好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、臓器に損傷を与える小型血管または中型血管の炎症で、通常は、喘息、鼻アレルギー、鼻茸(はなたけ)、またはその複数の病歴のある人に起こります。
原因は不明です。
最初は、数カ月または数年間にわたる鼻水や喘息があるか、副鼻腔の痛みがあり、その後は侵された臓器に応じて様々な症状が続きます。
医師は症状と身体診察、血液検査、画像検査、および生検の結果に基づいて診断を下します。
コルチコステロイドを、免疫の働きを抑制する別の薬と併用することがあります。
(血管炎の概要も参照のこと。)
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、あらゆる年齢の人に発生する可能性があります。診断時の平均年齢は48歳です。患者は成人期に、喘息、鼻アレルギー、鼻茸(鼻に多数のポリープができた場合)、またはこれらの複数を発症します。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の原因は不明です。
小型および中型の血管に生じうる炎症(血管炎)が、どの臓器にも起こることがあります。末梢神経系、副鼻腔、皮膚、関節、肺、消化管、心臓、腎臓が、最もよく侵されます。炎症を引き起こす免疫細胞の集まり(肉芽腫と呼ばれます)が、患部組織に隆起した膨らみ(小結節)を形成することがあります。肉芽腫は、正常な組織を破壊し、機能を阻害することがあります。また、肉芽腫によって皮膚の下にこぶができることもあります。さらに、患者の血液と組織の中で好酸球(白血球の一種)の数が増えます。好酸球の数が増えた状態を好酸球増多と呼び、これは、この病気にアレルギー反応が関わっている可能性を示唆しています。
症状
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の患者では、喘息、鼻アレルギー、鼻茸、またはそれらの複数が、何年もかけて発生したり悪化したりします。患者はくしゃみが出たり、鼻水や眼のかゆみが続いたりします。副鼻腔の炎症によって顔面の痛みが生じることがあります。
その後、患者は全身の不調や疲労を感じることがあります。発熱、寝汗、食欲不振、体重減少がみられることもあります。その他の症状は、どの臓器が侵されたかによって変わりますが、具体的には以下のものがあります。
筋肉や関節の痛み
息切れ、喘息、副鼻腔炎
胸痛
発疹
腹痛と下痢
血便
しばしば突然現れる、腕や脚の異常な感覚、しびれ、または筋力低下
錯乱、けいれん発作、昏睡
これらの症状は、どの組合せでも現れる可能性があります。症状は何度も生じることがあります。2回目以降では、最初と同じ症状が繰り返しみられることも、異なる症状が現れることもあります。
腎臓の炎症の症状は、腎臓の機能障害や腎不全が起こるまで現れない場合があります。その他の合併症には、心不全、心臓発作、心膜炎、心臓弁膜症などがあります。
診断
医師による評価
血液と尿の検査
画像検査
生検(皮膚、筋肉、ときに肺組織)
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の早期の診断と治療が、臓器の重い損傷を防止するのに役立ちます。
診断を確定できる単独の検査はありません。好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の診断は、典型的な症状の組合せや、身体診察とその他の検査の結果をみて下します。
血液検査を行います。医師は血液中の好酸球数を測定します。好酸球はアレルギー反応の際に生産され、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症があると数が増えます。さらに医師は、この病気で存在する可能性がある特定の抗体(抗好中球細胞質抗体)を探します。赤血球が試験管の底に沈む速度(赤血球沈降速度、赤沈)を測定します。この速度が速ければ、炎症が起きていることが示唆されます。C反応性タンパク質(全身の炎症に反応して肝臓で生成される)の値も測定します。C反応性タンパク質の値が高い場合も、炎症が示唆されます。尿検査を行い、腎臓が侵されているかどうかを判定します。
胸部X線検査を行い、肺の炎症がないか調べます。心エコー検査も行い、心不全の徴候がないか調べます。
炎症を起こした組織のサンプルを採取し、顕微鏡で調べます(生検)。生検により、組織に好酸球や肉芽腫があるかどうかが分かります。ときには肺組織の生検が必要です。その場合は入院が必要になることがあります。
予後(経過の見通し)
心臓、脳、脊髄、または神経が侵されている好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の患者では、予後が不良です。
治療
コルチコステロイドとその他の免疫抑制薬
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の治療では、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン])が投与されます。コルチコステロイドで炎症を軽減することができます。別の免疫抑制薬(免疫の働きを抑制する薬)も使用されます。アザチオプリン、リツキシマブ、またはメトトレキサートが使用されることがあります。症状が重いときは、シクロホスファミドが使用されます。
症状が治まったら、薬の用量を徐々に減らし、しばらくしたら投与を中止することができます。必要になったら、投与を再開することもあります。これらの薬は、特に長期間使用すると、深刻な副作用を引き起こすことがあります。
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の患者は、この病気について学ぶべきです。そうすれば、患者は新しい症状があればそれに気づいて、すぐに医師に報告することができます。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
血管炎財団(Vasculitis Foundation):医師の見つけ方、研究についての学び方、患者擁護団体への参加方法など、血管炎に関する患者向けの情報を提供しています。