Retronychiaは，爪周囲組織の感染症である爪周囲炎の比較的まれな病型である。急性症状として，疼痛，後爪郭の炎症，黄色爪，爪甲剥離症，肉芽組織などがある。慢性retronychiaは，爪甲剥離症と爪甲の重層を特徴とする。診断は臨床的に行う。治療法は病期により異なるが，コルチコステロイドや爪甲の除去などがある。
Retronychiaでは，爪甲の近位部が後爪郭部に埋没し，爪母と爪甲の正常な位置関係が失われる。新しい爪が成長することで古い爪が押し上げられ，爪甲が何層にも重層していく。
Retronychiaは拇指の爪に好発する。爪に対する反復的な微小外傷によって引き起こされるが，大抵の場合，窮屈な靴を履くことや足趾の爪の外傷につながる活動を行うことが原因である。
急性期のretronychiaは，疼痛を伴い，後爪郭の炎症，爪甲の黄色または白色への変色（黄色爪），および肉芽組織形成を呈する。Retronychiaを爪周囲炎と鑑別する上で役立つ臨床的特徴として，黄色爪の存在と側爪郭ではなく後爪郭の腫脹があるが，これはretronychiaでは側爪郭が侵される頻度が爪周囲炎の場合よりはるかに低いためである。
Image courtesy of Chris G.Adigun, MD.
慢性期になると，炎症は消失するものの，爪甲が肥厚して爪床から剥がれることがある（爪甲剥離症）。爪甲が何層にも重層することもあり，爪上皮は失われる。
Image courtesy of Chris G.Adigun, MD.
Retronychiaの診断は臨床的に行う。爪甲のPAS（過ヨウ素酸シッフ）染色および培養はしばしば陰性となる。除去した爪甲を分析すると，爪甲自体がPAS染色陽性となることがあるが，爪真菌症はしばしば一次的な問題ではなく，むしろ障害や炎症の原因となった爪の外傷に続発したものである。診断では，爪甲の重層化，爪上皮の欠如（慢性の場合），爪下残屑の欠如などを考慮する。
治療
コルチコステロイドおよび爪の除去
急性期の治療選択肢としては，コルチコステロイドの外用および病変内注射などがある。慢性期の治療は爪の除去である(1)。
微小外傷の回避が重要であり，例えば，患趾の爪にかかる圧力を軽減するために足趾周りに余裕がある靴を履くなどの方法がある。
治療に関する参考文献
1.Costa TPE, João AL, Lencastre A: Retronychia: A paradigm shift?Skin Appendage Disord 6(5):268–271, 2020. doi: 10.1159/000509370
