副甲状腺は典型的には4つある。その名称から示唆されるように,頸部の甲状腺付近に位置しているが,存在する数や特に位置にはかなりの多様性がみられる。これらの豆粒大の腺は,体内のカルシウム濃度を維持する上で極めて重要な役割を果たしている。(高カルシウム血症および低カルシウム血症も参照のこと。)
副甲状腺細胞は,副甲状腺ホルモン(PTH)と呼ばれるポリペプチドホルモンを産生,貯蔵,分泌する。PTHにはいくつかの作用があるが,おそらく最も重要な作用は以下のものである:
血清カルシウム濃度の上昇
副甲状腺細胞は血清カルシウム濃度の低下を感知し,血清カルシウム濃度の低下から数分以内に,あらかじめ合成していたPTHを循環血液中に放出する。
PTHは以下の機序によって速やかに血清カルシウム濃度を上昇させる:
腎臓および腸管でのカルシウム吸収を増加させる
骨吸収を刺激することで,カルシウムとリンを速やかに骨から動員する
腎臓からのカルシウム排泄は,一般にナトリウム排泄と並行して進行し,近位尿細管でのナトリウム輸送を支配するものと同じ数多くの因子から影響を受ける。一方,PTHはナトリウムとは無関係に遠位尿細管でのカルシウム再吸収を増加させる。
PTHには以下の働きもある:
腎臓でのリンの再吸収を減少させ,それにより腎臓からのリンの排泄を促す
PTHはこの機序によってカルシウム濃度を上昇させると同時に血漿リン濃度を低下させることで,リン酸カルシウムの体組織への沈着を防いでいる。
PTHはまた,ビタミンDから最も活性の高いカルシトリオール(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール)への変換を刺激することによっても血清カルシウム濃度を上昇させる。この型のビタミンDは食物中カルシウムの腸管吸収率を高める。カルシウム吸収の増加にもかかわらず,長期にわたりPTHの分泌増加が続くと,骨芽細胞機能の抑制と破骨細胞活性の促進により,全体としては一般に骨吸収が進行する。PTHとビタミンDは,どちらも骨成長および骨リモデリングの重要な調節因子として機能する(ビタミンDの欠乏症および依存症も参照)。
肝臓においてインタクトPTHのペプチドがアミノ末端側とカルボキシ末端側の断片に切断されることで,PTHは循環血液中から速やかに除去される。これらの断片はその後,腎臓から排泄される。これらの断片に対するラジオイムノアッセイは,原発性副甲状腺機能亢進症の診断および腎疾患に続発する副甲状腺機能亢進症のモニタリングに利用できる最初の検査であったが,PTH分解速度はカルシウム濃度によって変化し,進行した慢性腎臓病があると腎排泄が低下する可能性があるため,インタクトPTH分子を測定する第2世代のアッセイが用いられている。PTHは尿中のサイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)を増加させる。偽性副甲状腺機能低下症の診断では,腎性cAMPの排泄を測定する。