バスソルト

(カチノン系化合物)

執筆者:Gerald F. O’Malley, DO, Grand Strand Regional Medical Center;
Rika O’Malley, MD, Grand Strand Medical Center
レビュー/改訂 2022年 12月
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「バスソルト」とは、カチノン系化合物という化学物質を含む中枢刺激薬の一群を指して使われる俗語であり、見た目の似ている入浴用のバスソルトとは化学的にまったく違うものです。(入浴に使用される伝統的なバスソルトは通常、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、グリセリン、香料を配合したものです。)

カチノン系化合物は、アンフェタミン類に似た刺激物質で、植物のアラビアチャノキ(Catha edulis)(カート)に由来します。カートは東アフリカおよびアラビア半島で栽培されている灌木です。何世紀にもわたって、その地域の人々は軽度の刺激作用のために葉を噛んでいます。その地域では、カートを噛むことはしばしば社会的な活動であり、他の社会のコーヒーを飲むことと似ています。

最近、カートの使用は他の国々へと広がり、それよりはるかに強力な人工(合成)カチノン系化合物が乱用薬物となっています(規制物質に関する法律から逃れるために「バスソルト」として売られています)。バスソルトの使用法としては、吸引する方法と煙を吸い込む方法のほか、注射されることもあります。これらの製品は、多くの場合「人間の食用ではない」と表示されており、入浴には使用されません。

薬物使用と薬物乱用も参照のこと。)

バスソルト中毒の症状

バスソルトには、アンフェタミン類と似た作用があり、頭痛、心拍数の上昇(頻脈)、動悸、幻覚、興奮、痛みへの耐性増加などがみられます。暴力的になる人もいます。

合併症

バスソルトは、危険なほどの体温上昇(高体温)を引き起こすことがあります。重篤な臓器障害を引き起こすこともありますが、原因はよく分かっていません。以下のような臓器障害が起きることがあります。

バスソルト中毒の診断

  • 医師による評価

  • 血液と尿の検査

バスソルトは通常の尿検査や血液検査では検出されないため、医師は通常、薬物の使用が判明している人の症状に基づいて診断を下します。バスソルトの重度の急性中毒の徴候がみられる人には、医師は一般的に、バスソルト使用による他の問題がないか調べるために、以下のような特定の検査を指示します。

  • 血液検査(血算、電解質濃度、腎機能を調べるため)

  • ミオグロビン尿の尿検査(筋肉の破壊を調べるため)

  • 心電図検査

バスソルト中毒の治療

  • 精神状態が正常になるまでの経過観察とモニタリング

  • 静注鎮静薬

  • 輸液

通常、静注鎮静薬、輸液、支持療法などの一般的な治療で十分です。危険なほどの体温上昇(高体温)、持続的な心拍数の上昇または興奮、腎疾患を示唆する血液検査結果がみられる人は入院させ、筋肉の崩壊および心臓と腎臓の損傷についてモニタリングする必要があります。

さらなる情報

以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. 米国国立薬物乱用研究所(National Institute on Drug Abuse:NIDA):薬物使用とその影響に関する科学的調査研究を支援し、よく使用されている薬物、研究の優先度と進行状況、臨床情報源、助成金と資金提供の機会に関する情報を提供する米国連邦機関による、カチノンに特化した情報です。

  2. 米国薬物乱用・精神衛生サービス局(Substance Abuse and Mental Health Services Administration:SAMHSA):行動面の健康を促進する公衆衛生活動を主導し、治療を提供する場所の情報、フリーダイヤルの相談窓口、医療従事者訓練ツール、統計、物質関連の様々な話題に関する出版物などの情報を提供する米国保健福祉省の機関です。

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