結核とはどのような病気ですか?
結核は、結核菌という細菌が引き起こす、よくみられる深刻な感染症です。
結核は、世界中で何百万人もの人がかかっている病気で、特に医療などの資源の少ない国でよくみられます。
結核は、感染して治療を受けていない人のせきやくしゃみで広がります。
結核菌を吸いこむと、結核にかかります。
結核はふつう、肺に影響をおよぼしますが、ほぼすべての臓器に影響をおよぼす可能性があります。
感染した人のほとんどは、体調は悪くなりませんが、細菌が体の中にとどまります。
活動性結核という状態になると、ふつう、せきが出て、発熱し、寝汗が出て、体重が減ります。
HIVに感染している人は、活動性結核になりやすく、そのせいで死んでしまう可能性が高いです。
結核を治療するためには、いくつかの抗菌薬を少なくとも6カ月間飲む必要があります。
結核はどのような段階に分けられますか?
結核には次の3つの段階があります:
初感染
潜伏感染
活動性結核
初感染では、結核菌が肺に入り、場合によっては、体の他の部位に広がります。初感染で病気になる人はほんの少しだけです。
潜伏感染の段階では、体を守る仕組み(免疫系)が結核菌を攻撃して、瘢痕組織の小さなかたまりの中に閉じこめます。体がやがてその細菌を殺すこともありますが、細菌が生き残って何年も活動しないままでいることが多いです。潜伏感染の人のうち約5~10%が活動性結核になります。
活動性結核では、瘢痕組織のかたまりの中に閉じこめられていた細菌が、活発になって出てきます。活動性結核になると、体調が悪くなり、ほかの人に感染を広げるようになります。
結核の原因は何ですか?
結核は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を吸いこむことで引き起こされます。
活動性結核の人がせきやくしゃみをすると、また話をするだけでも、結核菌が空気中に入ります。
どのような理由で活動性結核になるのですか?
免疫の働きを弱める病気や薬は、結核が活動性結核になる可能性を高めます。
最もよくある危険因子は次のものです:
そのほかの危険因子には次のものがあります:
糖尿病
重い腎不全
特定のがん
コルチコステロイドや新しい抗炎症薬などの薬
危険因子がなくても、結核が活動性結核になることがあります。
結核にはどのような症状がありますか?
結核はふつう、すぐには症状を引き起こしません。実際、感染した人のほとんどでは、症状が現れません。
症状が現れている場合は、肺に影響がでています。この場合、次のような症状がみられることがあります:
せきが出る(血がすじ状に混じった、黄色または緑色の粘液が出ることもあります)
熱が出る
寝ている間に汗をかく
体重が減る
具合が悪くなり、元気が出ず、おなかが空かない
息切れがして、胸が痛くなる
あまり多くはありませんが、感染がほかの臓器に広がってほかの臓器が結核菌に感染することによって症状が現れることもあります。たとえば、腎臓に感染すると、背中が痛くなり、尿に血が混ざります。脳に感染すると、頭痛、混乱、眠気を引き起こします。脊椎に感染すると、背中が痛くなります。
医師はどのようにして私が結核かどうかを判断しますか?
結核かもしれない症状がみられる場合、医師は次の方法で活動性結核がないか調べます:
胸のX線検査
たん(せきといっしょに吐き出される粘液)のサンプルで結核菌を探す検査
これらの検査の結果ではっきりしない場合は、医師は結核の皮膚検査や血液検査をすることがあります。
結核の皮膚検査はツベルクリン検査といいます。医療従事者が、結核菌のタンパク質を少しだけ、あなたの腕の皮膚のすぐ下に注入します。もしあなたが結核菌にさらされていれば、2日くらいすると、その部分に硬いふくらみができます。
結核のスクリーニング検査とはどのような検査ですか?
スクリーニング検査とは、症状が何も現れていない人で病気を見つける検査です。結核は何も症状を引き起こさないことが多いので、結核にかかる危険がある場合は、定期的にスクリーニング検査を受ける必要があります。
次の場合は、スクリーニング検査が必要になることがあります:
活動性結核の人と密接にふれあった
医療従事者として働いている
HIV感染症や糖尿病など、結核にかかる危険性を高める病気をもっている
免疫の働きを弱める特定の薬を飲んでいる
結核の人が多くいる国から来た
スクリーニング検査には次のものがあります:
皮膚の結核検査
結核の血液検査
ときには胸のX線検査
皮膚検査や血液検査で陽性になった場合は、医師は診察と胸のX線検査をして、活動性結核かどうかを確かめます。活動性結核ではない場合、スクリーニング検査で陽性ということは、あなたは潜伏感染の段階にあるということを意味します。
医師は結核をどのように治療しますか?
活動性結核
結核は抗菌薬で治療します。活動性結核の治療に医師が用いる抗菌薬レジメンには、あなたの病状と検査結果、そのほかの状況に応じて多くの種類があります。しかし、たいていは次のようにします:
家で治療します。
4種類の抗菌薬を約2カ月間飲みます。
それから、さらに4~7カ月間、2種類以上の抗菌薬を飲みます。結核菌を全部取り除くには長い時間がかかります。
とても具合が悪い場合や、住む場所がない場合、あなたが人とのふれあいを制限できない場所に住んでいる場合は、入院する必要があります。たとえば、介護施設、寮、避難所に住んでいる場合などです。
潜在性結核
潜在性結核があって具合が悪くなくても、スクリーニング検査で最近陽性になった場合は、ふつう医師はあなたを治療します。活動性結核にならないように、治療をする必要があります。ふつう、医師はあなたに次の治療をします:
1種類の抗菌薬を4~9カ月間飲ませます(使う抗菌薬によって期間が異なります)。
耐性菌とは何ですか?
結核菌の一部の株は変異を起こしていて、よく使われる抗菌薬で殺しきることができません。そうした薬剤耐性をもつ結核菌は、4~5種類の抗菌薬を使って、とても長い期間、治療しなければなりません。
医師はどのようにして結核の広がりを予防しますか?
あなたに感染した結核菌の薬に対する抵抗力がとても強くなければ、抗菌薬を1~2週間飲んだ後に、あなたが健康な人に結核をうつすことはありません。それまでは、いくつかの予防策をとる必要があります。
家で治療する場合には:
家に人を呼んではいけません。
せきをするときは(ティッシュペーパーや自分の肘の内側で)口をおおってください。
幼い子どもやHIVに感染している人など、感染の危険性が高い人といっしょに住んでいる場合は、結核がコントロールされていることが検査で分かるまで、予防策をとる必要があります。
病院で治療を受けている場合は、次のことが必要かもしれません:
入るときに特別なマスク(ふつうのサージカルマスクではない)を着けなければならない隔離室に入ってもらう
結核に対するワクチンはありますか?
結核に対するワクチンはあります。BCGといいます。しかし、その接種を受けると、ツベルクリン検査という皮膚検査で陽性になってしまいます。ですから、あなたがワクチン接種を受けた場合、医師は結核のスクリーニングにこの皮膚検査を使うことができません。そのため、このワクチンはおもに、結核が流行している国の子どもに使われています。