感染性の屈筋腱腱鞘炎

執筆者:David R. Steinberg, MD, Perelman School of Medicine at the University of Pennsylvania
レビュー/改訂 2022年 4月
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感染性の屈筋腱腱鞘炎は,屈筋腱腱鞘内の急性感染症である。診断はKanavel徴候により示唆され,X線により確定する。治療は外科的ドレナージおよび抗菌薬投与による。

手疾患の概要および評価も参照のこと。)

感染性の屈筋腱腱鞘炎における通常の原因は,腱鞘の穿通および細菌の播種である。

感染性の屈筋腱腱鞘炎の診断

  • Kanavel徴候

  • X線

  • 排膿または外科的に採取した検体の培養

感染性の屈筋腱腱鞘炎はKanavel徴候を引き起こす:

  • 安静位の指の屈曲

  • 紡錘状の腫脹

  • 屈筋腱腱鞘に沿った圧痛

  • 指の他動的伸展に伴う痛み

隠れた異物を検出するためにX線撮影を行うべきである。急性の石灰沈着性腱炎および関節リウマチは,動きを制限し,腱鞘に痛みを引き起こすことがあるが,より緩徐な発症とKanavel徴候の一部が欠けていることにより,通常は感染性の屈筋腱腱鞘炎と鑑別することができる。播種性淋菌感染症は,腱鞘炎を引き起こすことがあるが,複数の関節を侵すことが多く(特に手関節,手指,足関節,および足趾の関節),しばしば最近の発熱,発疹,多発性関節痛の既往があり,多くの場合,性感染症の危険因子がみられる。腱鞘の感染症には非結核性抗酸菌が関与することがあるが,そのような感染症は通常,進行がより緩徐であり,特に易感染性患者でその傾向が強い(1)。

診断に関する参考文献

  1. 1.Kazmers NH, Fryhofer GW, Gittings D, et al: Acute deep infections of the upper extremity: The utility of obtaining atypical cultures in the presence of purulence.J Hand Surg Am 42(8):663.e1-663.e8, 2017.doi: 10.1016/j.jhsa.2017.05.004.Epub 2017 May 25.PMID: 28550986.

感染性の屈筋腱腱鞘炎の治療

  • 外科的排膿および抗菌薬

感染性の屈筋腱腱鞘炎の治療は外科的排膿による(例,カニューレを片側の端から挿入し,灌流液が腱鞘に沿ってもう一方の端まで流れるようにして,腱鞘を灌流する,またはより重篤な感染症に対して広範な切開を行う)。

抗菌薬療法(経験的にセファロスポリン系薬剤で開始)および培養も必要となる。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)が蔓延している地域では,セファロスポリン系薬剤の代わりに,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,クリンダマイシン,ドキシサイクリン,またはリネゾリドを用いるべきである。

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