舌の不快感には,疼痛と灼熱感の両方が含まれ,刺激を原因とすることが多い。
(全身性疾患と口腔の全身性疾患における口腔所見の表も参照のこと。)
舌の不快感の最も一般的な原因は以下のものである:
特定の食品,特に酸性のもの(例,パイナップル)
歯磨剤,洗口液,飴,またはガムに含まれる特定の材料
特定の薬剤(一般的に口腔乾燥を引き起こすもの:抗ヒスタミン薬,抗精神病薬,三環系抗うつ薬,頻度は低いがアンジオテンシン変換酵素阻害薬,非ステロイド系抗炎症薬,またはメトトレキサート,ブレオマイシン,フルオロウラシルなどの化学療法薬)
咀嚼時もしくは睡眠中のブラキシズムによる舌への偶発的外傷,または破損した修復物もしくは鋭利な歯による外傷
舌の不快感のその他の原因としては以下のものがある:
萎縮性舌炎
口腔灼熱症候群(舌痛)
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
顎下隙の感染症(口底蜂窩織炎[Ludwig's angina]):舌下隙,顎下隙,オトガイ下隙が侵され,舌の挙上を引き起こす。
セリアック病(ほとんどの場合は舌の口腔側が侵され,疼痛を伴う灼熱感としてみられる)
萎縮性舌炎によって,ときに舌の灼熱感が生じることがあるが,その原因としては鉄またはビタミンB12の欠乏症や口腔乾燥(口腔乾燥症)など,多くのものがある。口腔灼熱症候群は視認可能な徴候を引き起こさないが,通常は舌と口および口唇の灼熱痛および錯感覚がみられる。
舌の不快感の評価では,気道閉塞により生命を脅かす可能性がある顎下隙の感染症をまず除外する必要がある。その他の多くの原因,例えば鋭利な歯の切端やカンジダ症は,診察で容易に明らかになる。刺激性の原因を同定するためには,可能性のある原因を順に除外していく必要がある場合が多い。口腔灼熱症候群の診断は,他の原因を除外してからの除外診断による。
感染によるものではない舌の不快感は,通常は原因の除去(例,歯磨剤の変更,特にラウリル硫酸ナトリウムを含まないものへの変更),刺激性/酸性食品や香辛料の効いた食品の回避,または鋭利な歯もしくは破折歯の修復により治療する。温かい食塩水を用いた含嗽が助けになることもある。同定された基礎疾患があれば治療する。