乳児が知的な面と感情の面で成長するとまもなく、親や主な養育者を認識し離れないようになります。この絆が強まるにつれ、親が自分から離れたり知らない人が現れたりすると、乳児はたいていの場合不安になったり怖がったりします。このような恐怖感は乳児の正常な発達の一部で、時間が経てば消えるはずです。
分離不安
分離不安は正常な発達段階の1つです。この段階では、小児は親や主な養育者から引き離されたときに不安を覚えるようになります。分離不安は、典型的には生後8カ月頃から始まり、生後10カ月~1歳半に最も強くなります。親や養育者から離された場合、特に家以外の場所では、非常におびえ安全ではないと感じます。小児は親や養育者に安全や安心を求め頼っています。この年齢の小児が、親や養育者が部屋を離れた際に泣くのは「駄々をこねて」いるのではありません。正確にいえば、泣くのは親や養育者への愛着が芽生えたことを示します。このような状況で小児が泣くのはよい反応です。
見える所にいなくても永遠にいなくなったわけではないと小児を安心させるため、親や養育者はこの年齢の小児といないいないばあで遊ぼうとすることもあります。
分離不安は2歳頃まで続きます。この頃には、小児は対象の永続性を学習し信頼感が発達しています。対象の永続性とは、見えたり聞こえたりしなくてもそのもの(親など)は存在しているという考えです。親や養育者が見えなくても存在していることを理解するようになれば、分離不安は消失します。親や養育者がいずれ戻ってくると信頼するようになります。
通常、分離不安は心配する必要はなく、医師の診察も必要ありません。
分離不安はより年長の小児に起こる分離不安症とは違うものです。分離不安症の小児は典型的には登校や登園を拒否します。分離不安症が重い場合は、小児の正常な発達を妨げることもあります。
分離不安への対応として、親はそばを離れることを控えたり、あきらめたりすべきではありません。そのような対応は、小児の成熟と発達の妨げになる場合があります。
親が外出する、あるいは託児所に子どもを預ける場合、次のような方法を試すことができます。
誰かに一時的に小児の世話を頼む場合には、その小児が見慣れた人物にする
小児を預ける相手におもちゃ、ゲームや別の方法で小児の注意をそらしてもらうよう頼む
離れる前に小児の啼泣に反応しないようにする
落ち着いて安心感を与える
離れる際には決まったやり方で離れるようにし、小児の不安を和らげる
離れる前に授乳し昼寝をさせる(空腹または疲労している場合、分離不安が悪化しうるため)
親が家の別の部屋に行くと子どもが泣く場合、すぐに戻って子どもをなだめるのではなく、別の部屋から子どもに声をかけます。この対応により、親は目の前にいなくてもきちんと存在することを子どもに理解させるようにします。
2歳を過ぎてからも分離不安が残った場合、問題視すべきかどうかは小児の成長がそれによりどの程度阻害されているかによります。例えば、ほとんどの小児は保育所や幼稚園に行く際に何かしら不安を抱きます。登園ができ、不安が時間とともに少なくなる場合、この不安は分離不安とはみなされません。しかし、分離不安によって登園できない、友達と普通に遊べない場合は、分離不安症の徴候かもしれません。このような場合は、受診する必要があります。
人見知り
生後8カ月から1歳半の小児は、見知らぬ人に会ったり初めての場所に行ったりすると、たいていの場合強い不安を感じます。人見知りの小児は見慣れない人が近づくと泣くことがあります。次のような人見知りは正常です。
生後8カ月~9カ月頃に始まる
2歳までに治まる
人見知りは、乳児が見慣れた人と見慣れない人とを区別するという発達の過程と関連しています。人見知りの程度と持続期間は小児によって大幅に異なります。
ある特定の年齢において、極端に一方の親のみになつく乳幼児もいます。祖父母を突然見知らぬ人とみなすこともあります。親は、このような行動が起こりうることを前もって知っておく必要があり、祖父母にも伝えておくようにします。そうすれば小児の行動を誤解しないで済みます。通常は、小児をあやして、人見知りの行動に過度に反応しないこと以外、治療は必要ありません。
新しいベビーシッターが来る場合は、事前にその人を交えて家族で過ごす時間をもつとよいでしょう。当日は、親が家を出る前に、親が小児とベビーシッターとともに過ごすようにします。同様に、親が留守にする数日の間、祖父母が来て面倒をみる場合は、1~2日前に来るべきです。
小児が診断検査を受ける、あるいは入院する必要がある場合、診療所や病院に前もって連れて行き、どのようなものか見せることが助けになるでしょう。親はまた、そばで待っていると子どもを安心させ、正確にどこで待っているかを伝えるようにします。
人見知りがとても強いか、長引いている場合は、より全般的な不安の徴候かもしれません。このような場合は、すぐに診察を受ける必要があります。医師は、家庭の状況、育児技術、小児の全体的な情緒の状態について評価します。