あざや出血の原因になるタンパク質異常

執筆者:David J. Kuter, MD, DPhil, Harvard Medical School
レビュー/改訂 2021年 10月
プロフェッショナル版を見る

    血液中の異常なタンパク質や正常でも異常な量のタンパク質を生じる疾患では、血管がもろくなることがあります。このようにもろくなった血管が破れると、皮膚に赤色もしくは紫色の染みやあざ(紫斑)ができます。紫斑を引き起こす可能性のある疾患には以下のものがあります。

    • アミロイドーシス

    • クリオグロブリン血症

    • 高ガンマグロブリン血症性紫斑病

    • 過粘稠度(かねんちゅうど)症候群

    アミロイドーシス

    アミロイドーシスでは、皮膚や皮下組織の血管内にアミロイドというタンパク質が沈着し、血管がさらにもろくなって、紫斑の原因になります(通常は腕にできます)。目の周りにあざができたり、光を当てただけであざができたりする場合は、アミロイドーシスが疑われます。血液中のアミロイドを調べるために血液検査を行い、腹壁から採取した脂肪のサンプルまたは問題のある器官から採取した脂肪のサンプルを調べてアミロイドーシスの診断を確定します。アミロイドーシスの程度やほかに障害のある組織に応じて治療法が決定されます。

    クリオグロブリン血症

    クリオグロブリン血症は、血液が冷やされたときに(例えば、腕や脚に流れたときに)、血液中の異常な免疫グロブリンタンパク質(抗体)がくっつき合うことで発生します。血液中の異常なタンパク質はクリオグロブリンと呼ばれます。クリオグロブリンが血管に凝集すると、血管に漏れが生じ、皮膚にあざや赤みを帯びた潰瘍ができます。臨床検査でクリオグロブリンが検出されることがあります。原因になる病気を治療すると、これらの症状が改善される可能性があります。

    高ガンマグロブリン血症性紫斑病

    高ガンマグロブリン血症性紫斑病では、血液中の免疫グロブリンの量が多いことに伴って炎症が起き、それによって血管が損傷を受けます(血管炎)。この疾患は主に女性にみられます。小さな赤紫色に変色した隆起の集団が下腿(膝から足首までの部分)に繰り返し発生します。これらの集団では、小さな残留性の茶色い斑点が残ります。原因になる免疫疾患として、シェーグレン症候群全身性エリテマトーデスなどが多くみられます。

    通常は血液検査が行われます。多くの場合、1つの種類の免疫グロブリン(IgGと呼ばれます)が増加していることが明らかになります。また、検査のために皮膚サンプルの採取(生検)が必要になる場合もあります。

    原因となる疾患の治療を行います。

    IgA血管炎

    IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)は、主に小型血管の炎症で、主に小児に起こります。皮膚、関節、腸、腎臓が侵されます。典型的には、赤紫色の隆起した発疹や斑状の発疹が現れ、ほとんどの場合は、下腿(膝から足首までの部分)と殿部にみられます。

    過粘稠度症候群

    過粘稠度症候群は、血液中の特定のタンパク質(免疫グロブリン)の量が多すぎる場合に発生し、マクログロブリン血症多発性骨髄腫のような血液のがんによるものが最も多くみられます。過剰な免疫グロブリンにより、血液の粘度(粘稠度)が高まり、血管を通過する速度が遅くなります。過粘稠度症候群では、皮膚、指、足、鼻、脳への血流が制限されます。血管が血液でいっぱいになって、血液が漏れ出すと、皮膚が変色します。

    鼻血や歯ぐきからの出血が繰り返しみられることが最もよくみられる症状ですが、血液が非常に濃くなった場合は、心不全や脳卒中を起こすこともあります。血液の粘稠度を測定する検査を含めて、血液検査が行われることがあります。

    過粘稠度症候群による症状がある場合は、プラズマフェレーシスによる治療が行われます。プラズマフェレーシスでは患者の体から血液を取り出して血球と血漿(血液の液体部分)を分離する装置に通します。血漿は過粘稠の原因になっているタンパク質を含んでいるため、除去して廃棄し、血球が体内に戻されます。

    基礎にある血液のがんの治療を行うために、化学療法が必要になることもあります。

    quizzes_lightbulb_red
    医学知識をチェックTake a Quiz!
    ANDROID iOS
    ANDROID iOS
    ANDROID iOS