アニサキス症

(ニシン虫症;タラ虫症;アザラシ虫症)

執筆者:Chelsea Marie, PhD, University of Virginia;
William A. Petri, Jr, MD, PhD, University of Virginia School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 9月
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アニサキス症は,Anisakis simplexならびに他のアニサキス種であるPseudoterranova decipiensおよびContracecum osculatumの幼虫による感染症である。生または加熱調理不十分な海水魚またはイカの摂食により感染し,幼虫が消化管の粘膜に潜り込み,腹痛のほか,ときに嘔吐を引き起こす。診断および治療(幼虫の除去)には内視鏡が使用される。

寄生虫感染症へのアプローチも参照のこと。)

アニサキス(Anisakis)は海洋哺乳類の消化管に生息する寄生虫である。排出された虫卵は孵化して自由遊泳性の幼虫となり,魚およびイカに摂取される;ヒトはこれらの中間宿主を生または加熱調理不十分な状態で摂食することにより感染する。したがって,感染は日本,朝鮮半島,および伝統的に生魚を摂取するその他の地域で特に多くみられる。幼虫はヒトの胃および小腸に潜り込む。米国およびその他の地域で製造された,アニサキスの幼虫を死滅させる条件下で魚を冷凍した市販の寿司は安全である。

アニサキス症の症状と徴候

胃アニサキス症の一般的な症状としては,幼虫摂取から数時間以内に起こる腹痛,悪心,および嘔吐などがある。小腸への感染はよりまれであるが,感染の結果炎症性の腫瘤が形成されることがあり,1~2週間後にクローン病に似た亜急性の症状が発生することがある。消化管内腔外に異所性感染が起こることがまれにある。

アニサキス症は典型的には数週間で自然に消失するが,まれに数カ月間持続する。

アニサキス症の診断

  • 上部消化管内視鏡検査

アニサキス症は,上部消化管内視鏡検査中に虫体を観察することで診断でき,また患者が咳をしたときに排出された幼虫が検査に出されることがある。便検査は役に立たない。一部の国では血清学的検査が利用できる。

アニサキス症の治療

  • 幼虫の内視鏡的摘出

  • 場合によりアルベンダゾール

幼虫の内視鏡的摘出で根治できる。

アニサキス症が疑われる症例には,アルベンダゾール400mg,経口,1日2回,6~21日間による治療が効果的な場合があるが,データは限られている。

アニサキス症の予防

適切な条件下での凍結が寿司によるアニサキス症を予防する鍵である。アニサキス(Anisakis)の幼虫は以下により死滅する:

  • 63℃以上(145° F以上)の温度で調理

  • −20℃(−4° F)以下の温度で7日間冷凍

  • −35℃(−31°F)以下の温度で固体になるまで冷凍し,この温度で15時間以上,または−20℃(−4°F)で24時間保存

幼虫は酢漬け,塩漬け,および燻製では感染力を失わない可能性がある。

要点

  • ヒトへのアニサキス(Anisakis)の感染は中間宿主(魚またはイカ)を生または加熱調理不十分な状態で摂取することで生じ,そのためアニサキス症は,日本を始めとする伝統的に魚の生食の習慣がある文化圏でよくみられる。

  • アニサキス症の典型的な症状としては,幼虫の摂取後数時間以内に起こる腹痛,悪心,嘔吐などがある;小腸では炎症性の腫瘤が形成され,クローン病に似た症状が生じることがある。

  • アニサキス症は典型的には数週間で自然に消失するが,まれに数カ月間持続する。

  • アニサキス症の診断には上部消化管内視鏡検査を行う。

  • 幼虫の内視鏡的摘出は根治可能である。

  • 適切な条件下で凍結することで寿司によるアニサキス症を予防できる。

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