疼痛の評価

執筆者:James C. Watson, MD, Mayo Clinic College of Medicine and Science
レビュー/改訂 2022年 3月
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    疼痛の原因,重症度,性質と疼痛が活動,気分,認知,睡眠に及ぼしている影響を評価すべきである。急性疼痛(例,背部痛胸痛)の原因の評価は,慢性疼痛のそれとは異なる。

    疼痛の概要も参照のこと。)

    病歴聴取では,疼痛に関する以下の情報を尋ねるべきである:

    • タイミング(発症,持続性[連続的か間欠的か],変動のパターンおよび程度,寛解の頻度,持続時間)

    • 質(例,鋭い,鈍い,痙攣性,灼熱感,疼く,刺すような)

    • 重症度

    • 部位(限局性,びまん性,深在性,表在性)

    • 放散のパターン

    • 増悪因子と軽快因子

    病歴聴取と身体診察から得られた情報は,疼痛の考えられる原因を同定する上で,臨床検査および画像検査を選択する際の指針となる。

    医師は患者の機能水準および疼痛が機能に与える影響を評価すべきであり,特に,日常生活動作(例,更衣,入浴),仕事,趣味,および対人関係(性関係を含む)に焦点を置くべきである。

    慢性疼痛の個人歴または家族歴から,しばしば現在の問題が明らかになる。家族が慢性疼痛を持続させる要因(例,ひっきりなしに患者に健康状態について質問することによる)になっていないか検討すべきである。

    患者の疼痛の知覚やその他の因子が臨床像に影響を及ぼすことがある。心理的問題,抑うつ,および不安に注意しながら,疼痛が患者にとってどのような意味をもっているかを明らかにすべきである。疼痛の訴えは不安や抑うつの訴えよりも社会的に受け入れられやすく,適切な治療を行えるかどうかは,しばしばその他の問題を同定できるか否かに依存する。疼痛と苦痛も区別するべきであり,がん患者の疼痛ではこのことが特に重要である;疼痛と同様に,機能喪失や迫りくる死への恐怖も苦痛の原因となっている可能性がある。

    一部の患者では,二次疾病利得(疾患により偶然得られる外的な利益―例,休暇,障害保障)が疼痛や疼痛に関連する身体障害に寄与している可能性がある。

    患者のほか,ときに家族および介護者にも,処方薬,OTC医薬品,その他の治療法の使用,効力,および有害作用について尋ねるべきである。オピオイドの誤用またはその他の物質の誤用が疑われる場合は,さらなる評価が必要である。

    疼痛の重症度

    疼痛を伴う可能性のある介入を行う場合は,その前後で疼痛の重症度を評価すべきである。会話可能な患者では自己報告がゴールドスタンダードであり,疼痛や不快感の外的徴候(例,泣く,たじろぐ,ぐらつく)は補助的に扱う。コミュニケーションに困難を伴う患者や幼児では,非言語的指標(行動や生理的指標)を最も重要な情報源とする必要がある場合がある。

    正式な測定法(生じている疼痛を定量化するための疼痛スケールの図を参照)として以下のものがある:

    • 言語的なカテゴリー尺度(例,軽度,中等度,重度)

    • 数値尺度

    • 視覚アナログ尺度(VAS)

    数値尺度としては,痛みを0~10点で評点するように患者に指示する(0 = 無痛;10 = 「これまでで最も痛い」)。VASでは,左側に「痛みが全くない」,右側に「耐えられない痛み」と書かれた印の付いていない10cmの線上に,患者が痛みの程度を表す印を記入する。痛みのスコアは線の左端からの距離(mm)で表す。小児や読み書きができない患者,発達上の問題が判明している患者では,笑顔から痛みで歪んだ顔までの顔の絵や,様々な大きさの果物から選択して,自身が知覚する疼痛の重症度を伝えさせることができる。疼痛を評価する際には,評価者は評価時期を明確に示すべきである(例,「先週の平均」)。

    生じている疼痛を定量化するための疼痛スケール

    Function Pain Scaleについては,評価対象の疼痛以外の理由による機能の制限はこの評価では考慮に入れないということを評価者が患者に説明しておくべきである;治療の目標は,疼痛を可能な限り,少なくとも患者が耐えられるレベル(0~2)まで緩和することである。

    Adapted from the American Geriatrics Society (AGS) Panel on Chronic Pain in Older Persons: The management of chronic pain in older persons.Journal of the American Geriatrics Society 46:635–651, 1998; used with permission; from Gloth FM III, Scheve AA, Stober CV, et al: The functional pain scale (FPS): Reliability, validity, and responsiveness in a senior population. Journal of the American Medical Directors Association 2 (3):110–114, 2001; and from Gloth FM III: Assessment. In Handbook of Pain Relief in Older Adults: An Evidence-Based Approach, edited by FM Gloth III. Totowa (NJ), Humana Press, 2003, p. 17; used with permission; copyright © FM Gloth, III, 2000.

    認知症または失語症の患者

    認知,会話,または言語機能を障害する疾患(例,認知症,失語)を有する患者では,疼痛の評価が難しくなる場合がある。疼痛は顔を歪める,眉をひそめる,瞬きを繰り返すなどの動作によって示唆される。ときに,疼痛を示唆する患者の行動(例,ひきこもり,易刺激性,しかめ面)を介護者が説明できることがある。意思疎通が難しかったり不可解に行動を変えたりする患者では,疼痛の可能性を考慮すべきである。適切な疼痛スケールを使用すれば,意思疎通が難しい患者の多くで意味のあるコミュニケーションをとることができる。例えば,Functional Pain Scaleは妥当性が確認されており,Mini-Mental State Examinationが17点以上の介護施設入居患者に使用できる。

    神経筋遮断薬の投与を受けている患者

    機械的人工換気を容易にするために神経筋遮断薬が使用されている場合については,妥当性が確認された疼痛評価尺度は存在しない。

    鎮静薬を投与されている患者では,意識がある徴候がみられなくなるまで用量を調節することができる。そのような症例では,特に鎮痛薬は必要ない。ただし,鎮静下でも引き続き意識のある徴候(例,まばたき,命令に反応した若干の眼球運動)が認められる場合は,その病態(例,熱傷,外傷)で通常みられる疼痛の程度に基づいた疼痛治療を考慮すべきである。疼痛を伴う可能性のある処置(例,寝たきりの患者の体位変換)が必要になった場合は,選択した鎮痛薬または麻酔薬を事前に投与するべきである。

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