無鉤条虫(ウシ条虫)感染症

執筆者:Chelsea Marie, PhD, University of Virginia;
William A. Petri, Jr, MD, PhD, University of Virginia School of Medicine
レビュー/改訂 2021年 12月
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無鉤条虫(Taenia saginata)(ウシ条虫[beef tapeworm])に感染すると,軽度の消化管障害を来すことがあり,または運動性を有する片節が便中に排出されることがある。プラジカンテルまたはニクロサミド(niclosamide)で治療する。

無鉤条虫(T. saginata)の中間宿主はウシである。ヒトへの感染は以下によって起こる:

  • 生または加熱調理不十分な牛肉中の嚢虫(幼虫形態)を摂取すること

幼虫は約2カ月で成虫に成熟し,成虫は数年にわたり生存可能であるが,通常,成虫は1匹または2匹しかみられない。無鉤条虫(T. saginata)の成虫は通常,体長4~12mであるが,最長で25mに及ぶこともある。

無鉤条虫(T. saginata)感染症は世界中でみられるが,特に熱帯および亜熱帯地域であるアフリカ,中東,東欧,メキシコ,および南米の牧牛地域で発生する。感染は米国のウシではまれであり,連邦政府の査察によりモニタリングされている。

無鉤条虫感染症の症状と徴候

患者は無症状のこともあれば,心窩部不快感,悪心,鼓腸,下痢,または空腹時の胃痛などの軽度の消化器症状がみられることもある。運動性を有する片節の排出が,しばしばそれ以外は無症状の患者が受診するきっかけとなる。

無鉤条虫感染症の診断

  • 便の鏡検による虫卵および片節の確認

便中に片節および虫卵がないか確認すべきであり,虫卵はセロファンテープ肛囲検査法でも検出されることがある。無鉤条虫(T. saginata)の虫卵は,有鉤条虫(T. solium)やアジア条虫(T. asiatica)の虫卵と区別できず,これらの3つの条虫による腸管感染症の臨床的特徴および管理も互いに類似している。

無鉤条虫感染症の治療

  • プラジカンテル

  • あるいは,ニクロサミド(niclosamide)(米国外)

無鉤条虫(T. saginata)感染症の治療は,プラジカンテル5mg/kgまたは10mg/kgの単回経口投与による。

代替薬のニクロサミド(niclosamide)(米国では入手不能)は,2gを錠剤4錠(各500mg)として単回投与し,1錠ずつ噛み砕き少量の水で飲み込ませる。小児でのニクロサミド(niclosamide)の用量は50mg/kg(最大2g),単回投与である。

治療の1カ月後および3カ月後に便中に条虫(Taenia)の卵が同定されなければ,治療成功と判断できる。

牛の塊肉は最も厚い部分に入れた調理用温度計で測定して63℃(145°F)以上まで加熱調理し,切り分けるか,食べる前に3分間放置することで,無鉤条虫(T. saginata)の感染を予防することができる。牛ひき肉は71℃(160°F)以上まで加熱調理すべきである。牛ひき肉には放置時間は必要ない。

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