いくつかの悪性および良性の耳の腫瘍が発生し,通常,難聴とともに現れる。浮動性めまい,回転性めまい,または平衡異常とともに現れる場合もある。これらの腫瘍はまれであり,診断が困難な場合がある。
(頭頸部腫瘍の概要も参照のこと。)
悪性の耳の腫瘍
基底細胞癌および扁平上皮癌が外耳道に生じることがある。慢性中耳炎による持続性炎症が,扁平上皮癌の発生の素因となる場合がある。広範囲切除の適応であり,次いで放射線療法を施行する。病変が外耳道に限局し,中耳に浸潤していない場合,顔面神経を温存しながら外耳道の一括切除を行う。深部への浸潤にはより大きな側頭骨切除が必要となる。これらの切除術は,典型的には神経耳科または頭蓋底手術を専門とする外科医によって施行される。
まれに,扁平上皮癌が中耳より発生する。慢性中耳炎の持続性耳漏が素因となることがある。側頭骨切除および術後放射線療法が必要である。
非クロム親和性傍神経節腫(chemodectoma)が側頭骨に,頸静脈球内のグロムス小体(glomus body)から(頸静脈球型グロムス腫瘍),または中耳の内側壁から(鼓室型グロムス腫瘍)発生する。中耳内に拍動性の赤い腫瘤として現れる。最初の症状はしばしば,脈拍に同調する耳鳴である。難聴が発生し,回転性めまいが続く。第9,第10,および第11神経の脳神経麻痺が,頸静脈孔を介して進展する頸静脈球型グロムス腫瘍に伴うことがある。切除が第1選択の治療であり,手術の候補とならない場合に放射線療法を用いる。
良性の耳の腫瘍
脂腺嚢腫,骨腫,およびケロイドが外耳道内に発生して外耳道を閉塞し,耳垢の停滞および伝音難聴を引き起こすことがある。良性の耳の腫瘍は全て,切除が第1選択の治療法である。
耳垢腺腫が外耳道の外側3分の1において発生する。これらの腫瘍は組織学的には良性の所見を示し,局所的にも遠隔的にも転移しないが,局所浸潤性であり,破壊性である可能性があり,広範囲に切除すべきである。