重症筋無力症とはどのような病気ですか?
重症筋無力症は、筋肉に力が入らなくなる状態がしばらく続く病気です。
重症筋無力症は、神経が信号を筋肉に伝えられなくなる自己免疫疾患です。
重症筋無力症は、20~40才の女の人と50~80才の男の人に最も多く起こりますが、何才でも起こります。
運動した後に、異常なくらい筋肉が疲れて、力が弱くなります。
まぶたが垂れ下がり、ものが二重に見えます。
医師は、筋肉の力を一時的に強め、具合をよくする薬を処方します。
免疫の働きを抑える薬が役に立つことがよくあります。
重症筋無力症の原因は何ですか?
重症筋無力症は自己免疫疾患です。免疫系は、体を守るための仕組みです。体を病気や感染から守るのに役立っています。しかし、自己免疫疾患になると、免疫系が自分の体の一部を攻撃するようになります。
神経は、筋肉に動くよう指示する信号を送ります。その信号は、神経や筋肉にある受容体というタンパク質が受け取ります。重症筋無力症では、免疫によって筋肉の受容体が攻撃されるために、筋肉を動かす信号が届かなくなります。
こうしたことが起こる理由は医師たちにもはっきりと分かっていませんが、医師たちは、胸腺の異常が関係しているかもしれないと考えています。胸腺は免疫系の一部で、胸のところにあります。重症筋無力症の多くの人では、胸腺が異常に大きかったり、胸腺に良性腫瘍があったりします。
次のような別の自己免疫疾患がある場合、あなたは重症筋無力症になる可能性が高いです:
重症筋無力症は、次のことの後に始まることがあります:
感染症
手術
高血圧、マラリア、または心拍の異常に対して特定の薬を使うこと
重症筋無力症の女の人から生まれた赤ちゃんは、生後数日から数週間、筋肉の力が弱いことがあります。
重症筋無力症にはどのような症状がありますか?
重症筋無力症のおもな症状は次のとおりです:
筋肉に力が入らなくなる症状が現れたり、消えたりする
筋肉は使い始めは正常に働きますが、使い続けるにつれて、力が弱くなっていきます。たとえば、すばやくまばたきをしようとすると、最初はそれができます。それから10秒くらいすると、まばたきは遅くなっていきます。
筋肉に力が入らなくなる症状としては、ほかにも次のようなものがあります:
まぶたが垂れ下がる
目の筋肉の力が弱いせいでものが二重に見える(複視)
腕や脚、手、首の筋肉に力が入らない
筋肉を使った後にものすごく疲れる
筋肉に力が入らなくない状態が、暑いときにひどくなり、寒いときには軽くなる
ものをかんだり、飲み込んだり、話をしたりするのが難しくなる
ときには、呼吸が苦しくなる
重症筋無力症は筋肉だけに影響を与えます。筋肉の力は弱くても、体の感覚はすべてあり、頭もはっきりしています。
筋無力症クリーゼとは何ですか?
筋無力症クリーゼとは、筋無力症が突然とてもひどくなることです。筋肉の力があまりに弱くなるせいで、呼吸が苦しくなることがよくあります。筋無力症クリーゼは、感染症がきっかけで起こることが多いです。
医師はどのようにして、私が重症筋無力症かどうかを判断しますか?
医師は症状について質問し、診察をします。
もし筋肉に力が入らなくなっているなら、医師は、筋無力症を改善できる対策があなたの症状に対して、どれくらい効果があるを調べることがあります。たとえば、もしまぶたが垂れ下がっているなら、医師は次のことをする場合があります:
垂れ下がったまぶたにアイスパックをあてて、冷やすことで筋肉の力が改善するか確かめる
あなたに数分間、目を閉じたまま暗いところで横になってもらい、静かに休むことで垂れ下がりが軽くなるか確かめる
筋無力症に効く、短い間だけ働く薬を注射して、垂れ下がりが軽くなるか確かめる
その後、医師が重症筋無力症を疑う場合には、ほかに次のような検査をします:
筋肉の受容体を攻撃する抗体がないか確かめる血液検査
筋電図検査では、細い針を神経(ふつうは腕の神経)にさします。その針が筋肉の電気的な活動を記録します。また、軽い電気ショックに対して筋肉と神経がどれくらい反応するかも記録します。
医師は重症筋無力症をどのように治療しますか?
医師はあなたに次の働きをする薬を使うことがあります:
筋肉の力を改善する
免疫の働きを抑えて、筋肉の受容体をあまり攻撃しないようにする
筋肉の力を改善する薬は、神経が筋肉に信号を送るために使う化学物質と同じように働きます。しかし、このような薬は数時間しか効きません。また、それらの薬はこの病気を止めるわけではなく、症状を軽くするだけです。医師は、あなたがどう感じているかによって量を調整します。しかし、薬が多すぎると、筋肉に力が入らなくなることもあります。そのため、病気がひどくなっていて薬を増やさなくてはいけないかどうかや、副作用が現れていて薬を減らさなくてはいけないかどうかは、医師にも判断が難しいことがあります。
免疫の働きを抑える治療には、次のようなものがあります:
免疫の働きを弱める、コルチコステロイドなどの薬
免疫グロブリン製剤(役に立つ特定の抗体が入っている薬)
血漿交換(血液をろ過して、筋肉の受容体を攻撃する抗体を取り除く処置)
胸腺に腫瘍がある場合は、医師が胸腺を取り除きます。この治療は重症筋無力症に効果があることが多いです。たとえ腫瘍がなくても、胸腺を取り除くことが助けになる場合があります。