活性化プロテインC(APC)抵抗性第V因子

執筆者:Michael B. Streiff, MD, Johns Hopkins University School of Medicine
レビュー/改訂 2023年 8月
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第V因子の突然変異は,活性化プロテインCによる正常な開裂および不活化に対する抵抗性を生じさせ,静脈血栓症の素因にもなる。

血栓性疾患の概要も参照のこと。)

活性化プロテインC(APC)は,プロテインSと結合して第Va因子および第VIIIa因子を分解し,それによって凝固を抑制する(血液凝固経路の図を参照)。 第V因子に起こるいずれの変異もAPCによる不活化に対する抵抗性を生じさせ,血栓症への傾向を増大させる。

これらの変異の中で第V因子Leiden変異が最もよくみられる。ホモ接合体の変異は,ヘテロ接合体の変異よりも血栓症のリスクを高める。

血液凝固経路

単一遺伝子異常としての第V因子Leiden変異は,米国の白人の約5%にみられるが,アジアおよびアフリカ系集団ではまれである(1)。「特発性」静脈血栓症の患者では20~60%(患者選択に依存)にみられる(2)。

総論の参考文献

  1. 1.Ridker PM, Miletich JP, Hennekens CH, Buring JE.Ethnic distribution of factor V Leiden in 4047 men and women.Implications for venous thromboembolism screening. JAMA 1997;277(16):1305-1307.

  2. 2.Eichinger S, Weltermann A, Mannhalter C, et al.The risk of recurrent venous thromboembolism in heterozygous carriers of factor V Leiden and a first spontaneous venous thromboembolism. Arch Intern Med 2002;162(20):2357-2360.doi:10.1001/archinte.162.20.2357

APC抵抗性第V因子の診断

  • 血漿凝固試験

診断は以下に基づく:

  • 活性化プロテインC抵抗性検査

  • DNAを用いた検査による第V因子遺伝子の遺伝子変異解析

活性化プロテインC抵抗性検査は,第V因子Leiden変異の有無を確認するスクリーニング検査である。活性化プロテインCを患者血漿の5倍希釈液に加え,凝固時間を測定する。第V因子Leiden変異による抵抗性を有するホモ接合体またはヘテロ接合体の患者では,患者の第V因子が活性化プロテインCによる開裂に抵抗性を示すため,凝固時間の延長が有意に短縮する。

その後,DNAを用いた検査により第V因子Leiden変異を確認する。

APC抵抗性第V因子の治療

  • 抗凝固療法

第V因子Leiden変異を含む血栓形成傾向の患者における静脈血栓塞栓症の治療に対して,直接作用型経口抗凝固薬には少なくともワルファリンと同等の効果がある(1)。

治療に関する参考文献

  1. 1.Campello E, Spiezia L, Simion C, et al.Direct Oral Anticoagulants in Patients With Inherited Thrombophilia and Venous Thromboembolism: A Prospective Cohort Study. J Am Heart Assoc 2020;9(23):e018917.doi:10.1161/JAHA.120.018917

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