含む)は摘出する。

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