軟性鏡による喉頭鏡検査

執筆者:Vikas Mehta, MD, MPH, Montefiore Medical Center
レビュー/改訂 2023年 3月
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軟性鏡による喉頭鏡検査は,軟性喉頭鏡(鼻咽喉ファイバースコープとも呼ばれる)を用いて咽頭および喉頭を観察する検査である。

軟性鏡による喉頭鏡検査は,一般に咽頭および喉頭の疾患の症状を評価するために施行される。

鼻および咽頭症状を有する患者の評価ならびに喉頭疾患の概要も参照のこと。)

軟性鏡による喉頭鏡検査の適応

喉頭鏡検査は,以下がみられる患者の評価を目的として適応となる場合がある:

  • 慢性咳嗽

  • 慢性咽頭痛

  • 嚥下困難

  • 発声障害

  • 咽喉頭の異物

  • 嗄声または声質の変化

  • 嚥下痛

  • 咽喉頭異常感

  • 誤嚥の症状

  • ときに喀血

特に,頭頸部がんのリスクが高い患者(例,ヘビースモーカーまたは大量飲酒者)で,喉頭鏡検査は有益となる可能性がある(特に嗄声,咽頭痛,または耳痛が2週間以上続いている場合)。

喉頭鏡検査は,経口気管挿管に先立って気道を評価する目的でも有用となることがある。

血管性浮腫,吸気性喘鳴,鼻出血,または頭蓋顔面外傷がみられる患者では,緊急の喉頭鏡検査が適応となることがある。

軟性鏡による喉頭鏡検査は,直達喉頭鏡検査に耐えられない患者に対して試みることができる。

軟性鏡による喉頭鏡検査の禁忌

絶対的禁忌

相対的禁忌

  • 吸気性喘鳴(stridor)

  • 血管性浮腫

  • 活動性の鼻出血またはコントロール不良の出血性疾患

吸気性喘鳴または血管性浮腫がみられる患者では,下咽頭の刺激によって気道がさらに障害されることがある。喉頭鏡検査が必須である場合は,管理された手術室で,困難な気道管理(外科的手技を含む)に熟練した者がいる状況で行うべきである。

軟性鏡による喉頭鏡検査の合併症

  • 粘膜の損傷(出血を引き起こすことがある)

  • 喉頭痙攣および気道障害

この処置は咽頭反射,咳嗽,および/または嘔吐を引き起こすことがある。ときに,血管迷走神経反射がみられる。

軟性鏡による喉頭鏡検査で使用する器具

  • 光源付きの軟性喉頭鏡(鼻咽喉ファイバースコープ)

  • 手袋

  • 保護用の眼鏡

  • マスク

  • 鼻鏡

  • 潤滑剤

  • Frazier型吸引管付きカテーテルを接続した壁内の吸引源

  • 血管収縮薬/麻酔薬の外用剤(例,4%コカイン,0.05%オキシメタゾリン + 1%テトラカインまたは4%リドカイン)

  • 鼻閉改善薬および/または麻酔薬の噴霧以外の外用に使用する綿棒または綿球

軟性鏡による喉頭鏡検査に関するその他の留意事項

  • 軟性鏡による喉頭鏡検査では,喉頭声門下および近位気管の限られた視界しか得られない。これらの部位を評価するには,気管支鏡検査などの別の手技を用いる。

軟性鏡による喉頭鏡検査における重要な解剖

  • 咽頭は上咽頭,中咽頭,および下咽頭に分けられる。

  • 喉頭は咽頭と気管を連絡しており,舌骨から吊り下げられている。3つの軟骨構造(喉頭蓋軟骨,甲状軟骨,輪状軟骨)と3対の軟骨構造(披裂軟骨,楔状軟骨,小角軟骨)がある。喉頭は,喉頭蓋の先端から輪状軟骨の下面にまで及び,声帯ヒダを含んでいる。

軟性鏡による喉頭鏡検査での体位

  • 患者を座位にして頭をヘッドレストに当て,若干前傾させる。

  • 脚を交差させてはならない。

軟性鏡による喉頭鏡検査のステップ-バイ-ステップの手順

準備

  • 喉頭鏡(光源および吸引器を含む)が正しく動作していることを確認する。

  • アイピースの焦点を調整する(薬剤や器具の包装などの文字を利用する)。

  • 両方の鼻孔を確認し,より広く開存しているように見える鼻孔を選択する。

  • 鼻鏡で鼻孔を開いた状態で維持する。鼻鏡を柄が床と平行になる向きに挿入し,鼻鏡を縦に開く;1本または2本の指を患者の鼻に当てて手を安定させる。

  • 血管収縮薬/麻酔薬の外用剤を塗布する。

処置

血管収縮薬/麻酔薬を塗布してから約5~15分後に以下を行う:

  • 喉頭鏡の先端に潤滑剤を塗布する。

  • 喉頭鏡の先端を鼻に挿入し,鼻腔底と平行に下鼻甲介の付近(上または下)をゆっくりと進めていく。

  • 上咽頭まで進めて,上咽頭側壁の耳管開口部および後壁のアデノイド組織を視診する。

  • 患者に鼻で呼吸するように指示する(これにより軟口蓋が下垂する)。喉頭鏡の親指操作部を使って,先端を下に屈曲させて口蓋を越え,その後は,前方に曲がって口蓋垂の方に向かわないように,まっすぐに伸ばす。

  • 舌根,喉頭蓋谷,喉頭蓋,梨状陥凹,披裂軟骨,仮声帯,声帯,および声帯より下の喉頭を視診する。

  • 接触すると喉頭痙攣を引き起こす可能性があるため,喉頭鏡を声帯に通してはならない。

  • 声帯を十分に視診する。患者に指示して「えー」と発声させることで声帯を収縮させ,より徹底的な視診を可能にする。

  • 咽頭反射を誘発する可能性があるため,粘膜や喉頭蓋には触れないようにする。

  • 喉頭鏡を愛護的に抜去する。

軟性鏡による喉頭鏡検査のアフターケア

  • 下咽頭への麻酔の残存による誤嚥を防ぐため,少なくとも20分間は飲食を避けるよう患者に指示する。

軟性鏡による喉頭鏡検査の注意点とよくあるエラー

  • 喉頭鏡を強く挿入しすぎることにより,出血および/または不快感を引き起こす

  • 喉頭鏡の先端の方向について状況認識を喪失する

  • 麻酔または血管収縮薬の使用量が少なすぎる

軟性鏡による喉頭鏡検査のアドバイスとこつ

  • 流涙が起こる可能性があるため,処置前に患者にティッシュを渡す。

  • 一部の患者は反射的に息を止めるため,処置中は呼吸するよう促す。

  • 喉頭鏡を挿入する前に,先端の操作に習熟しておく。

  • 喉頭鏡の視界を明瞭にするため,処置中は指示されたとき以外は嚥下しないよう患者に指示する。

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