麻疹・ムンプス(流行性耳下腺炎)・風疹混合(MMR)ワクチン

執筆者:Margot L. Savoy, MD, MPH, Lewis Katz School of Medicine at Temple University
レビュー/改訂 2023年 7月
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麻疹・ムンプス(流行性耳下腺炎)・風疹混合(MMR)ワクチンは,3つの感染症(麻疹ムンプス風疹)全てを効果的に予防する。過去のデータから,米国の予防接種スケジュールに従ってMMRワクチンの接種を受ければ,生涯にわたり予防効果が維持されると考えられている。

詳細については,MMR Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine Recommendations (Measles, Mumps and Rubella)およびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Measles Mumps, and Rubella (MMR) Vaccinationを参照のこと。

予防接種の概要も参照のこと。)

MMRワクチンの製剤

MMRワクチンは,ニワトリ胚細胞培養により産生される麻疹およびムンプスウイルスの弱毒生ウイルスを含有する。さらに,ヒト二倍体肺線維芽細胞で産生される弱毒生風疹ウイルス(風疹生ウイルスワクチン)も含有する。

MMRワクチンと水痘ワクチンは,混合ワクチン(麻疹ウイルス・ムンプス[流行性耳下腺炎]ウイルス・風疹ウイルス・水痘ウイルス混合ワクチン[MMRVワクチン])として使用可能である。

MMRワクチンの適応

MMRワクチンは,ルーチンの小児予防接種に組み込まれている(CDC: Child and Adolescent Immunization Schedule by Ageを参照)。

1957年以降に生まれた全ての成人は,以下のいずれかに該当しない限り,このワクチンの接種を1回受けるべきである(CDC: Adult Immunization Schedule by Ageを参照):

  • MMRワクチンによる予防接種の記録が1回でもある

  • これら3疾患に対する免疫の獲得を示す臨床検査所見がある

  • このワクチンに対する禁忌がある

医師による疾患の診断記録のみでは,麻疹,ムンプス(流行性耳下腺炎),または風疹に対する免疫の成立を示す証拠として不十分である。

パール&ピットフォール

  • 疾患の診断記録のみでは,麻疹,ムンプス(流行性耳下腺炎),または風疹に対する免疫の成立を示す証拠として不十分である。

曝露の可能性が高い以下に該当する成人には,MMRワクチンの2回目の接種(あるいは,接種歴がない場合は28日以上の間隔を空けた2回の接種)が推奨される:

  • 大学をはじめとする高校以降の教育機関に通う学生

  • 1957年以降に出生した免疫獲得の証拠がない医療従事者

  • 国際旅行者

  • HIV感染患者で,CD4陽性細胞が15%以上かつCD4陽性細胞数が200/μL以上の状態が6カ月以上継続し,かつ麻疹,ムンプス(流行性耳下腺炎),または風疹に対する免疫獲得の証拠がない場合

1957年より前に出生した人は一般に免疫があると考えられている。しかしながら,そのような人であっても免疫獲得の証拠がなく医療施設で働いている場合は(患者の治療にあたっているかどうかに関係なく)ワクチンの接種を考慮すべきである。MMRは2回の接種が行われる(風疹の免疫のみが必要な場合は1回)。

ムンプス(流行性耳下腺炎)を含むワクチンの接種歴が2回以下で,ムンプスのアウトブレイク中にムンプスのリスクが高いことが公衆衛生当局によって確認された生後12カ月以上の人には,MMRワクチンを1回接種すべきである。

妊娠中の風疹は,胎児に対して重い悪影響(例,流産,複数の先天異常)を及ぼす可能性があるため,妊娠可能年齢の女性は全員,産まれた年に関係なく,風疹の免疫に関するスクリーニングを受けるべきである。免疫の獲得を示す所見がない場合,妊娠していない女性はワクチン接種を受けるべきである。免疫の獲得を示す所見がない妊婦は,出産が終わってから,医療施設を退院するまでに,ワクチン接種を受けるべきである。

1963年から1967年までに不活化(死菌)麻疹ワクチンまたは種類が不明の麻疹ワクチンの接種を受けた個人は,MMRワクチン2回の再接種を受けるべきである。

1979年以前に,不活化ムンプス(流行性耳下腺炎)ワクチンまたは種類が不明のムンプスワクチンの接種を受け,ムンプス曝露のリスクが高い個人には,MMRワクチン2回の再接種を勧めるべきである。

MMRワクチンの禁忌および注意事項

MMRワクチンの禁忌としては以下のものがある:

  • 以前の接種後に,またはフラジオマイシンなどのワクチン成分に対して,重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)を起こしたことがある

  • 重度の原発性または後天性免疫不全症(例,白血病,リンパ腫,固形腫瘍,骨髄またはリンパ系を侵す腫瘍,AIDS,重症HIV感染症,化学療法,免疫抑制薬の長期使用)が判明している

  • 妊娠(妊娠が終了するまでワクチン接種を延期する)

  • 遺伝性の先天性免疫不全症を有する第1度近親者(両親または同胞)がいる(ワクチン接種者の免疫能が正常であることが判明している場合を除く)

HIV感染症は,易感染状態が重度の場合(CDCの易感染状態カテゴリー3かつCD4陽性細胞 < 15%―またはCD4陽性細胞数 <200/μL)にのみ禁忌となり,易感染状態が重度でなければ,野生型麻疹ウイルスのリスクが生ワクチンからの麻疹感染リスクを上回る。

ワクチン接種を受けた女性は,接種その後少なくとも28日間は妊娠を避けるべきである。ワクチンウイルスは,妊娠初期の胎児に対して感染能を有している可能性がある。このワクチンが先天性風疹症候群を引き起こすことはないが,胎児障害のリスクが3%以下と推定されている。

MMRワクチンの注意事項としては以下のものがある:

  • 発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(消失するまで接種を延期する)

  • 抗体を含有する血液製剤の投与を最近(過去11カ月以内)受けた(具体的な期間は製品毎に異なる)

  • 血小板減少症または血小板減少性紫斑病の既往がある

結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の感染者では,MMRワクチンにより一時的にツベルクリン反応が抑制されることがあり,MMRVワクチンにもその可能性がある。したがって,この検査が必要な場合は,ワクチン接種の前または同時に施行することができる。すでにワクチン接種を受けている場合は,ワクチン接種の4~6週間後まで検査を延期すべきである。

MMRワクチンの用量および用法

MMRワクチンの用量は0.5mLの皮下接種である。MMRワクチンは,生後12~15カ月時に1回および4~6歳時に1回の計2回,ルーチンに接種する。

MMRワクチンの有害作用

このMMRワクチンは,軽度または不顕性の非伝染性感染症を引き起こす。症状として38℃を超える発熱があり,ときに続いて発疹がみられる。中枢神経系の反応は非常にまれであり,このワクチンは自閉症を引き起こさない(MMRワクチンと自閉症およびワクチンの安全性を参照)。

成人(通常は女性)ではときに,風疹成分により疼痛を伴う関節腫脹が引き起こされることがある。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): MMR ACIP Vaccine Recommendations (Measles, Mumps and Rubella)

  2. Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Measles Mumps, and Rubella (MMR) Vaccination: Information for Healthcare Providers

  3. European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC): Measles: Recommended vaccinations

  4. European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC): Mumps: Recommended vaccinations

  5. European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC): Rubella: Recommended vaccinations

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