遺伝性視神経症

執筆者:John J. Chen, MD, PhD, Mayo Clinic
レビュー/改訂 2022年 10月
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遺伝性視神経症は,視力障害に加えてときに心臓または神経系の異常を引き起こす遺伝的障害によって生じる。効果的な治療法はない。

遺伝性視神経症には,顕性遺伝性(優性遺伝性)視神経萎縮やレーベル遺伝性視神経症などがあり,これらはいずれもミトコンドリア細胞障害である(1)。これらの疾患は,典型的には小児期または青年期に発生し,両眼性対称性の中心視力障害を伴う。視神経損傷は通常永久的で,進行する場合もある。視神経萎縮が認められる頃には,すでに相当の視神経損傷が生じている。

顕性遺伝性(優性遺伝性)視神経萎縮

顕性遺伝性(優性遺伝性)視神経萎縮は,常染色体顕性(優性)の形式で遺伝する。遺伝性視神経症で最も頻度が高いと考えられており,有病率は10,000人に1人から50,000人に1人である。視神経アビオトロフィーであると考えられており,視神経の早期変性により進行性の視力障害に至る。10歳までに発症する。

レーベル遺伝性視神経症

レーベル遺伝性視神経症にはミトコンドリアDNAの異常が関与し,細胞呼吸が影響を受ける。全身のミトコンドリアDNAが侵されるものの,主な症候は視力障害である。大半の症例(80~90%)は男性に発生する。本疾患は母系遺伝の形式で遺伝する;すなわち,遺伝子異常を有する女性の子孫は全員がその異常を受け継ぐが,接合子は母親からのみミトコンドリアを受け継ぐため,異常は女性を介してのみ次世代に継承される。

総論の参考文献

  1. 1.Kisilevsky E, Freund P, Margolin E: Mitochondrial disorders and the eye.Surv Ophthalmol 65(3):294-311, 2020.doi: 10.1016/j.survophthal.2019.11.001

遺伝性視神経症の症状と徴候

顕性遺伝性(優性遺伝性)視神経萎縮

顕性遺伝性(優性遺伝性)視神経萎縮の大半の患者では,関連する神経学的異常はみられないが,眼振および難聴が報告されている。唯一の症状は緩徐に進行する両眼の視力障害で,通常晩年に至るまで軽度である。視神経乳頭全体,ときに耳側部分のみが蒼白になり,血管がみられなくなる。青黄色覚異常を特徴とする。

レーベル遺伝性視神経症

レーベル遺伝性視神経症の患者における視力障害は,典型的には15~35歳(全体では1~80歳)の間に始まる。通常,片眼の無痛性中心視力障害の数週間~数カ月後に他眼の視力障害が起こる。両眼同時の視力障害も報告されている。大半の患者は,視力が20/200(0.1)未満に低下する。眼底検査では,血管拡張性微小血管症,視神経乳頭周囲の神経線維層の腫脹を認め,フルオレセイン蛍光眼底造影では漏出を認めない。最終的に視神経萎縮が続発する。

レーベル遺伝性視神経症の患者の中には,心伝導障害をもつ者もいる。ほかに,姿勢時振戦,アキレス腱反射の低下,ジストニア,痙縮,または多発性硬化症様病態などの軽微な神経学的異常を呈する患者もいる。

遺伝性視神経症の診断

  • 臨床的評価

  • 分子遺伝学的検査

顕性遺伝性(優性遺伝性)視神経萎縮およびレーベル遺伝性視神経症の診断は主に臨床的に行う。両疾患を引き起こす様々な変異を同定するための分子遺伝学的検査が利用可能である。しかしながら,分子遺伝学的検査でまだ同定できない変異が存在する可能性があるため,結果が偽陰性の可能性もある。

レーベル遺伝性視神経症が疑われる場合は,潜在的な心伝導障害を診断するため心電図検査を行うべきである。

遺伝性視神経症の治療

  • 対症療法

遺伝性視神経症に効果的な治療法はない。ロービジョン補助具(例,虫眼鏡,拡大読書器,音声付き腕時計)が役立つ可能性がある。遺伝カウンセリングが推奨される。

レーベル遺伝性視神経症

レーベル遺伝性視神経症の患者に対し,コルチコステロイド,ビタミン栄養補助食品,および抗酸化物質の使用が試みられているが,効果は得られていない。小規模試験で,病初期におけるキノン誘導体(ユビキノンおよびイデベノン)の有益性が見出されている(1)。ミトコンドリアによるエネルギー産生にストレスを与えうる因子(例,タバコ,アルコール,特に過剰摂取した場合)を避けるべきだとする意見があり,有益性は証明されていないものの理論的には妥当である。心臓および神経系の異常がみられる患者は専門医に紹介すべきである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Peragallo JH, Newman NJ: Is there treatment for Leber hereditary optic neuropathy?Curr Opin Ophthalmol 26(6):450-457, 2015.doi: 10.1097/ICU.0000000000000212

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