遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(neuropathy with liability to pressure palsies:HNPP)では,圧および伸展に対して次第に神経の過敏性が亢進する。
(末梢神経系疾患の概要も参照のこと。)
HNPPでは,末梢神経の髄鞘が脱落して,神経インパルスが正常に伝わらなくなる。通常,遺伝形式は常染色体顕性(優性)である。80%の症例では,17番染色体短腕に位置する末梢性ミエリンタンパク質22遺伝子(PMP22)が1コピー足りないことに起因する。正常な機能の発現には,この遺伝子が2コピー必要である。
HNPPの発生率は,10万人当たり2~5例と推定される。
HNPPの症状と徴候
HNPPの診断
電気診断検査
遺伝子検査
以下のいずれかがある患者では,遺伝性圧脆弱性ニューロパチーを疑うべきである:
再発性の圧迫性単神経障害
原因不明の多発性単神経障害
再発性の脱髄性多発神経障害(例,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー[CIDP])を示唆する症状
手根管症候群の家族歴
電気診断検査および遺伝子検査が診断に役立つ;生検を要することはまれである。
HNPPの治療
支持療法
遺伝性圧脆弱性ニューロパチーの治療としては,症状を惹起する活動を回避または修正する。手関節の副子および肘パッドは,圧を軽減し,再受傷を予防し,神経が徐々にミエリン修復を行うのを可能にする。
手術が適応になることはまれである。
要点
遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(neuropathy with liability to pressure palsies:HNPP)は,通常は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の形式をとる,まれな疾患である。
患者に原因不明の末梢性単神経障害(例,腓骨神経または尺骨神経麻痺,手根管症候群)または繰り返す脱髄性多発神経障害と一致する症状がある場合は,HNPPを考慮する。
電気診断検査と遺伝子検査を用いて診断する。
症状を引き起こす活動を回避または修正するよう患者に助言し,必要に応じて手関節の副子および/または肘パッドを推奨する。