第3脳神経の疾患では,眼球運動,瞳孔機能,またはその両方が障害される。症状と徴候には,複視や眼瞼下垂,眼球内転,上方視,および下方視の麻痺などがある。瞳孔が侵されていれば,散瞳し,対光反射が障害される。瞳孔が侵されていて,反応がますます低下している場合は,可及的速やかに神経画像検査を施行してテント切痕ヘルニアの有無を確認する。
(神経眼科疾患および脳神経の疾患の概要も参照のこと。)
第3脳神経の疾患の病因
第3脳神経の疾患の症状と徴候
複視および眼瞼下垂(上眼瞼の垂れ下がり)が起こる。患眼は,正面注視時にやや外下方に偏位することがある;内転は遅延し,正中線を超えられないことがある。上方視が障害される。下方視を試みると,上斜筋の作用で眼球がやや内転し,また回転する。
瞳孔は正常または散大している可能性がある;直接または間接対光反射は遅延,または消失している(遠心路障害)。散瞳は初期徴候である可能性がある。
第3脳神経の疾患の診断
臨床的評価
CTまたはMRI
第3脳神経の疾患の鑑別診断としては以下のものがある:
動眼神経線維束を途絶させる中脳病変(Claude症候群,Benedict症候群)
軟膜の腫瘍または感染症
海綿静脈洞疾患(巨大頸動脈瘤,瘻孔,または血栓症)
眼球運動を制限する眼窩内器質性病変(例,眼窩ムコール症)
眼筋ミオパチー(例,甲状腺機能亢進症またはミトコンドリア病による)
神経筋接合部疾患(例,重症筋無力症またはボツリヌス症による)
鑑別は臨床的に行うことができる。眼球突出または眼球陥入,重症眼窩外傷の病歴,または明らかな眼窩炎症は,眼窩内の器質的疾患を示唆する。両側性眼筋麻痺,上方視または外転の麻痺,眼球突出,眼瞼後退,下方注視時の眼瞼の動きの遅れ(Graefe徴候)があり,瞳孔が正常な患者では,バセドウ病眼症(眼窩症)を考慮すべきである。
CTまたはMRIが必要である。散瞳および突発性の重度の頭痛(脳動脈瘤破裂を示唆)がみられる場合,または反応が進行性に低下している(ヘルニアを示唆)場合は,直ちに神経画像検査(CTまたは,可能であればMRI)を施行する。脳動脈瘤破裂が疑われ,CT(またはMRI)で血液が描出されない,あるいはCT(またはMRI)がすぐに利用できない場合は,腰椎穿刺,MRアンギオグラフィー,CT血管造影,脳血管造影など,他の検査が適応となる。海綿静脈洞疾患および眼窩ムコール症は,時宜を逃さず治療するために直ちにMRIを施行する必要がある。
第3脳神経の疾患の治療
原因によって様々
第3脳神経の疾患の治療法は原因によって異なる。
要点
症状および徴候としては,複視,眼瞼下垂,眼球内転障害,上方および下方注視麻痺などがある。
瞳孔に影響がみられる場合は,動脈瘤およびテント切痕ヘルニアを考慮し,瞳孔に影響がみられない場合は,神経の虚血(通常,糖尿病または高血圧に続発するもの)を考慮する。
臨床的評価と神経画像に基づいて他の考えられる原因を除外する;激しい頭痛がある場合や,患者の反応が徐々に低下している場合は,直ちにCT(またはMRI)を施行する。
麻痺の原因になっている疾患を治療する。