全般不安症

執筆者:John W. Barnhill, MD, New York-Presbyterian Hospital
レビュー/改訂 2023年 8月
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全般不安症(generalized anxiety disorder)は,複数の活動または出来事に対する過剰な不安や心配がみられる日がみなれない日よりも多い状態が,6カ月以上にわたり認められることを特徴とする。アルコール使用症うつ病,またはパニック症の患者に併発することが多いが,原因は不明である。診断は臨床基準に基づく。治療法としては,行動療法,精神療法,薬物療法,これらの併用などがある。

不安症の概要も参照のこと。)

全般不安症(GAD)は,よくみられる疾患であり,1年間で人口の約3%が罹患する(1)。有病率は男性より女性で2倍高い(2)。本疾患は青年期に発症することが多いが,あらゆる年齢で発症する可能性がある。GADは典型的には慢性に経過し,しばしば有意な機能障害および生活の質の低下を伴う。

総論の参考文献

  1. 1.Kessler RC,  Chiu WT, Demler O, et al: Prevalence, severity, and comorbidity of 12-month DSM-IV disorders in the National Comorbidity Survey Replication.Arch Gen Psychiatry 62(6):617-627, 2005. doi: 10.1001/archpsyc.62.6.617

  2. 2.Wittchen HU, Zhao S, Kessler RC, et al: DSM-III-R generalized anxiety disorder in the National Comorbidity Survey.Arch Gen Psychiatry 1994 May;51(5):355-64. doi: 10.1001/archpsyc.1994.03950050015002

全般不安症の症状と徴候

GAD患者には複数の心配事があり,それらは時間とともに変化することが多い。よくある心配としては,仕事上および家庭内での責任,金銭,健康,安全,車の修理,および雑事などがある。GADでは,単一の心配(例,公共の場で恥をかくこと,汚染されること)だけに焦点が定まらない

経過は通常,変動的かつ慢性である。大半のGAD患者では,うつ病限局性恐怖症社交不安症パニック症などの精神疾患が1つ以上併存する。

全般不安症の診断

  • Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th edition, Text Revision(DSM-5-TR)の診断基準

DSM-5-TRのGADの診断基準を満たすには,複数の活動または出来事(例,仕事および学業の成績)に対する過剰な不安および心配がみられる日がみられない日より多い状態が,6カ月以上にわたり持続していなければならない(1)。

その心配はコントロールするのが難しく,かつ以下の症状のうちの3つ以上を伴っている必要がある:

  • 落ち着きのなさ,緊張感,または感情の高ぶり

  • 疲れやすい

  • 集中困難

  • 易怒性

  • 筋肉の緊張

  • 睡眠障害

精神症状によって,有意な苦痛が生じているか,社会的または職業的機能が有意に損なわれていなければならない。また,不安および心配は物質使用または身体疾患全般(例,甲状腺機能亢進症)によるものであってはならない。

診断に関する参考文献

  1. 1.Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th edition,Text Revision DSM-5-TR.American Psychiatric Association Publishing, Washington, DC, pp 250-254.

全般不安症の治療

  • 抗うつ薬(例,選択的セロトニン再取り込み阻害薬,セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬

  • 抗不安薬(例,ベンゾジアゼピン系薬剤,ブスピロン)

  • 精神療法

GADの治療には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(例,エスシタロプラム)とセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(例,ベンラファキシン)が望ましい薬剤であり,これらの薬剤を使用すれば,典型的には3~6週間後に症状の改善が得られる(1)。低用量から中用量のベンゾジアゼピン系薬剤は不安を直ちに軽減できる可能性があるが,長期使用は身体依存のほか,鎮静,もの忘れ,巧緻運動障害などの様々な有害作用につながる可能性がある。GADの治療戦略の1つとして,ベンゾジアゼピン系薬剤と抗うつ薬の両方の投与を開始するとともに,不安に焦点を絞った精神療法を行うことが挙げられる(ベンゾジアゼピン系薬剤の表を参照)。その後,GADの症状が管理可能になった時点で,ベンゾジアゼピン系薬剤を漸減して低用量で継続するか,投与を中止することができる。

ブスピロンも効果的となりうるが(2),典型的には,用量を推奨範囲の上限まで漸増するまで症状の軽減が得られない。

精神療法(通常は認知行動療法)は,支持的なものと課題解決的なものの両方が可能である(3)。リラクゼーション法,催眠法,運動,睡眠の改善,およびマインドフルネスストレス低減療法もしばしば有用である。

表&コラム
表&コラム

治療に関する参考文献

  1. 1. Kapczinski F,  Lima MS, Souza JS, et al: Antidepressants for generalized anxiety disorder.Cochrane Database Syst Rev (2):CD003592, 2003. doi: 10.1002/14651858.CD003592

  2. 2.Chessick CA, Allen MH,  Thase M, et al: Azapirones for generalized anxiety disorder.Cochrane Database Syst Rev 2006(3):CD006115, 2006. doi: 10.1002/14651858.CD006115

  3. 3.DeMartini J, Patel G, Fancher TL: Generalized anxiety disorder.Ann Intern Med 170(7):ITC49-ITC64, 2019.doi: 10.7326/AITC201904020

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