マリファナ(大麻)は植物のカンナビス・サティバ Cannabis sativaとカンナビス・インディカ Cannabis indicaからつくられる薬物で、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)と呼ばれる、精神活性作用のある化学物質が含まれています。
マリファナにより、夢幻状態、幸福感、知覚のゆがみが生じます。
マリファナを長期にわたって使用した場合、精神依存が起こることがあります。
使用をやめても軽い症状が現れるだけです。
マリファナは使用後数日から数週間尿中に検出されます。
治療はカウンセリングですが、やめる意志がある人でのみ有効です。
米国では、マリファナ(大麻)の使用は広範にわたっており、定期的に使用されることが多いですが、社会的問題や精神衛生上の問題の徴候は通常みられません。
マリファナは、米国では主に紙巻タバコ状のもの(ジョイント)が使用され、これには乾燥した大麻(カンナビス・サティバ Cannabis sativaまたはカンナビス・インディカ Cannabis indica)の茎、葉、花の部分が使われています。このほか、大麻の樹脂を固めたタール状の物質(ハシシ)としても使用されます。マリファナの合法化により、経口摂取および電子タバコで蒸気吸入できる製品の市場ができています。チンキ、ローションやスプレーとして皮膚に使用できる形態のものも多岐にわたります。
マリファナの活性成分は、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)です。デルタ-9-THCの合成型であるドロナビノール(dronabinol)は、がんの化学療法薬で生じる吐き気や嘔吐の軽減、およびエイズ患者の食欲増進に用いられます。
マリファナは、たまに使用するという人がほとんどで、その場合は顕著な社会的または精神的問題や依存は通常みられません。しかし、なかにはマリファナに依存するようになる人もいます。
マリファナ中毒の症状
マリファナは、すぐに現れる症状やときに長期的な症状を引き起こすことがあります。
即時作用
マリファナは脳の活動を低下させ、観念にまとまりがなく自由に流れるような夢幻状態をもたらします。時間、色、空間の感覚がゆがんで強調されるといった軽度の幻覚症状が現れます。色はより鮮やかに見え、音は大きく聞こえます。多幸感とリラックス感は、「ハイ」と呼ばれます。
マリファナは通常、緊張を軽減して幸福感をもたらします。高揚感、興奮、内面的な快楽(いわゆる「ハイな気分」)などの感覚は、1人で吸う、グループで一緒に吸うなど、マリファナを吸っている状況とその雰囲気に関係しているようです。
マリファナの使用後24時間は運動協調、反応速度、奥行き感覚、集中力が低下するため、この間に運転や重機を操作するのは危険です。このほか心拍数の増加、眼の充血、食欲の増進、口腔乾燥などの影響もみられます。一般に、作用は吸入後4~6時間続きます。
一部の人、特にそれまでマリファナを使用したことのない人は、不安を感じたり、パニック状態や妄想状態になります。マリファナは、統合失調症の人では精神病(現実との接触の喪失)を悪化させたり、誘発したりすることがあります。
長期的な影響
大量のマリファナを長期間使用している人は、以下のような呼吸障害を発症することがあります。
気管支炎
喘鳴
せき
たんの増加
腹痛および周期性嘔吐症候群
しかし、マリファナ喫煙者は、毎日吸う人でさえ、閉塞性気道疾患を発症することはありません。タバコでみられるような、頭頸部や気道のがんのリスクが増大する証拠はありません。
最近の研究では、青年期にマリファナを使用し始めた場合、認知障害や脳の変化につながる可能性が示唆されています。
カンナビノイド悪阻とは、最近報告された、マリファナの長期使用者でみられる症候群であり、吐き気と嘔吐が交互に繰り返し起こります。この症候群は通常48時間以内に消失します。熱い風呂に入ることによって症状をいくらか緩和でき、それがこの病態を診断する最も大きな手がかりとなります。
マリファナを吸う女性は妊娠する可能性が下がることを示唆した研究もあります。妊娠した場合は、非使用者に比べて、生まれてくる新生児が小さいことがありますが、その影響は小さいようです。デルタ-9-THCは母乳に入りますが、子どもに有害な作用は認められていません。しかし、妊娠中あるいは妊娠を考えている女性、授乳中の女性はマリファナを使用すべきではありません。
マリファナを頻繁に吸う男性は精子数が少ないことが多く、妊よう性が低下する可能性があります。
離脱症状
マリファナは数週間かけてゆっくり体外に排出されるため、離脱症状は比較的軽度です。数週間大量かつ頻繁に使用した後に急にやめると、約12時間後に症状が現れて最長で7日間続きます。以下のような症状がみられます。
不眠
易怒性
抑うつ
吐き気
食欲不振
マリファナ中毒の診断
尿検査
ごくたまに軽く使用する人でも、使用後数日から数週間にわたって尿検査でTHCが検出されます。常用者では、マリファナが体の脂肪から徐々に放出されるため、より長期間検査で検出されます。尿検査はマリファナ使用を調べる効果的な方法ですが、尿検査が陽性であっても、マリファナを使用したことが分かるだけです。使用者に障害(中毒)があるかどうかは分かりません。
マリファナ中毒の治療
精神状態が正常になるまでの経過観察とモニタリング
カウンセリングおよび薬物治療
マリファナをやめたい人には、カウンセリング、行動変容プログラム、薬物治療プログラムが有用です。ただし、本当にやめられるかどうかは、本人にやめようという強いモチベーションがあり、常用者の仲間から離れる意志があるかどうかにかかっています。
マリファナの常用者の中には、周期性嘔吐症候群(吐き気と嘔吐を繰り返す)を発症する人もいます。医師はこれを輸液や吐き気止めで治療することがあり、カプサイシンクリームを腹部に塗る場合もあります。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
ナルコティクス・アノニマス・ワールドサービス(Narcotics Anonymous World Services):アルコホーリクス・アノニマスが使用しているものと同様の12段階のプログラムを通じて、原因となった物質にかかわらず、嗜癖との闘いを支援します。
米国国立薬物乱用研究所(National Institute on Drug Abuse:NIDA):薬物使用とその影響に関する科学的調査研究を支援する米国連邦機関による、マリファナに特化した情報です。
米国薬物乱用・精神衛生サービス局(Substance Abuse and Mental Health Services Administration (SAMHSA):):行動面の健康を促進する公衆衛生活動を主導し、治療を提供する場所の情報、フリーダイヤルの相談窓口、医療従事者訓練ツール、統計、物質関連の様々な話題に関する出版物などの情報を提供する米国保健福祉省の機関です。