IgA血管炎(以前はヘノッホ-シェーンライン紫斑病と呼ばれた)は主に小型の血管を侵す血管炎である。小児に最も多く生じる。一般的な症状としては,触知可能な紫斑,関節痛,消化管の症候,糸球体腎炎などがある。小児では診断を臨床的に行うが,成人では通常は生検が必要である。通常,小児では自然治癒し,成人では慢性化する。コルチコステロイドで関節痛および消化管症状を低減できるが,疾患の経過が変わることはない。進行性糸球体腎炎は,高用量コルチコステロイドおよびシクロホスファミドを必要とすることがある。
(血管炎の概要も参照のこと。)
皮膚および他の部位の小型血管にIgAを含む免疫複合体が沈着する。可能性のある誘発抗原には上気道感染を起こすウイルス,レンサ球菌感染,薬物,食品,昆虫刺咬,予防接種などがある。巣状で分節性の増殖性糸球体腎炎が典型的に起こるが通常は軽度である。
IgAVの症状と徴候
この疾患は,一般的に足および下肢,またときに体幹および腕に触知可能な紫斑状の発疹が突然出現して発症する。紫斑は,触知可能になり,ときに出血性で融合する,小さな領域の蕁麻疹として始まる。新しい病変の集まりが数日から数週間にわたって現れる。多くの患者はさらに発熱および足関節,膝関節,股関節,手関節,肘関節に関節周囲の圧痛と腫脹を伴う多発性関節痛を発症する。
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消化管症状が一般的であり,仙痛性の腹痛,腹部圧痛,および黒色便などがみられる。小児では,ときに腸重積症が発生する。便の潜血反応が陽性のことがある。
IgA血管炎の症状は,通常約4週間で寛解するが,数週間の無病期間の後,少なくとも一度は再発することが多い。大半の患者では,重篤な続発症なしに疾患が鎮静化するが,まれながら一部の患者は慢性腎臓病を来す。
成人では,腸重積症はまれであり,小児より慢性腎臓病の頻度が低い。
IgAVの診断
皮膚病変の生検および直接蛍光抗体法
2012年のChapel Hill Consensus Conference(1)において,IgA血管炎(IgAV)は皮膚および消化管の小型血管を侵し,しばしば関節炎を起こすIgA1優位の免疫沈着を伴う血管炎と定義づけられた。IgAVはまた,IgA腎症と判別できない糸球体腎炎を伴う。
典型的な皮膚所見のある患者,特に小児で,本症を疑う。皮膚病変の生検にて蛍光抗体法で血管壁にIgAを伴う白血球破砕性血管炎が同定された場合に診断を確定する。小児では,臨床診断が明確であれば生検は不要である。
尿検査を行う;血尿,タンパク尿,および赤血球円柱は腎障害を示唆する。
血算および腎機能検査を行う。腎機能が低下している場合,腎生検が予後を明らかにするために役立つことがある。びまん性の腎糸球体障害または大部分の糸球体に半月体形成がみられる場合,進行性腎不全が予測される。
診断に関する参考文献
1.Jennette JC, Falk RJ, Bacon PA, et al: 2012 Revised International Chapel Hill Consensus Conference Nomenclature of Vasculitides.Arthritis Rheum 65(1):1-11, 2013.doi: 10.1002/art.37715
IgAVの治療
成人では,主に対症療法およびコルチコステロイド単独または免疫抑制薬との併用
小児では,必要に応じて疼痛コントロールのための対症療法
原因が薬物であれば,投与を止める必要がある。それ以外の場合,治療は主に対症療法である。
成人では,コルチコステロイド(例,プレドニゾン2mg/kgから最大で総投与量50mgまでを1日1回経口投与)が腹痛の管理に役立つことがあり,ときに重度の関節痛または腎疾患の治療に必要である。腎臓が重度に侵されている場合には,炎症を管理する試みとしてメチルプレドニゾロンのパルス静注に続き,プレドニゾンおよび免疫抑制薬(ミコフェノール酸モフェチル,アザチオプリン,リツキシマブ,またはシクロホスファミド)の経口投与を行うことがある。しかし,腎症状に対するコルチコステロイドの有益な効果は明らかではない。
小児では通常,コルチコステロイドまたはその他の免疫抑制薬は不要である。
要点
IgA血管炎は,主に小型の血管を侵す,成人より小児に多くみられる血管炎である。
症状としては,紫斑状の発疹,関節痛,発熱,腹痛,黒色便,糸球体腎炎などがある。
症状は通常,約4週間後に寛解する。
診断確定に必要な場合,皮膚病変の生検を行いIgA沈着を検索する。
症状を治療し,成人ではコルチコステロイド単独または免疫抑制薬との併用を考慮する。