窒息

執筆者:Amy H. Kaji, MD, PhD, Harbor-UCLA Medical Center, David Geffen School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 7月
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窒息を緩和する手技により、多くの命が救われています。成人の窒息で最も多いのは、大きな肉のかたまりなど、食べものをのどに詰まらせることです。嚥下反射機能が十分に発達していない乳児は、ピーナツやアメなど小さな丸い食べものでのどを詰まらせます。小児、特によちよち歩きの年代では特に、口に入れた風船、おもちゃ、硬貨などの食べられないものや、食べもの(特にホットドッグや丸いアメ、ナッツ、豆、ブドウなどの丸くて滑らかなもの)をのどに詰まらせることがあります。

最初の症状はせきこむことですが、せきこみが激しすぎて助けを呼べないこともしばしばあります。のどの辺りを両手でかきむしるような動作をしていることもあります。呼吸や話す声が弱まり、止まることもあれば、甲高い音やあえぐような音を出していることもあります。顔が真っ青になったり、けいれん発作を起こしたり、意識を失ったりすることもあります。

救命・応急手当

複数の救助者がいる場合は、1人が救急車を呼び、他の人は窒息している人の治療を開始します。救助者が1人しかいない場合は、窒息している人の気道に詰まっているものをとることを試みてから、救急に連絡します。

腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)

救助者は患者の背後に立ち、患者の腹部に両腕を回します。片手で握りこぶしをつくり、もう一方の手をその上に重ねます。胸骨とへその中間に両手をあてて、持ち上げるように強く圧迫します。

激しくせきをすると、しばしば気道に詰まっていたものが吐き出されます。

  • 強くせきこんでいる場合は、そのまませきを続けさせましょう。

  • 正常に話すことができても、しばらくは強くせきこむことがあります。

のどが詰まっていてせきができない場合は、腹部突き上げ法(ハイムリッヒ法)を行います。これは上腹部と胸部を圧迫して、のどに詰まったものを吐き出させる方法です。

患者の意識がある場合、背後から腕を患者の腹部に回します。片手で握りこぶしをつくり、親指は拳の中に入れ、拳の親指側を内側、つまり患者側に向けます。その拳を患者の胸骨とへその間に置きます。そしてもう片方の手で握りこぶしをしっかりつかみます。そのまま両手で上・内方向に5回連続で強く突き上げます。患者が5歳未満の小児または体重が20キログラム未満の人である場合は、救助者は膝をついて、控えめに力を加える必要があります。詰まったものが出るまで、一連の突き上げを繰り返します。患者が意識を失ったら、救助者はすぐに突き上げをやめ、他の方法で気道の詰まりをとることを試みます。

患者が意識を失った場合、救助者は口とのどの中を見て、気道をふさいでいるものがないか調べ、あれば取り除きます。それでも息を吹き返さない場合は、舌が気道をふさいでいる可能性があります。その場合、救助者は患者の頭部を軽く後ろに傾けてあごを持ち上げると舌が動き、気道が開きます。それでも息を吹き返さない場合は、口対口(マウスツーマウス)人工呼吸をすることがあります。胸が上がらない場合は、なおも気道がふさがっていることを意味します(心停止の場合の「救命・応急手当」を参照)。

乳児に対しては腹部突き上げ法は行いません。代わりに、乳児をうつ伏せにして胸を救助者の前腕で支え、頭を体幹より下げた姿勢にします。そして救助者は手のひらの付け根で、乳児の肩甲骨の間を5回たたきます(背部叩打法)。けがをさせない程度にしっかりたたく必要があります。そして口を調べ、詰まっているものが見えたらそれを取り除きます。なおも気道がふさがっている場合は、乳児をあお向けにし、頭を下げ、人差し指と中指を使って、胸骨部分を上・内方向に1.25~4センチメートル、5回押します(胸部突き上げ法)。そして再び口の中を調べて異物がないかを確認します。この処理を、異物が取り除かれるか、乳児が意識を失うまで繰り返します(意識がなくなったら直ちに心肺蘇生を行う必要があります)。

乳児の気道閉塞の解除

乳児をうつ伏せにして、胸部を救助者の手で支えます。そして乳児の背中の肩甲骨の間をたたきます。

乳児をあお向けにして、頭を体幹より低くします。そして人差し指と中指を乳児の胸骨にあてて、上・内向きに強く素早く押します。

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