用量反応関係

執筆者:Abimbola Farinde, PhD, PharmD, Columbia Southern University, Orange Beach, AL
レビュー/改訂 2021年 6月
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    薬物の効果は,それが発現する様式(結合的相互作用と化学的相互作用のどちらを介するか)に関係なく,作用部位での薬物濃度による制御を受ける。しかしながら,濃度に対する反応は複雑である場合があり,しばしば非線形である。薬物の投与量と細胞レベルでの薬物濃度との関係は,用いた投与経路にかかわらず,さらに複雑である(薬物動態を参照)。

    用量反応データは,典型的には用量または用量関数(例,log10用量)を横軸に,測定した効果(反応)を縦軸にプロットしたグラフで提示される。薬物の効果は用量と時間の関数であるため,このようなグラフは時間に依存しない用量反応関係を示している。測定された効果は,効果がピークに達した時点または定常状態の条件下(例,持続静注の実施中)での最大値として記録することが多い。薬物の効果は分子,細胞,組織,臓器,器官系,または生体のレベルで定量化される。

    仮説としての用量反応曲線には,次のような変動する特性がある(仮説としての用量反応曲線の図を参照):

    • 力価(用量軸に沿った曲線の位置)

    • 最大効果または天井効果(達成しうる最大の反応)

    • 傾き(単位用量当たりの反応の変化量)

    仮説としての用量反応曲線

    生物学的差異(同じ用量で投与した同一集団内の被験者間でみられる反応の強さの差異)もみられる。同一条件下で調べた薬物の用量反応曲線のグラフは,薬物間で薬理学的特性を比較するのに役立つ(薬剤X,Y,Zに対する用量反応曲線の比較の図を参照)。この情報は,期待する効果を得るために必要な用量を特定する助けになる。

    用量反応曲線の比較

    薬物Xは投与量当たりの生物活性がより大きく,したがって,薬物YおよびZより力価が高い。薬物Xと薬物Zは,到達しうる最大の反応(天井効果)で示されているように,同等の効力がある。薬物Yは薬物Zより力価は高いが,最大効力は低い。

    用量反応関係(薬物動態および薬力学の原則が関係している)は,必要な用量および投与頻度のほか,集団における薬物の治療係数を規定する。治療係数(有効濃度の中央値に対する最小毒性濃度の比)は,薬物の効力および安全性を確認するのに役立つ。治療係数が小さい薬物の用量を増やすと,その薬物の毒性が現れる確率や無効に終わる確率が高まる。しかしながら,これらの特性は集団により異なり,妊娠年齢,臓器機能(例,推算GFR)などの患者関連因子の影響を受ける。

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