腸重積

執筆者:William J. Cochran, MD, Geisinger Clinic
レビュー/改訂 2021年 8月
プロフェッショナル版を見る
やさしくわかる病気事典

腸重積は、スライドさせて伸ばす望遠鏡のように、腸の一部が別の部分の中にすべり込む病気です。はまり込んだ腸の一部は腸を閉塞させ、血流を遮断します。

  • 通常、腸重積の原因は不明です。

  • 症状は突然発生する腹痛と嘔吐の発作などで、1時間に数回にわたり現れたり消えたりして、その後に血便がみられることもあります。

  • 空気注腸を行うと診断を確定でき、治療にもなります。

  • 手術が必要になることもあります。

腸重積は、生後6カ月~3歳の小児における、腸閉塞の最も一般的な原因です。女児よりも男児でやや多く、特に4歳以上でその差が顕著になります。ほとんどの場合、原因は不明です。

腸重積の小児の約25%(典型的には非常に年少の小児と年長児)では、ポリープメッケル憩室、悪性腫瘍(がん)(リンパ腫など)、IgA血管炎などが腸にあることが、腸の一部が別の部分にはまり込む原因となっています。 嚢胞(のうほう)性線維症がある小児には、腸重積の発生リスクもあります。

治療を行わなくても、腸のはまり込んだ部分が正常な状態に戻る場合があります。正常な状態に戻らない場合、はまり込んだ腸の一部が腸を閉塞するため、患部への血流が遮断されます(虚血と呼ばれます)。血流が2~3時間以上止まると、血流を遮断された腸は死んでいきます(壊疽[えそ])。腸の一部が死ぬと小さな穴(穿孔[せんこう])が生じやすくなり、細菌が腹腔へ入り込んで、重篤な感染症(腹膜炎)が起こります。

腸重積の症状

腸重積では通常、それ以外は健康な小児に腹痛と嘔吐が突然発生します。これらの症状は典型的には15~20分間続きます。最初のうちは、症状がない間は比較的健康そうに見えます。その後、虚血が起きると、痛みが持続的になり、小児が不機嫌になったり、ぐったりしたりするほか、イチゴゼリー状の便(血液と粘液が混じった暗赤色の便)が出たり、発熱がみられたりする場合もあります。穿孔が起こっている小児は具合が悪そうに見え、腹部を触ると痛みがあります。ときに、医師の触診で、腸重積がある腹部にソーセージ状の形をした腫瘤が発見されることがあります。

まれに、腸重積の小児に痛みがみられず、代わりに、薬物で麻痺したかのようにぐったりした様子になります。

腸重積ちょうじゅうせきとは

スライドさせてのばす望遠鏡ぼうえんきょうのように、ちょう一部いちぶべつ部分ぶぶんなかにすべりこみます。その結果けっかちょうがふさがります。

腸重積の診断

  • 画像検査、一般的には超音波検査

小児の症状や診察の結果から腸重積が疑われることがあります。

超音波検査で診断を確定できます。腹部の単純X線検査で腸の閉塞が示されることがありますが、腸重積は確定しません。

比較的まれではありますが、小児の腹痛を評価するためにCT検査を行い、腸重積を診断できる場合があります。

ほかの理由で行われた画像検査で腸重積が認められたものの、症状が何もみられない場合は、治療の必要はありません。ただし、医師は親に対して、痛み、嘔吐、易刺激性などの症状に注意するよう助言します。

腸重積の治療

  • 空気注腸

  • 手術

超音波検査で腸重積が確定された場合、空気注腸が行われます。

空気注腸

空気注腸では、細いチューブから小児の直腸に空気を送り込んだ後、X線画像撮影します。通常は空気の圧力によって、はまり込んだ腸の一部が元の位置に押し戻されます。処置がうまくいったかどうかをX線画像で確認します。空気注腸がうまくいけば、病院で一晩過ごした後に小児は帰宅できます。腸重積は1~2日間は再発しやすいため、再び症状が現れないか小児の様子をよく観察するように親は助言されます。

空気注腸で腸重積が修復され、手術が必要なかった場合、約5~10%の小児で再発がみられます。

手術

以下の場合は腸重積の手術が必要です。

  • 腸穿孔の徴候がみられる

  • 空気注腸を行っても腸重積が元に戻らない

  • この病気が再発した

再発した場合、この病気を治療するとともに、腸重積の再発の原因と考えられるポリープや腫瘍、その他の異常がないか調べることも目的として、手術が行われます。

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS