必須脂肪酸欠乏症

執筆者:John E. Morley, MB, BCh, Saint Louis University School of Medicine
レビュー/改訂 2021年 7月
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必須脂肪酸(EFA)欠乏症はまれであり,EFAを欠く食事を与えられた乳児に最もよく起こる。徴候には,鱗状の皮膚炎,脱毛,血小板減少,および小児で知的障害などがある。診断は臨床的に行う。食事によるEFAの補充により,欠乏症は回復する。

    低栄養の概要も参照のこと。)

    EFAであるリノール酸およびリノレン酸は,皮膚および細胞膜の完全性の維持やプロスタグランジンおよびロイコトリエンの合成など,多くの生理的過程に必要な他の脂肪酸を体内合成するための基質である。例えば,EFAから合成されるエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸は,脳および網膜の重要な成分である。

    EFA欠乏症が生じるには,食事からの摂取量が非常に少ない必要がある。少量のEFAであっても,EFA欠乏症の予防が可能である。牛乳はリノール酸をヒトの乳の約25%しか含まないが,通常量を摂取した場合には,EFA欠乏症を予防するのに十分な量のリノール酸が含まれている。食料不安の割合が高い国の多くで,総脂肪摂取量が非常に低いことがあるが,その脂肪はしばしば野菜由来であり,大量のリノール酸およびEFA欠乏の予防に十分な量のリノレン酸が含まれている。

    スキムミルク人工乳など,リノール酸の少ない人工乳を与えられている乳児はEFA欠乏症を発症することがある。以前は,長期にわたる完全静脈栄養(TPN)に脂肪が含まれていない場合に,EFA欠乏症を来すことが多かった。しかし現在は,大半のTPN液にはEFA欠乏症を予防するために脂肪乳剤が含まれている。脂肪吸収不良患者または代謝要求が増大している患者(例,手術,多発外傷,または熱傷のため)では,臨床徴候がなくても,臨床検査によるEFA欠乏の所見が認められることがある。

    EFA欠乏症による皮膚炎は全身性で鱗状であり,乳児では先天性魚鱗癬に類似することがある。皮膚炎は,皮膚からの水分喪失を増大させる。

    脂肪酸欠乏症の診断は通常臨床的に行うが,大きな研究施設では今や臨床検査が可能となっている。

    脂肪酸欠乏症の治療は食事によるEFA摂取から成り,欠乏症を回復させる。

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