クールーはプリオン病の一種ですが、現在ではめったに起こりません。クールーは、精神機能の急速な悪化と協調運動障害をもたらします。この病気はかつて、パプアニューギニア高地の原住民の間で発生していた経緯があり、現地の埋葬儀式であった人肉を食べる習慣によって感染していました。
(プリオン病の概要も参照のこと。)
クールーが研究者たちの注目を集めたのは、主にプリオン病が人から人に伝染する様式を解明できるという理由からでした。
クールーは、1960年代初めまではパプアニューギニアでかなり多く発生していました。原住民の埋葬儀式において、故人への敬意を表するため、近親者が死者の体の組織を食べる習慣(人肉食の儀式)があり、おそらくはこの儀式によって異常プリオンに感染したと考えられています。おそらく、クロイツフェルト-ヤコブ病の患者の異常プリオンで汚染された組織を誰かが食べたことがクールーの起源であると考えらえています。最も感染性の強い組織である脳は女性と子どもに与えられていたため、これらの人々にクールーが多く発生していました。1950年代以降、こうした儀式は禁止されているため、クールーの発生例も事実上なくなっています。クールーを発症する人は現在ではほとんどいません。しかし、1996年~2004年の間に、11例のクールーが報告されました。これらの症例では、感染後50年以上が経過するまで症状が起こらなかった可能性が疑われます。
クールーの最初の症状は、協調運動障害(運動失調)、歩行困難、身震いに似た体の振戦(ふるえ)です(「クールー(kuru)」は「ふるえる」という意味です)。
その後、異常な不随意運動が現れ、四肢や体幹が繰り返しのたうつように動いたり、素早く跳ねるように動いたりします(舞踏病アテトーゼ)。腕や脚がこわばり、筋肉がビクッとふるえるミオクローヌスという動きがみられます。感情の起伏が激しくなり、悲しんでいる人が突然、大声で笑い出したりすることもあります。クールーの人はやがて認知症を発症し、最終的にはおとなしくなって話せなくなり、周囲に対して無反応になります。
肺炎や床ずれによる感染症などが原因で、クールーではほとんどの場合、症状がみられてから24カ月以内に死に至ります。
有効な治療法はありません。クールーの治療では、症状の緩和に重点が置かれます。