日光角化症

執筆者:Julia Benedetti, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2021年 12月
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日光角化症は,長年にわたる日光曝露の結果としてしばしば生じる皮膚の細胞(角化細胞)の前がん性変化である。診断は臨床的に行う。治療としては通常,病変に対する治療(lesion-directed therapy)または領域に対する治療(field-directed therapy)が行われる。

日光角化症の有病率は高く,年齢とともに増加する。日光角化症は有棘細胞癌に進行するリスクという点で重要である。個々の日光角化症から有棘細胞癌への進行率の推定値には,医学文献間で大きなばらつきがみられるが,コンセンサスに基づく推定値の大半は約1%未満から約10%の範囲に収まっている。有棘細胞癌に進行しない日光角化症は,日光角化症として消退または遷延することがある。消退する病変は後に再発することがある。

長年にわたる日光曝露以外にも,日光角化症の危険因子としては,高齢,基礎にある免疫抑制,金髪または赤毛,青い眼,スキンタイプI型またはII型などがある(Fitzpatrickのスキンタイプ分類の表を参照)。

表&コラム
表&コラム

日光角化症の症状と徴候

日光角化症では,しばしば鱗屑が皮膚表面に強く付着していて,ときに視診よりも触診の方が検出が容易であることもある。日光角化症の病変は肥厚または肥大した外観を呈することがあり,ときに皮角(cutaneous horn)を形成する。色調はピンク色,赤色,または頻度は低いが灰色もしくは褐色である。病変は露光部(例,禿髪部の頭皮,顔面,頸部外側,上肢または下肢の遠位部)に好発する。口唇がびまん性に侵された場合は日光口唇炎と呼ばれる。

日光角化症の診断

  • 診察

日光角化症の診断は,しばしば視診および触診所見に基づいて下され,触診した病変は粗造で鱗屑を認める。日光角化症は,加齢とともに数が増え,大きくなる脂漏性角化症と鑑別する必要がある。脂漏性角化症は,ろう様で皮膚面に張り付いているように見える傾向があり,日光角化症に似た外観を呈することもある。通常は,注意深い視診により鑑別につながる病変の特徴が明らかとなる。日光角化症は,鱗屑および紅斑部の粗いザラついた感触によっても脂漏性角化症と鑑別することができる。日光角化症とは異なり,脂漏性角化症は露光部以外の皮膚にも生じ,前がん病変ではない。

日光角化症の治療

  • 病変に対する治療または領域に対する治療

治療法は病変の数,部位,光線傷害の程度,および患者の希望に依存するが,典型的には以下の2種類に分類される:

  • 病変に対する治療

  • 領域に対する治療

病変に対する治療(lesion-directed therapy)では,個々の病変を物理的な手法で除去する。日光角化症の病変が少数しかない場合,または患者がそれ以外の治療選択肢を受けられないか受けることを望まない場合に,この選択肢がより望ましいものとなりうる。凍結療法(液体窒素で凍結する)は,病変に対する治療で最も一般的な方法である。掻爬(キュレットを用いる)が代替となる。病変に対する治療には,診察室での単回の処置で済むという利点があるが,無症候性の変化に対応できない場合があり,瘢痕形成のリスクが高い。

領域に対する治療(field-directed therapy)では,より大きな範囲の影響を受けている複数の領域に外用療法を適用する。通常はフルオロウラシル(5-FU)クリームおよびイミキモドクリームの外用が第1選択の薬物治療である。代替薬としては,ジクロフェナクゲルやチルバニブリン(tirbanibulin)軟膏がある。

  • 5-FUはチミジル酸合成酵素を阻害することで,DNA合成を制限し,損傷した細胞を死滅させる。5-FU 5%クリームを1日2回,3~4週間塗布する。最近の研究により,5-FUが日光角化症に対して最も効果的な治療法であることが示されている(1)。初期のデータから,5-FU 5%クリームと0.005%カルシポトリオールの併用により5-FUの効力が高まる可能性が示唆されている(2)。

  • イミキモドは,局所でのサイトカイン誘導を刺激して,局所的に強い炎症反応を引き起こす免疫応答調節薬である。イミキモド5%クリームを週2回,16週間連続で塗布する。

  • ジクロフェナクは,シクロオキシゲナーゼとアラキドン酸カスケードのアップレギュレーションの両方を阻害する非ステロイド系抗炎症薬である。ジクロフェナク3%(2.5%ヒアルロン酸ゲル中)を1日2回,60~90日間塗布する。効力の低さから使用は限られている。

  • チルバニブリン(tirbanibulin)は,チューブリン重合およびSrcキナーゼシグナルを阻害することで損傷した細胞に細胞死を誘導する微小管阻害薬である。チルバニブリン(tirbanibulin)1%軟膏を1日1回5日間塗布するが,再発率が高いため,コースの延長が必要になることがある。

これらの外用薬は,治療中および通常は治療後も1~2週間にわたり,炎症(しばしば発赤と鱗屑を伴う)および疼痛を引き起こす可能性がある。

別の種類の領域に対する治療として光線力学療法がある。光感受性物質(例,アミノレブリン酸,アミノレブリン酸メチル)を塗布した後,光線傷害を来した皮膚に選択的に作用する特定波長の光線を照射する。領域に対する外用療法と同様に,光線力学療法も治療中に発赤および鱗屑を引き起こすことがある。複数回の治療が必要になる場合がある。

治療への反応がみられない場合は,有棘細胞癌を除外するために生検を考慮すべきである。

紫外線防御対策の重要性に関する患者教育も行うべきである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Jansen M, JKessels J, Nelemans P, Kouloubis N, et al: Randomized Trial of Four Treatment Approaches for Actinic Keratosis.N Engl J Med 380(10):935–946, 2019. doi: 10.1056/NEJMoa1811850

  2. 2.Cunningham TJ, Tabacchi M, Eliane JP, et al: Randomized trial of calcipotriol combined with 5-fluorouracil for skin cancer precursor immunotherapy.J Clin Invest 127(1):106–116, 2017.doi: 10.1172/JCI89820

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