耳硬化症

執筆者:Richard T. Miyamoto, MD, MS, Indiana University School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 3月
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    耳硬化症は,卵円窓内に新生骨の異常な増殖を引き起こす迷路骨包の疾患である。

    耳硬化症は,骨構造に影響を及ぼす多くの遺伝性および後天性疾患のうちの1つである。そのほかには,鼓室硬化症,パジェット病,鰓耳腎症候群,骨形成不全症,Goldenhar症候群などにより生じる。

    耳硬化症では,新生骨がアブミ骨の動きを止めたり,制限したりすることにより,伝音難聴を引き起こす。耳硬化症は,特に硬化した骨の病巣が蝸牛中央階に隣接する場合に,感音難聴も引き起こすことがある。耳硬化症は遺伝する傾向があり,全症例の半数が遺伝性である。耳硬化症を発症する確率は,片方の親が罹患している場合で25%,両親とも罹患している場合で50%である。耳硬化症は,単一の遺伝子に起因するまれな常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の複雑な病態である。連鎖解析によると,耳硬化症の遺伝子は染色体15q25-q26に位置する。耳硬化症の遺伝的素因をもつ患者においては,麻疹ウイルスが誘因となることがある。

    白人成人の約10%に何らかの耳硬化症が認められるが(これに対して黒人では1%),そのうち伝音難聴を発症するのは約10%のみである。耳硬化症により引き起こされる難聴は,まれに早ければ7~8歳で発症することもあるが,ほとんどの場合,青年後期または成人初期に,緩徐に進行する左右非対称の難聴が診断されるまで明らかにならない。

    補聴器により聴力が改善することがある。別の方法として,アブミ骨摘出術でアブミ骨の一部または全部を摘出して人工材料に置換することが有益な場合もあるが,難聴および前庭機能障害のリスクを考慮する必要がある。

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