失語の種類

種類

原因病変の部位*

一般的な原因

発話パターン

失名詞失語

左半球の言語野のいずれかの部位の(通常は小さい)病変

梗塞

出血

外傷

腫瘍

口頭における失名詞(物体を名指しできない;意味のない,回りくどく錯語†を伴う発話となる)および書字における失名詞,発話は流暢,聴覚理解および読解は良好,復唱は正常

ブローカ(非流暢性,表出性,運動性)失語

左前頭皮質または前頭頭頂領域(ブローカ野を含む)における大きな病変

梗塞

出血

外傷

腫瘍

口頭および書字における失名詞,非流暢性発話(発話が遅く,努力を要し,短い語句から成り,プロソディーが障害され,前置詞および接続詞の使用が少なくなる),理解は良好,復唱の障害,書字障害(非流暢性失書[nonfluent agraphia])

伝導失語

左半球における皮質下病変(しばしば上側頭回の下または下頭頂葉の下)

梗塞

出血

腫瘍

失名詞(顕著な錯語†),それ以外では発話は流暢,理解は良好,復唱の障害(頻繁な錯語を伴う),読解は良好

書字は障害されない

全失語

左前頭側頭頭頂皮質(ブローカ野およびウェルニッケ野を含む)における大きな病変

梗塞

出血

外傷

腫瘍

口頭および書字における重度の失名詞,非流暢性発話(しばしば発話が少ない),理解は不良,復唱の障害,失読,失書

超皮質性運動性失語

左前頭皮質(ブローカ野およびウェルニッケ野を除く)における病変

梗塞

脳炎

出血

外傷

腫瘍

ブローカ失語に類似するが,復唱は正常

発音の明瞭さはしばしば保たれる

超皮質性感覚性失語

左側頭頭頂皮質(ブローカ野およびウェルニッケ野を除く)における病変

梗塞

脳炎

出血

外傷

腫瘍

ウェルニッケ失語に類似するが,復唱は正常

ウェルニッケ(流暢性,感覚性,感覚)失語

左側頭頭頂皮質(ウェルニッケ野を含む)における大きな病変

梗塞

腫瘍

口頭および書字における失名詞,発話は流暢(錯語†がみられ,多様な文法形態を用いるが,ほとんど意味が伝わらないことが多い),聴覚理解および読解は不良,復唱の障害,読み間違い(失読),流暢性失書(fluent agraphia)

*原因病変は言語優位(通常は左)半球にある。

†錯語とは,誤った言葉もしくは発音の誤った言葉または意味をなさない言葉の組合せの使用を指す。

関連するトピック