B型肝炎(HepB)ワクチン

執筆者:Margot L. Savoy, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University
レビュー/改訂 2023年 7月
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B型肝炎ワクチンは,所定回数の接種を完了した場合,感染予防またはB型肝炎の発症予防において80~100%の効果を示す。

詳細については,Hepatitis B Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Hepatitis B Vaccinationを参照のこと。2023年の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更点の概要については,Advisory Committee on Immunization PracticesのRecommended Adult Immunization Schedule, United States, 2023: Changes to the 2023 Adult Immunization Scheduleを参照のこと。

予防接種の概要も参照のこと。)

B型肝炎ワクチンの製剤

B型肝炎ワクチンは,組換えDNA技術を用いて生産されている。一般的なパン酵母にB型肝炎表面抗原(HBs抗原)の遺伝子を含むプラスミドを挿入すると,HBs抗原を産生するようになる。得られたHBs抗原を回収して精製する。この工程では感染性のあるウイルスDNAや完全なウイルス粒子が産生されないため,このワクチンがB型肝炎ウイルスの感染を引き起こすことはない。

いくつかのワクチンが利用できる。単一抗原で構成される2つのワクチン,Engerix-BおよびRecombivax HBには,アルミニウムが添加されている。Heplisav-B(HepB-CpG)には,免疫系を刺激するアジュバントとしてCpG(シチジン-リン酸-グアノシン)オリゴデオキシヌクレオチド(CpG-ODN)が使用されている。PreHevbrioには,B型肝炎ウイルスの小(S),中(プレS2),大(プレS1)サイズの表面抗原が含まれている。A型肝炎ワクチンとB型肝炎ワクチンを混合したワクチンもある。

B型肝炎ワクチンの適応

HepBワクチンは,ルーチンの小児予防接種に組み込まれている(CDC: Child and Adolescent Immunization Schedule by Ageを参照)。

HepBワクチンは,19歳~59歳までの全てのワクチン未接種者にも適応となる(CDC: Adult Immunization Schedule by Ageを参照)。

HepBワクチンはまた,ワクチン未接種の60歳以上の成人で以下に該当する場合にも適応となる:

  • B型肝炎予防を望んでいる

  • 長期間にわたり1人の相手だけと性的接触をもつのではない,性的に活動的な生活習慣(例,過去6カ月間でセックスパートナーが複数いた)

  • 性感染症の評価または治療の必要性

  • 現在または最近の違法注射薬物の使用

  • 男性間での性行為

  • 血液をはじめとする感染を媒介しうる体液に曝露する可能性がある業務への従事(例,医療,介護,公衆安全関連の従事者)

  • 60歳未満での糖尿病(診断後すぐに可能),ときに60歳以上での糖尿病(感染のリスク,感染時に重度の影響が生じるか,ならびにワクチン接種に対して十分な免疫応答が得られるかに関する医師患者間の共同での臨床的意思決定に基づく)

  • 末期腎不全(例,血液透析を受けている)

  • HIV感染症

  • 慢性肝疾患(例,C型肝炎,肝硬変,脂肪性肝疾患,アルコール性肝疾患,または自己免疫性肝炎を有するか,アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]値またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]値が正常上限の2倍を超える患者)

  • B型肝炎表面抗原(HBs抗原)陽性者との家庭生活上の接触または性的接触

  • 流行地域への旅行

  • 性感染症の治療,HIV感染症の検査および治療,薬物乱用の治療および予防診療,注射薬物使用者もしくは男性と性行為をする男性に対する診療,または発達障害もしくは末期腎不全のある患者(長期間,血液透析を受けている人など)に対する診療を提供する施設または矯正施設での(患者,在住者,従業員としての)在院期間

A型肝炎・B型肝炎混合ワクチンは,18歳以上でA型肝炎またはB型肝炎ワクチンいずれかの適応があり,かつ以前にこれらの成分を含有するワクチンの接種を受けたことがない個人に使用することができる。

B型肝炎ワクチンの禁忌および注意事項

B型肝炎ワクチンの主な禁忌は以下の通りである:

  • 以前の接種後に,またはパン酵母もしくはワクチン成分に対して,重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

HepBワクチンの主な注意事項は以下の通りである:

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の疾患が認められる(その疾患が消失するまで接種を延期する)

B型肝炎ワクチンの用量および用法

Engerix-BおよびRecombivax HBの用量は,20歳未満では0.5mLの筋肉内接種,成人(20歳以上)では1mLの筋肉内接種である。Heplisav-B(HepB-CpG)の用量は,18歳以上の成人で0.5mLの筋肉内接種である。PreHevbrioの用量は,18歳以上の成人で1.0mLの筋肉内接種である。

小児には一般的に,計3回のスケジュール(0カ月,1~2カ月,6~18カ月)で接種する。

出生時に接種を受けなかった乳児には,可及的速やかに一連の接種を開始すべきである。

HepBワクチンの接種を受けていない全ての小児には,11歳または12歳時に接種すべきである。3回接種のスケジュールを採用し,1回目と2回目の接種間隔は4週間以上とし,3回目は2回目の4~6カ月後に接種する。ただし,Recombivax HBでは2回接種のスケジュールが可能であり,2回目の接種は1回目の4~6カ月後に行う。

ワクチン接種歴のない19~59歳の成人は,2回または3回,あるいは4回の接種を完了すべきである。成人に対するEngerix-B,PreHevbrio,またはRecombivax HBの通常の接種スケジュールでは,4週間の間隔を空けて2回の接種を行い,2回目の4~6カ月後に3回目を接種する。Heplisav-B(HepB-CpG)は4週間以上空けて2回接種し,3回接種する別のHepBワクチンの代用とすることもある。

Heplisav-B(HepB-CpG)およびPreHevbrioは,妊娠中の使用に関する安全性データがないため,妊娠中に使用してはならない。

血液透析を受けているワクチン未接種の成人には,Engerix-Bを(通常の成人用量である1mLではなく2mLで)0,1,2,6カ月の4回スケジュールで,あるいはRecombivax HB Dialysis Formulation(1mL = 40μg)を0,1,6カ月の3回スケジュールで接種すべきである。

ワクチン接種を一度も受けていないか完了していない個人には,不足分を接種して計3回のHepB予防接種を完了すべきである。1回目の1カ月後に2回目を接種し,2回目から2カ月以上の間隔を空けて(かつ1回目から4カ月以上が経過してから)3回目を接種する。A型肝炎・B型肝炎混合ワクチンを使用する場合は,0カ月,1カ月,6カ月のスケジュールで3回接種するか,または0日目,7日目,21~30日目と12カ月時の追加接種で計4回接種する。以前の一連の接種の途中で追跡不能となっていた場合は,それらの接種を再開する必要はない。

B型肝炎ワクチンの有害作用

アナフィラキシーなどの重篤な有害作用はまれである。

軽度の副反応として,注射部位の疼痛のほか,ときに約38℃への体温上昇などがみられる。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): Hepatitis B ACIP Vaccine Recommendations

  2. ACIP: Recommended Adult Immunization Schedule, United States, 2023 including Changes to the 2023 Adult Immunization Schedule

  3. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Hepatitis B Vaccination: Information for Healthcare Providers

  4. European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC): Hepatitis B: Recommended vaccinations

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