ネイルガン(釘打ち機)による損傷

執筆者:Michael I. Greenberg, MD, Drexel University College of Medicine;
David Vearrier, MD, MPH, University of Mississippi Medical Center
レビュー/改訂 2022年 8月
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ネイルガン(釘打ち機)による損傷は、通常は手や指の刺し傷ですが、より重篤な損傷を引き起こすこともあります。

ネイルガンによる損傷は、建設労働者によくみられます。ネイルガンは枠組壁工法において金槌に取って代わり、米国では毎年推定37,000人の救急医療機関受診の原因となっています。そのうち約60%が仕事に関連したものです。

ネイルガンは、非常に高い圧力で釘を打ち込みます。ネイルガンによる損傷の大半は指と手に起こります。しかし、脚、体幹、眼、頭部に損傷が起こることもあります。眼に損傷が起こった場合、失明することがあります。

ネイルガンによる損傷では、釘のほかにも、ワイヤー、布、紙、粘着剤などの異物が傷口に入り、感染を起こすことがあります。

釘や異物が、神経、腱、血管、関節などの軟部組織や骨に埋まっていることがあります。

バンプまたは自動トリガー付きのネイルガンを使用すると、意図しない釘の発射が起こることがあります。シングルショットまたはフルシーケンシャルトリガーのネイルガンを使用すると、けがのリスクが低下します。また、ネイルガンを正しく使用する方法や、ネイルガンによる損傷が及ぼしうる破壊的な影響について学ぶことで、リスクを減らすことができます。雇用主は、労働者に対してそのような訓練を提供すべきです。

ネイルガンによる損傷の評価

ネイルガンによる損傷がある場合は、たとえ損傷の程度が軽くても、応急処置を行い、直ちに医師の診察を受ける必要があります。応急処置としては、傷口から出血している場合は清潔な布で傷口を圧迫し、けがをした腕や脚を心臓より高い位置に上げます。自分で釘を抜こうとしてはいけません。

医師は以下を行うことで、ネイルガンによる損傷を評価します。

  • 重篤な損傷の特定(および治療)

  • 必要に応じて出血のコントロール

  • ネイルガンによる傷の下にある構造に対する損傷の確認

患者が救急医療機関または診療所を受診するときには、典型的には釘が傷の中に埋まっています。

傷口から出血している場合は、評価を行う前に止血しなければなりません。医師は傷口を直接圧迫し、可能であれば患部を持ち上げます。アドレナリンを含有する麻酔薬を傷口に塗ることも、出血を減らすのに役立ちます。傷口の上に止血帯をあてることもあります。手や指の傷の検査がしやすくなります。

医師は、神経、腱、血管、関節、骨など、損傷の下にある構造に損傷がないか徹底的に調べます。また、X線検査を行って骨の損傷がないか確認し、釘の大まかな位置と種類を調べます。釘の種類によって、釘を取り除く方法が変わります。例えば、返しの付いた釘は取り除くのが難しく、手術室で取り除きます。

X線検査は、異物の位置を特定するのにも役立ちます。

専門医による評価が必要になることもあります。例えば、眼が損傷した場合、できるだけ早期に眼科医に相談します。

ネイルガンによる損傷の治療

ネイルガンによる損傷の治療には以下のものがあります。

  • 釘の除去

  • 創傷ケア

釘が軟部組織に埋まっていて、構造に損傷がない場合は、医師は患部に麻酔薬を塗布し、引っ張って取り除きます。その後、傷口を洗浄し、水または生理食塩水で洗い流し(洗浄)、滅菌したドレッシング材をあてます。

他のすべてのネイルガン損傷に対しては、手術を行って損傷を調べ、手術室内で釘を取り除きます。

ネイルガンによる損傷は一般的に深い刺し傷であるため、縫合せずに治癒させることができます。

さらなる情報

  1. 米国国立労働安全・衛生研究所:ネイルガンの安全性(National Institute for Occupational Safety and Health (NIOSH): Nail Gun Safety):このウェブサイトでは、ネイルガンによる損傷の原因をレビューし、その予防方法について説明しています。また、ネイルガンの安全性に関する他の情報源へのリンクも掲載されています。

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