多くの職業には反復運動が伴い、それにより労働者は反復運動損傷のリスクにさらされます。反復運動損傷は、業務上の損傷の多くを占めています。反復的な動きを必要とする作業には、コンピュータでのタイピング、食料品のスキャン、釘打ち、組み立てラインでの作業、および削岩機の使用が含まれます。
多くの仕事は反復運動を伴うため、業務上の反復運動損傷はよくみられます。
業務上の反復運動損傷は、必要に応じて鎮痛薬と理学療法で治療します。
業務上の反復運動損傷のほとんどは、数週間の安静で治りますが、ときにコルチコステロイドやヒアルロン酸の注射や手術が必要になることもあります。
その他の治療法としては以下のものがあります:腱炎にはコルチコステロイドまたはヒアルロン酸の注射、滑液包炎にはドレナージ(場合によりコルチコステロイドの注射を伴う)、神経圧迫には副子または装具。
反復運動損傷には、腱炎、滑液包炎、神経の圧迫などがあります。
腱炎は、筋肉に負担をかけたり、酷使したりした結果、腱に小さな断裂が生じた場合に発生します。腱炎は、体が修復できるよりも早く腱が断裂し、腱が炎症を起こした場合に起こります。業務上の腱炎は、一般的に上腕二頭筋、肘関節、および肩腱板に発生します。
滑液包炎は、関節の表面に繰り返し圧力がかかることによって引き起こされ、滑液包の炎症を引き起こします。滑液包は液体で満たされた袋で、運動中に筋肉や腱が骨の上を滑らかに動けるようにします。業務上の滑液包炎では、一般的に肘、肩、股関節、膝が侵されます。滑液包炎の原因としては次のものがあります。
肘:硬い面に肘を置く
肩:腕を頭上に上げて作業する
股関節:硬い面に長時間座る
膝:ひざまずく
神経の圧迫は、神経が狭い空間(管)を通るときに起こることがあります。その結果、神経が機能不全に陥ります。業務上の損傷は、手首や肘によく起こります。例えば、手根管症候群(手首)や肘部管症候群(肘)などがあります。
反復運動損傷の症状
腱炎では通常、炎症を起こした腱を動かしたり触れたりすると痛みが生じます。重症の場合は、腱の上の皮膚が熱をもち、赤くなることがあります。腱が腫れることもあります。
滑液包炎も痛みを引き起こします。関節を動かすと痛みが悪化します。滑液包に体液が蓄積し、腫れて痛くなります。滑液包を覆う皮膚が熱をもったり、赤くなったりすることがあります。
神経の圧迫では、痛み、ピリピリ感、しびれ、灼熱感が最もよく起こります。
反復運動損傷の診断
医師による評価
ときに神経伝導検査またはMRI検査
反復運動損傷の診断は、主に痛みのある部位と痛みを引き起こす動きに基づいて下されます。以下のような特定の病気が疑われます。
腱炎:腱の動きによって痛みが生じる場合や、腱を押したとき(触診)に圧痛を感じる場合
滑液包炎:滑液包の上の部分が腫れたり、赤くなったり、熱を帯びたりしている場合や、滑液包を動かすと原因不明の痛みが悪化する場合
神経の圧迫:特定の神経によって支配されている部位に異常な感覚がある場合
医師はまた、患者の職歴について詳細な質問を行い、損傷が仕事に関連したものであることを確認し、症状の原因となった反復運動の種類を特定します。しかし、ときに検査が必要になります。
ときに神経伝導検査を行って、神経の圧迫を確認します。腫瘍または骨の異常な増殖による神経の圧迫が疑われる場合は、MRI検査を行うことがあります。
反復運動損傷の予防
業務上の反復運動損傷を予防するためには、以下のような戦略が有用です。
よい姿勢を保つ
定期的に休憩を取り、ストレッチする
時間外労働を削減・撤廃する
背中を支える椅子を使用する
通話にヘッドセットを使用する
必要に応じてフットレストを使用する
調整可能なデスクとコンピュータモニターを使用する
手や手首への負担を軽減するために、手工具を電動工具に変えたり、振動を吸収するハンドル付きの工具を使用したりする
雇用主は、これらの予防措置に関する訓練を労働者に提供し、反復運動損傷を減らすために必要な器具を提供すべきです。これらの損傷を引き起こす可能性のある作業について人間工学的な分析を行うべきであり、推奨通りに作業場を調整すべきです。労働者は、問題の症状を管理者に速やかに報告するよう奨励されるべきです。
反復運動損傷の治療
安静
痛み止め
理学療法
腱炎には、コルチコステロイドまたはヒアルロン酸の注射
滑液包炎には、ドレナージ
神経の圧迫には、副子または装具と、場合によりコルチコステロイドの注射または手術
業務上の反復運動損傷の治療には、患部を休ませることが含まれます。損傷の原因となった反復的な動作なしには通常の業務を遂行できない場合は、暫定的な仕事(一般にlight duty[軽い仕事]またはmodified duty[変更された仕事]とも呼ばれます)が必要になることがあります。損傷の種類と重症度によっては、暫定的な仕事を数週間から数カ月間続けます。反復運動を含む仕事の再開が早すぎると、損傷が再発することがあります。そうすると、労働者は暫定的な仕事に戻らなければならず、結果的に暫定的な仕事に費やす合計時間が増加してしまいます。労働者は、仕事以外で損傷を悪化させる活動を避けるべきです。
必要に応じて、痛み止め(鎮痛薬)や抗炎症薬を使用します。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、典型的には、反復運動損傷によって引き起こされる痛みの短期的な緩和に効果的であり、腱炎および滑液包炎の回復を早めます。
理学療法は、反復運動損傷のある労働者に有益であり、回復を促進し、労働者が機能を回復するのを助けることができます。
腱炎に対して、患部の腱の近くにコルチコステロイドを注射すると、短期的には痛みを和らげることができますが、長期的には役に立たないようで、悪影響を及ぼす可能性があるため、通常は勧められません。
滑液包炎に対しては、ときに患部の滑液包にたまった過剰な体液のドレナージを行い、場合によってはコルチコステロイドの注射を行います。ドレナージにより痛みが和らぎ、回復が早まることがあります。ドレナージ後は、ドレッシング材(弾性包帯など)で滑液包を圧迫することで、体液の再貯留を防ぐことができます。
神経の圧迫に対しては、副子や装具を使用することで症状が軽減することがあります。症状が重度または持続する場合は、コルチコステロイド注射およびときに手術のために整形外科医に紹介されます。
業務上の反復運動損傷のほとんどは、数週間の安静で治ります。しかし、神経の圧迫は、慢性的な痛みにつながることがあります。