ビタミンK1(フィロキノン)は,多量でも,経口摂取する場合は毒性がない。しかし,メナジオン(合成の水溶性ビタミンK前駆体)は中毒を引き起こすことがあり(乳児で溶血性貧血,高ビリルビン血症,黄疸,核黄疸の発症が報告されている),ビタミンK欠乏症の治療に用いるべきではない。
ビタミンK1(フィロキノン)は食物由来のビタミンKである。供給源としては,緑色の葉野菜(特にコラード,ホウレンソウ,およびサラダ用の緑野菜),大豆,植物油などがある。食物中の脂肪によりその吸収が高まる。乳児用の人工乳には,ビタミンKが添加されている。新生児期を過ぎると,消化管内の細菌がビタミンKを合成し,それが体内に吸収されて利用される。
ビタミンK2とは,腸管内の細菌により合成される化合物群(メナキノン)を指す;合成される量ではビタミンKの必要量は満たされない。
ビタミンKは肝臓における凝固第II(プロトロンビン),VII,IX,X因子の生成を制御している(ビタミンの供給源,機能,および作用の表を参照)。ビタミンKに依存するその他の凝固因子はプロテインC,プロテインS,およびプロテインZであり,プロテインCとプロテインSは抗凝固薬である。代謝経路によりビタミンKが保たれている。ビタミンKが凝固因子の生成に関与すると,反応産物であるビタミンKエポキシドが,活性型であるビタミンKハイドロキノンに酵素的に変換される。
ビタミンK依存性タンパク質の作用には,カルシウムが必要である。ビタミンK依存性タンパク質であるオステオカルシンおよびマトリクスγ-カルボキシ-グルタミル(Gla)タンパク質は,骨および他の組織で重要な役割を担っている可能性がある。ビタミンK製剤は,日本およびその他の国で,骨粗鬆症に対する一般的な治療薬である。
ビタミンK中毒はまれであるが,最もよくみられるのは人工乳栄養児においてである。ビタミンK中毒の影響としては,溶血性貧血や黄疸などがある。新生児の黄疸は核黄疸を引き起こすことがある。
(ビタミンの概要も参照のこと。)