最初から骨に発生する腫瘍は原発性骨腫瘍と呼ばれます。原発性骨腫瘍には、がんではない良性腫瘍と、がんである悪性腫瘍があります。
がんの診断がついたら、病期診断が行われます。病期(ステージ)とは、がんの侵攻性(腫瘍細胞の顕微鏡下での見た目に基づいて、そのがんが広がる可能性がどれくらいあるか)や、大きさ、周辺の組織に広がっているかどうか、遠く離れたリンパ節や臓器に転移しているかどうかなどを基準として、そのがんがどれくらい進行しているかを示す指標です。
アダマンチノーマ
アダマンチノーマはまれな腫瘍で、ほとんどの場合すねの骨(脛骨)に発生します。この腫瘍は、通常は青年と20代の成人に発生しますが、どの年齢の人にも発生する可能性があります。痛みを引き起こすことが多く、指で触れると皮膚の下に腫瘍の感触が得られる場合がよくあります。
この腫瘍は、増殖が遅く、悪性度の低いがんであるため、他の一部の腫瘍と比べて転移する可能性は低くなります。しかし、まれではありますが、転移は起こります(ほとんどは肺への転移)。
アダマンチノーマを診断するために、医師はX線検査を行い、採取した組織サンプルを顕微鏡で調べます(生検)。
アダマンチノーマの治療では、腫瘍細胞がこぼれるリスクがあるため、腫瘍を傷つけないようにしながら手術で切除します。腫瘍細胞がこぼれると、がんが再発します。まれに、腫瘍の位置や腫瘍が再発するかどうかに応じて、患側の脚の外科的切除(切断)が必要になることがあります。
軟骨肉腫
軟骨肉腫は、軟骨のがん細胞からなる腫瘍です。この腫瘍は高齢者に起こる傾向があります。この腫瘍は骨盤や肩甲骨といった骨によくみられますが、どの骨のどの部分にも発生する可能性があり、骨の周囲の組織にも発生することがあります。軟骨肉腫の多くは、増殖が遅いか、悪性度が低く、すなわち他の一部の腫瘍と比べて転移する可能性は低くなります。しかし、なかには増殖が速かったり悪性度が高かったりして、転移しやすいものもあります。
軟骨肉腫を診断するために、医師はX線検査、骨シンチグラフィー、MRI検査を行います。また、採取した組織サンプルを顕微鏡で調べます(生検)。
悪性度の低い軟骨肉腫は、さじ状の器具で削り取り(掻爬)、液体窒素、フェノール、骨セメント(メチルメタクリレート)またはアルゴンビームを用いて、骨に埋まった表面の腫瘍細胞を死滅させて、骨から除去します。悪性度の低い腫瘍は、ほぼすべてこうした外科的治療によって治癒します。
悪性度が高いか増殖が速い軟骨肉腫は、他の一部の腫瘍よりも転移する可能性が高いです。これらは腫瘍を傷つけることなく手術で完全に切除しなければならず、腫瘍が傷つくと、腫瘍細胞が漏れ出すリスクがあります。腫瘍細胞が漏れ出すと、がんが再発します。
軟骨肉腫は、どの悪性度でも化学療法や放射線療法には反応しません。まれに、手術による患部の腕や脚の切断が必要になります。
脊索腫
脊索腫はまれですが、悪性で、脊柱の端部に発生する傾向があり、通常は脊椎底部(仙骨)や尾骨の中央部、または頭蓋底の近辺にみられます。仙骨や尾骨の脊索腫では、痛みがほぼ継続して発生します。頭蓋底の脊索腫は、頭蓋底の神経(脳神経)の問題を起こすことがあります。診断がつくまでに症状が数カ月から数年も続くことがあります。脊索腫は、進行が速い腫瘍でない限り、通常は肺など他の部位に転移することはありませんが、治療後に再発することがあります。
脊索腫の診断に役立てるために、医師はMRI検査を行います。また、生検も行います。
仙骨や尾骨の脊索腫は、手術による切除で治癒する可能性があります。頭蓋底の脊索腫は通常、手術では治癒しませんが、放射線療法が一時的に腫瘍を縮小させ痛みに対して役立つことがあります。
骨のユーイング肉腫
ユーイング肉腫は、女性よりも男性に多い悪性腫瘍で、10~20歳の人に最も多く発生します。腕や脚に発生するケースがほとんどですが、どの骨にも発生する可能性があります。最もよくみられる症状は、痛みと腫れです。腫瘍が非常に大きくなり、その骨全体が侵されることもあります。腫瘍に大量の軟部組織が含まれていることもあります。
ユーイング肉腫を診断するために、医師はX線検査を行います。X線検査はある程度詳細を示すことができますが、MRI検査は腫瘍の正確な大きさを測定するのに役立ちます。診断を確定するために、生検を行います。
Image courtesy of Michael J.Joyce, MD, and Hakan Ilaslan, MD.
