物質・医薬品誘発性精神症

執筆者:Carol Tamminga, MD, UT Southwestern Medical Dallas
レビュー/改訂 2022年 4月 | 修正済み 2022年 12月
意見 同じトピックページ はこちら

物質・医薬品誘発性精神症(substance- or medication-induced psychotic disorder)は,せん妄のない状態において,物質の直接的作用または物質からの離脱による幻覚および/または妄想の存在により,特徴づけられる。

物質誘発性精神症のエピソードは,救急部門および電話緊急相談センターでよくみられる。多数の誘発物質(アルコールアンフェタミン類大麻コカイン幻覚剤オピオイドフェンシクリジン[PCP],催眠鎮静薬など)がある。物質誘発性精神症とみなすには,幻覚および妄想が単純な物質中毒または離脱で典型的にみられるものより過剰である必要があるが,中毒または離脱症状が同時にみられていてもよい。

症状の持続は短時間のことが多く,原因薬物が排泄されれば間もなく消失するが,アンフェタミン類,コカイン,またはPCPにより誘発された精神症は何週間も持続することがある。前駆期または早期統合失調症の若年患者には精神症を誘発する物質の使用者が含まれていることから,徹底的な病歴聴取を行うことが重要であるが,急性精神症の原因を物質使用のみと結論する前に過去に精神症状がみられた証拠がないか検索することが特に重要である。

統合失調症および関連症群に関する序論も参照のこと。)

治療

  • 落ち着いた環境

  • しばしばベンゾジアゼピン系薬剤または抗精神病薬

物質誘発性精神症の大半において,原因物質の使用を中止し,抗不安薬(例,ベンゾジアゼピン系薬剤)または抗精神病薬を投与することが効果的である。

アンフェタミンなどのドパミン刺激薬による精神病では,抗精神病薬が最も効果的である。

リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)などの薬物による精神症では,静かな観察のみで十分な場合がある。

作用にドパミンが関与しない物質では,観察のみで足りることもあるが,抗不安薬が有用となることもある。

quizzes_lightbulb_red
Test your KnowledgeTake a Quiz!
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS
医学事典MSDマニュアル モバイルアプリ版はこちら!ANDROID iOS