十代の若者が主人公の映画やテレビドラマでは、お決まりの場面があります。学校のダンス大会や初めてのデート、大きな催し物を控えた朝、鏡に自分の顔を映した主人公が、突然現れた吹き出物を気づいて凍り付くのです。主人公はタイミングの悪さを呪い、その晩のイベントまでに何とかなくすことができないかと思案に暮れます。
(皮膚科医でユーチューバーの)ドクター・ピンプル・ポッパーのような著名な医師の活動や美容の基準の進歩のおかげで、最近ではかつてなく、にきびが話題に上がるようになっています。にきびは、米国では最も多くみられる皮膚疾患で、10人中8人が生涯のうちににきびを経験します。人々は自分のにきびのことを包み隠さず話題にするようになりましたが、その原因や治療方法については、依然として数多くの俗説が根強く残っています。
ここでは、にきびに関して最もよく聞かれる俗説と、黒色面皰(面皰)(開放面皰)、白色面皰(閉鎖面皰)、吹き出物、膿疱(のうほう)、丘疹(きゅうしん)、嚢腫(嚢腫)についての事実を明らかにする重要な情報を紹介していきます。
俗説:にきびは十代の若者が思春期にだけ経験するものだ
事実:にきびは年齢を問わずできます。にきびは、皮膚の毛穴が(皮脂と呼ばれる)脂分によってふさがれ、そこに感染と炎症が起きることで生じます。このような感染は、一生のどの時点でも起きる可能性があります。ただし、思春期や女性の月経周期と関連してみられるケースのように、ホルモンの血中濃度が高まっているときに、より多くみられます。
最近では新たに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策としてのマスクの着用によって生じたにきびに苦しんでいる人もいます。このいわゆる「マスクにきび」は、実際には「機械的なにきび」と呼ばれるにきびの一形態で、特定の部位がこすれて熱せられることで生じます。
俗説:にきびは自然になくなる
事実:にきびは、時間が経てば消えてなくなる、耐え忍べば済む通過儀礼などではありません。一部の人、特に男性では、にきびは十代の終わりか二十代の始めにきれいになくなります。しかし、女性のおよそ4割では、成人後もにきびがみられます。にきびは「卒業した」はずだと思っている二十代の女性にとっては、これは特に大きな悩みの種になる可能性があります。
にきびが自分の健康や幸福感に影響を及ぼしている場合は、以下の治療について医師に相談するとよいでしょう。一般的な治療法としては、過酸化ベンゾイルなどの外用薬、サリチル酸入りの洗顔料、抗菌薬とレチノイドの外用などがあります。中等度のにきびは、抗菌薬の服用で治療することが多いです。にきびのある女性には、経口避妊薬を処方することもあります。
俗説:チョコレートや脂っこい食べ物、乳製品を食べると、にきびができる
事実:食べ物はにきびの原因ではありませんが、研究では、チョコレートや乳製品のような食べ物が、にきびの重症度や頻度を高める可能性があることが示唆されています。しかし、にきびのある大半の人は、にきびを抑えるためにフライドポテトなどの食品を控える必要はありません。食べ物のことが心配だとすれば、一番に減らすべきものは砂糖です。にきびがある人が砂糖を多く摂取すると、食事に伴ってにきびが悪化する可能性があり、一部の研究では、そのような人では中等度から重度のにきびができる可能性が高いことが示唆されています。最善の方法は健康な食べ方をすることで、乳製品などの品目を減らす場合には、別にカルシウムや必須のビタミンや栄養素を必ず摂るようにすることです。
俗説:ストレスによって、にきびができる
事実:一部の食品と同様に、ストレスはにきびの原因にならないことが研究により明らかにされていますが、ときとして、にきびを悪化させる可能性があります。テストの前後で学生のにきびを調べた研究では、ストレスの程度が高まるにつれて、学生のにきびは悪化しました。
俗説:日焼けすれば、にきびは減る
事実:皮膚の色が濃くなると、にきびの赤みを目立たなくすることができますが、にきびのある人に日焼けを勧める皮膚科医は一人としていないでしょう。日焼けマシーンは1回使用するだけで、黒色腫(メラノーマ)などの皮膚がんのリスクが高まる可能性があります。
俗説:にきびは不衛生が原因でできる
事実:著しい不衛生は、にきびを悪化させることがありますが、大半の人のにきびには、ほかに原因があります。場合によっては、むしろ洗いすぎが問題になる可能性があります。強い角質除去剤や洗浄剤は、皮膚の脂分を取り除き、にきびを悪化させる可能性があります。一般に、洗顔は1日2回(とても敏感な肌の場合は1回)とし、強い製品を使わないのが最善です。角質を除くには、週に1回か2回、15~30秒間、乳児用のタオルで洗うだけにしてください。
俗説:吹き出物は絶対につぶしてはいけない
事実:実際には、吹き出物をつぶしてしまう人もいます。ただし、テレビやソーシャルメディアで目にすることがあるからと言って、安全だと言うことではありません。にきびをつぶすと、その部位がさらに赤くなって炎症を起こし、さらなる感染につながります。しかし、にきびに触れようとする際には、リスクを最小限に抑えることのできる手段がいくつかあります。触れる部位と手をできるだけ清潔にしましょう。シャワーを浴びた後が最善な場合が多いとされています。そして、にきびに触れる際には、何回もいじったり、強く圧迫したりしないようにします。
にきびについてさらに学ぶには、このトピックに関するMSDマニュアルのページを参照してください。