ユーイング肉腫の治療は、手術が可能かどうか、あるいは実行した場合に成功したかどうかに応じて、手術、化学療法、放射線療法を様々に組み合わせて行います。このような治療の組合せによるユーイング肉腫の治癒率は、60%以上です。
骨の線維肉腫と未分化多形肉腫
骨の線維肉腫と未分化多形肉腫(以前は骨の悪性線維性組織球腫として知られていた)は、骨肉腫と同じ年齢層の人に発生し、外観、発生部位、症状が骨肉腫に類似しています。これらの悪性腫瘍には、がんの骨組織ではなく、がんの線維組織(結合組織)をつくる細胞があります。
治療と生存率は骨肉腫の場合と同様です。
骨のリンパ腫
骨のリンパ腫(以前は細網肉腫と呼ばれていました)は、通常、40代と50代の人に発生する悪性腫瘍です。あらゆる骨で発生することがあり、体内の他の場所で発生し、骨髄にびまん性に広がることもあります。通常、この腫瘍によって、痛み、腫れ、軟部組織の蓄積が生じます。損傷した骨は骨折しやすくなります。
骨のリンパ腫を診断するために、医師はX線検査およびMRI検査を行います。生検も行われます。
骨のリンパ腫の治療は、通常は化学療法の組合せによって行われ、放射線療法が併用される場合もあり、手術による腫瘍の切除と同程度の効果があるようです。まれに切断手術が必要になります。骨折する可能性があると考えられる場合は、骨折を予防するために手術で骨を固定することもあります。
悪性巨細胞腫
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫(形質細胞の病気:多発性骨髄腫も参照)は、ときに血液系のがん(造血器腫瘍)とみなされますが、ときに骨の腫瘍とみなされることもあります。骨腫瘍としてみると、最も多くみられる原発性の悪性腫瘍であり、大半が高齢者に発生しています。ただし、これは骨を形成する硬い組織ではなく骨髄(骨の空洞内にある造血組織)に発生するがんです。したがって、通常は骨そのものではなく骨髄のがんとみなされます。これは、骨を形成する硬い組織のがんよりも多くみられます。
がんになった骨髄細胞は、骨の喪失を引き起こす物質を分泌します。骨量の減少は広い範囲にわたる場合もありますが、よくみられるのは骨のX線画像に打ち抜き像として現れる場合です。
多発性骨髄腫は、1つまたは複数の骨を侵し、そのため、痛みは1カ所の場合もあれば、数カ所に生じる場合もあります。1つの骨だけが1つの腫瘍に侵されている場合は、形質細胞腫と呼ばれます。複数の腫瘍があるか骨髄が広く侵されている場合は、多発性骨髄腫と呼ばれます。
ときとして、骨が破壊された部位の診断のために骨生検が行われます。骨生検の結果から多発性骨髄腫が疑われる場合や、他の理由で多発性骨髄腫が疑われる場合は、骨髄細胞を採取して調べることで診断を確定します。また、血液検査も行われます。さらに、全身のX線検査(全身骨X線検査)が行われます。骨痛の部位を具体的に調べるために、MRI検査またはPET-CT検査(PETとCTを組み合わせた検査)が行われることもあります。
Image courtesy of Michael J.Joyce, MD, and Hakan Ilaslan, MD.
骨肉腫(骨原性肉腫)
多発性骨髄腫を造血器腫瘍とみなす場合、骨肉腫は原発性の悪性骨腫瘍の中で最も多くみられる腫瘍ということになります。主に10~25歳の人に発生しますが、どの年齢の人にも発生する可能性があります。遺伝的な素因が存在し、特に遺伝性の網膜芽細胞腫とリ-フラウメニ症候群の遺伝子をもっている小児がこれに当てはまります。高齢者が骨パジェット病に罹患しているか、別のがんの治療のために骨に放射線照射を受けているか、骨組織の壊死(骨梗塞)やその他の病気がある場合に、この種の腫瘍がときに発生します。骨肉腫は通常、膝の関節内、またはその周囲に発生しますが、どの部位の骨からも発生する可能性があります。骨肉腫は、肺や他の骨に転移する傾向があります。通常は、腫瘍によって痛みと腫れが起こります。
X線検査をしますが、骨肉腫の診断には、組織サンプルを採取して顕微鏡で検査(生検)する必要があります。肺に転移したがんを検出するには、胸部X線検査と胸部のCT検査が必要であり、別の骨に転移したがんを検出するには、骨シンチグラフィーが必要です。その他の画像検査としては、MRI検査、およびPETとCTを組み合わせた検査(PET-CT検査)も行われます。
Image courtesy of Michael J.Joyce, MD, and Hakan Ilaslan, MD.
化学療法を受けがんが転移していない場合、骨肉腫患者の65%以上が診断されてから5年以上生存します。化学療法でほぼすべてのがんを破壊すると、5年以上生存する確率は90%以上になります。手術技術の向上により、通常は腕や脚を温存し再建することができます。過去には、病巣のある腕や脚を、しばしば切断しなければなりませんでした。
通常、骨肉腫は化学療法と手術を併用して治療します。通常は化学療法を最初に行います。多くの場合、この段階で痛みは治まります。次に、腫瘍を傷つけることなく腫瘍全体を切除します。腫瘍を傷つけると、そこから腫瘍細胞が漏れ出し、同じ部分でがんが再発する可能性があります。化学療法は手術後も継続します。