筋肉は、脳から神経を通して信号が送られると動きます。
運動ニューロンは、筋肉に動くよう指示する信号を送る神経です。信号は脳から出て、脊髄と神経を通って、筋肉に伝わります。
運動ニューロン疾患とは、運動ニューロンがゆっくりと壊れていく病気のことです。運動ニューロンが働かなくなると、筋肉に動くよう指示する信号が届かなくなります。
筋萎縮性側索硬化症とはどのような病気ですか?
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、最もよくある種類の運動ニューロン疾患です。この病気はルー・ゲーリッグ病と呼ばれることが多いです。ルー・ゲーリッグとは、筋萎縮性側索硬化症にかかっていた、1930年代の有名な野球選手のことです。
筋萎縮性側索硬化症は、とてもゆっくりと起きます。
筋肉にだんだん力が入らなくなり、筋肉がかたくなっていきます。
最後には、歩くことも、話すことも、ものを飲み込むこともできなくなります。
ものを飲み込めなくなった場合は、栄養チューブが必要になります。
呼吸のための筋肉に異常が起きると、人工呼吸器(呼吸を助けるための機械)を使わなくてはならなくなります。
この病気を治せる治療法はありませんが、症状を軽くするのに薬が役立つことがあります。
筋萎縮性側索硬化症の人のおよそ半分は、3年以内に亡くなりますが、10年以上生きる人もいます。
運動ニューロン疾患には、このほかにも、原発性側索硬化症、進行性球麻痺、進行性筋萎縮症など、いくつかの種類があります。これらはすべて、筋肉に力が入らなくなる症状と、重い身体障害を引き起こします。
筋萎縮性側索硬化症にはどのような症状がありますか?
筋萎縮性側索硬化症の最初のころに起きる症状としては、次のものがあります:
手の動きがぎこちなくなり、手に力が入らなくなる
ときには、足、口、のどの筋肉に力が入らなくなる
筋肉のけいれん
体重が減る
とても疲れを感じる
筋肉に力が入らなくなると、顔の表情をコントロールするのが難しくなります。ものを飲み込むのが難しくなっていき、液体がのどにつまったり、よだれが出たりすることがあります。自分の声が変に聞こえることがあります。
使われていない筋肉は、細く、かたくなっていきます。あなたはまず、手の筋肉が細くなっていることに気づくかもしれません。
筋肉に力が入らなくなる症状は、ゆっくりひどくなっていき、ほかの筋肉にも現れるようになります。最後には、目を動かす筋肉を除き、全身の筋肉に問題が起きます。
後になって、筋肉に力が入らなくなる症状がひどくなるにつれて、次のような症状が現れることがあります:
食事や着がえに助けが必要になる
筋肉のけいれんが起きる
歩くのに助けが必要になり、最後には車いすが必要になる
のどにつまらせずにものを飲み込むことができなくなり、栄養チューブが必要になる
呼吸が苦しくなる
最後には、呼吸がとても苦しくなり、人工呼吸器をつけなくてはならなくなります。
筋萎縮性側索硬化症は、心に異常を起こすわけではないため、筋肉に力が入らなくなる症状がひどくなっても、はっきりとものを考えることができます。しかし、筋萎縮性側索硬化症が感情に影響を与えて、理由もなく笑ったり、泣いたりするようになることがあります。また、この病気の深刻さから、気分がふさぎこんでしまうこともよくあります。
医師はどのようにして、私が筋萎縮性側索硬化症かどうかを判断しますか?
医師は筋萎縮性側索硬化症をどのように治療しますか?
筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン疾患を治せる治療法はありません。
医師は次の方法で、あなたの症状を治療します:
関節をやわらかく保ち、筋肉がやせるのをおくらせるための理学療法
食事中にのどをつまらせるのを防ぐための作業療法、または、すでにものを飲み込めなくなっている場合は胃への栄養チューブ
筋肉のけいれんの対処に役立つ薬
感情の爆発や抑うつの対処に役立つ薬
よだれの対処に役立つ薬
痛み止めの薬
筋肉に力が入らなくなって、自分で呼吸ができなくなっている場合は、人工呼吸器
栄養チューブや人工呼吸器を使っても、筋萎縮性側索硬化症の人のおよそ半分は、約3年以内に亡くなります。しかし、10年以上生きる人もいますし、ごくまれに30年以上生きる人もいます。
あなたが筋萎縮性側索硬化症や、ほかの危険な運動ニューロン疾患にかかっている場合は、事前指示書をつくるのがよいでしょう。事前指示書とは、あなたが人生の終わりにどのような医療を受けたいかを、あなたの愛する人や医師に知らせるための計画書です。