亜急性連合性脊髄変性症は、ビタミンB12欠乏により脊髄が変性する進行性の病気です。
動きや感覚をコントロールする神経線維が損傷を受けます。
全身の筋力低下、手や足のしびれやピリピリ感、脚のこわばりが現れ、いらだちやすさ、眠気、錯乱がみられることもあります。
ビタミンB12欠乏症は、血液検査により確定できます。
ビタミンB12をすぐに注射や経口で投与すれば、通常は完全に回復します。
(脊髄の病気の概要も参照のこと。)
亜急性連合性脊髄変性症は通常は40歳以上の人にみられます。
この病気の原因は、悪性貧血の原因ともなるビタミンB12の欠乏です。通常、ビタミンB12が欠乏するのは、食事に問題があるためではなく、体がこのビタミンを吸収できないためです。
ビタミンB12は、神経細胞を取り囲み信号を伝える速度を高めている脂肪のさや(髄鞘)の形成と維持に必要な物質です。亜急性連合性脊髄変性症では、髄鞘が損傷することで、脊髄から出る感覚神経線維と運動神経線維が変性します。ときに脳、視神経、末梢神経が損傷を受けることもあります。
症状
亜急性連合性脊髄変性症は全身のだるさ(けん怠感)から始まります。両手と両足にはピリピリ感としびれが生じます。これらの感覚は、常時続く傾向があり、徐々に悪化します。振動を感じとることができなくなり、腕や脚の位置覚が失われます。腕や脚がこわばり、動作がぎこちなくなり、歩行が困難になります。反射は、減弱、亢進、または消失します。
まれに、視力が低下することもあります。
いらだちやすさや、無関心、眠気、疑い深さ、錯乱などがみられることがあります。感情の起伏が激しく、予想のつかない急な変化がみられます。まれに認知症も現れます。
診断
血液検査
CTまたはMRI検査
血液中のビタミンB12濃度を測定すると、欠乏症を確定できます。症状を引き起こしている他の原因を否定するためにCTまたはMRI検査が行われます。
治療
ビタミンB12の注射
亜急性連合性脊髄変性症は早期に治療することで、回復の可能性がより高くなります。発症から数週間以内に治療がなされれば、ほとんどの人が完全に回復します。治療が遅れると、病状の進行が遅くなったり止まったりすることはあっても、失われた機能が完全に回復する可能性は低くなります。
ほとんどの場合は、直ちにビタミンB12の注射が行われ、再発予防のために投与を無期限に続けます。ビタミンB12の欠乏が軽度で神経損傷の症状が生じていない場合は、経口によるビタミンB12の大量投与をすることもあります。